機関紙1号(2005年4月19日発行)
広く、深く、多様に語り合おう
「平和憲法」を無傷で次世代に
3月26日、「マスコミ・文化 九条の会 所沢」が結成されました。会場となった「ラーク所沢」には会場いっぱいの160名の人が参加しました。
呼びかけ人を代表して山崎晶春氏が開催の趣旨を述べ、来賓の浜林正夫氏(九条の会・ところざわ)、仲築間卓蔵氏(マスコミ九条の会)が挨拶し、映画監督黒木和雄氏のメッセージが読み上げられました。
増田れい子さんが「憲法九条とマスコミの責任」をテーマに記念講演を行ないました。また、会場からは、マスコミの現状や教科書問題、ピースランなどについて7名の方から発言がありました。そのあと準備会の佐藤俊広事務局長が、これからの運動と会の代表に勝木氏を提案し、全体で確認したあと勝木さんが就任の挨拶を行ないました。なお、会場でのカンパの訴えに、55,510円のカンパが寄せられ、当日入会された方が36名に達し、古賀うめさんの巧みな司会で盛り上がりがあり、結成集会は大きな成功をおさめて閉会しました。
当日は天候にも恵まれ、会場には新所沢駅に配車した送迎車に乗ったりして開始の1時間前から参加者が来場しはじめました。
合唱団「ききゅう」による「憲法九条の歌」が会場にさわやかな緊張をつくりました。また、開会の挨拶で山崎さんは、「この会は職能的にマスコミとつながりのある人たちがマスコミを監視していくことを進めていくことではじまりました。文化に関連する人も一緒になって、この所沢で地についた活動を「九条の会」との連携を深めてやっていきたい。21世紀には戦前の誤りを繰り返さず、九条を守る豊かな運動を作り広めていきたい」と語りました。
来賓の浜林さんは「憲法問題とかかわって教育基本法を変えようとする動き、また国民投票法案が出されようとしています。憲法を作り替えるために、この法案は国民投票では一括投票、報道を規制し、投票数が少なくとも有効投票の過半数で決められるというものです。これに反対していきたい。皆さんと一緒に運動を進めたい」と挨拶されました。
仲築間さんは「マスコミ九条の会を4月5日に旗揚げするが、そこには88歳をこえた秋山ちえ子さんはじめ大橋巨泉氏、作曲家の池辺晋一郎氏などが呼びかけ人となり、運動は広がっています。ここに小学生の頃の「武運長久」と書いた寄せ書きを持ってきましたが、祖国のため親父頑張ってこいと書かせられたものです。今の子供たちにこれをやらせてはならない。憲法を守るため、国民の過半数の支持をかちとるために頑張りましょう」と挨拶しました。
増田れい子さんは「人間に一番大切なものは何か、それは命です」と話し始め、「戦争は人権に反するものです。戦争を許さない大事な憲法九条を、アメリカのアーミテージ国務次官が来日し記者会見の席で、『九条は邪魔ですね』とさらっと言ってのけるのです。
この4月に自民党の改憲試案がでます。3月2日の毎日新聞でいいこと書いてます。改憲案の前文で『基本的人権は公共的利益に奉仕するよう求めている』と書かれている。『公共の利益』と国民をぐらつかせてくる。戦前は天皇だったが、今は政府、権力で、これに従えという。そうではなく、皆で支えあい、広く文化をおこし、ぐらつかない世論を作っていくことが大事と書いています。
自民党の改憲論では「九条一項には触らない。二項で『自衛のための組織は保有する』とする。徴兵制には触れないでおく」とされています。このやり方は『オレオレ詐欺』と同じで、人をいかにしてだますかの悪智恵があらわになっている。これらを奥平先生は「魂なき改憲」と特徴付けていますが、「魂を抜く、魂を売る改憲」と付け加えたい。彼らは憲法の平和主義、国民主権、基本的人権の尊重の三本柱が邪魔なのです。これらを許してはならないのです」と講演しました。
締めくくりに、増田さんは長崎の音琴ミセさんというおばあさんがビニール紐で小さなぞうりを編みつづけている、そのぞうりを見せ、「これはミセさんが原爆にあったとき素足で歩いて熱かったこと、恐ろしかったことが忘れられない。体中で戦争に抗議する。必要なのは戦争ではなくぞうりです」「改憲の後に出てくるのは、戦争に反対とは言わせない言論の弾圧です。そんなこと許していいのでしょうか」と結びました。
講演のあと、会場からの発言がありました。中原道夫さん(詩人)、今井潤さん(元NHK・放送を語る会)、田口元也さん(開隆堂出版)、牛田守彦さん(法政大学・中高校教諭)、馬籠正夫さん(ピースランナー)、小坂さん(こぶし町主婦)、日下部さん(教育基本法集会呼びかけ)の7人の方から、それぞれの憲法にたいする考えや進めていることへの熱い思いが語られました。
事務局長の佐藤さんはこれからの運動、会の運営について、「準備会から世話人会に移行して運営していきます。会は『九条の会アピール』の普及、賛同者を広げること、マスコミの報道を注意深く見つめ、言論の自由を厳守させること、憲法九条をまもるための組織・個人と協力・共同の活動を自主的に取り組みます。今日も36名が入会されました。マスコミ・文化に関心をお持ちの方は誰でも参加できます。豊かな運動をする九条の会にしていきたい」と抱負を語り、代表のほか、事務局、機関紙、企画、共闘、財政の専門部を置く提案を行いました。そのあとカンパの訴えがあり、最後に、オカリナの伴奏で佐藤亭子さんが憲法を守る気持ちをこめた詩「それでじゅうぶんではないか」、「贈りもの」を朗読しました。新しく代表になった勝木さんは「どうか、知恵をお貸し下さい。一緒に大きな会にしていきましょう」と力強く決意を述べました。
機関紙1 もくじへ
○増田さんのお話、心に残るおはなしでした。胸の中にすとんとおちて、わかりやすかったです。
○平和を守るということでは、マスコミの役割が非常に大切だと痛感しております。毎日流れているテレビ番組からこの九条の会の動きが皆無といわれる状況、恐ろしく思います。ライブドアとフジテレビの攻防、公共放送の役割とはというのが皆無。NHKの番組改ざん問題、そしてこれをNHK対朝日の対決とする報道の仕方の問題、等々、もう少し、マスコミの果たしている役割を強調していただけれぱと思いました。
○心に残るひとときでした。良い集いでした。
○どれも結構だと思います。マスコミ・文化の会ですし、催しのたびごとに、音楽(演奏)、詩の朗読などなど、プログラムに文化の香りを織り込んでくださるとよいと思います。
○コーラス、記念講演もとてもよかった。
○とてもよかったと思います。必要な時に開催していただきました。
○アーミテージの記者会見で、すり寄っていく記者が結構いる、とのこと。まるで売国奴ではないか。アメリカの意向で、改憲が仕掛けられる中、「戦争か平和か」、と同時に「売国か愛国か」も併行して、豊かに闘っていきたいと感じた。「愛国心」を逆手にとろう!
○わかりやすい講演でした。特に「音琴さん」の文章が心に残り一人ひとりが自分のことばで広く「九条の大切さ」を伝えていきたいと思いました。
○しっかり、勉強させていただきました。対話していく中身がふえ、ありがとうございました。
○戦争を知らない人は歴史認識が分からないようです。
○もっと広い会場を確保してもらいたい。
○わかり易くとても良かったです。
○一言で「今、行動しなくてはダメ!」。本当に一人ひとりが行動しなければならないと、強く思いました。まず、身近にいる方々へ声かけすることが必要です。
○この世で一番大切なもの、「それは命だ」と言う増田さんの言葉は納得のいく内容であった。
○増田さんの、改憲者は憲法の魂をうぱうための「オレオレさきだ」というのいいたとえだ。
○文化人を呼んで講演活動を定期的におこなう。駅頭宣伝、署名活動。その時々のマスコミの動向を知らせる。小さな九条の会を紹介する。会報を発行する。
○できるだけ、現役のマスコミ関係者の方から発言をきく機会があればと恩います。
○具体的、というのは今、すぐには解りかねますが、期待しております。
○継続した活動になるように願っています。TV、ラジオ、雑誌、新聞誌上にも宣伝周知されるように載せてほしい。外国に憲法のすばらしさをもっと知らせたい。
○憲法の条文は読みにくく(特に若い人には)詩文の「それでじゅうぶんではないか」の例やわかりやすいことぱでチラシなど作り配ると良いですね。
○楽しい、そして文化的に得るものをセットした集まりを何度も。
○小規模座談会などで交流するのもよいと思います。
○会員が相互に連絡、話しあえるように、名簿の配布。
○一人一人が自分の周りの人に呼びかけて広めてゆくことが大切だと思います。
○多くの方々への声かけと、会のとり組みを知らせるニュースをお願いしたい。
○今、地域で数人ですが九条の会を立ち上げました。自分たちでできることをできるところからやる。
○文化の果たす役割も見逃せまん。人間の心情に、スーと入っていきます。マスコミの流す、文化、番組のあり方、戦争したい勢力が人間的たましいをぬいていく、たくみな力を見抜いていく力をつけなければと思いました。
○両親の代から毎日新聞で、もちろん私も毎日新聞育ちなので、どんな御方かと、本日、楽しみにして参りました。増田様の御意見を拝聴出来て大変嬉しく存じました。
○送迎の車、ありがとう、こざいました。もう少し交通便利な会場だとなお結構なのですが……。
○講師の方の話がとても上手で時間がたつのを忘れてしまいました。
○このような会をつくっていただきとてもうれしい。再び戦争をしてはいけません。声を大にして頑張って下さい。
○全体を通じ、とても有意義でした。ありがとうございました。現在のマスコミが、60年前の反省(原点)から次第に外れてしまい、今の大事なときにも本質に迫る報道ができなくなってきたのはなぜか、という点をもっともっとしらせていただきたかったです。
○所沢は、幅広い年齢のかたを集めていますネ。展望が大きくひらけそうで、期待がふくらみました。それにしてもここまでやってきたスタッフの皆様大変お疲れさまでした。
○全国津々浦々で、「九条の会」を発起し、力を合わせていきたい。歌を作るのもグッドアイデアです。パット見て目立つマークや子どもから大人までに歌われるような歌で全国を包囲し憲法を守りたい!
○近所のポスターにも、まだ非常に関心がうすい。不安があるが、考えたくない。どうにでもなるようにしかならないの気分が多い。私の地域では若い人々にほとんど会えない。高齢、病弱のせいもあります。
○第一条(廃案)と第九条(死守)は切り離せない。第一条は出ないと思っていたが、発言あったことは高く評価するが、結びつけて、訴える必要がある。
○会場のラーク所沢は足のない人は集まるのが不便なので松井公民館のロビー等の様にバス便が使えるところの方がいいと思います。資料代位は徴収しても良いと思います。
○ここ何年の間に憲法を改悪していこうという話がしだいに大きくなってきて、平凡な人間の一人として、何かをしたい、しなくてはと思いながらも、何の力もきっかけもなく、モンモンとしていました。今日この集会を知り、必ず参加して、増田さんの話を聞きにいこうと、思いました。この会がもっともっと大きくなる事を祈ります。
○今年は戦後60年。私も第五幅竜丸から長崎まで「核廃絶」「平和憲法を守ろう」と訴えております。平和憲法を追加して500名を目標に署名をしてもらおうと思っています。
○地域に(町内会)、同好会の中に、山の会、音楽の会、絵の会、からおけの会、囲碁の会、菊の会…などに「九条の会」を広げたい。
全国規模のrマスコミ九条の会」が4月5日、東京・文京区で発足の集会が行われました。同会は、所沢で講演した、エッセイストの増田れい子さん、評論家の秋山ちえ子さん、ジャーナリストの鳥越俊太郎さん、所沢市在住の門奈直樹立教大学教授ら60人の呼びかけで結成されたものです。会場は満員、熱気につつまれたつどいになりました。
冒頭、呼びかけ人を代表して、所沢にも駆けつけてくれた仲築間卓蔵さん(日本ジャーナリスト会議放送部会代表)は、「著名人9人の『九条の会・アピール』を広げていくことや、マスコミの会として、憲法の問題をどう報道されているのか全員でウォッチしよう、マスコミの状況を変えよう」と訴えました。
呼びかけ人から4人が発言しました。詩人の大岡信さんは、自作の詩「前もって知ることは出来ぬ『戦争はすべてを手遅れにする』」を朗読。漫画家の石坂啓さんは、日米関係を「ドラえもん」のジャイアンとスネ夫にたとえ、米国はジャイアン、スネ夫は絶対に逆らえない。小泉スネ夫の言う、国益とは戦地に子供を送り出すことになる、と話しました。脚本家のジェームス三木さんは、100年後には戦争や国境がない未来、その道しるべに日本国憲法がある。100年後に軸足を置いて考えようと訴えました。子ども教科書全国ネット21事務局長の俵義文さんは、「新しい教科書をつくる会」の公民教科書の危険性を強調しました。九条の会の事務局長の小森陽一さんも飛び入りで参加し、九条がアジアの平和に寄与していると指摘したうえで、自民党が改憲試案の要綱を発表したことから、「マスコミらしく、わかりやすい言葉で、国民に広く知らせてほしい」と訴えました。
「憲法九条とマス・メディア」と題して、講演した桂敬一立正大学教授は、「マスコミ九条の会には、独特の使命があると」としたうえで、「具体的に改定する必要があるならば、憲法に基づき、その項目を国民投票をすればすむことだ。新憲法を偽造し、一括改定しようとするのはクーデターではないのか」との疑義を呈し、憲法報道をめぐる各紙を比較しながら、護憲論調とし、ブロック紙、地方紙が健闘している実態を伝え、これまで護憲派といわれてきた「朝日」が揺らいていることに警鐘を鳴らしました。参加者は満員の390人でした。
(K)太田武男 (日本ジャーナリスト会議広島支部)
「戦後思想の出発点にヒロシマがあり、それと真っ直ぐに結びついているのが憲法九条」。3月12日に開いた「九条の会」広島講演会(2600人参加)で、大江健三郎さんは満席の市民を前に「原点の誓い」を再確認するように語った。ご当地向け発言ではない。戦後60年を経て、いま私達の暮らしに定着する「戦争放棄」の思いを形にする意味で「いまどのような時代に生き、何を語り、何をするべきか」を深めてくれたと思う。「戦後思想ヒロシマ、憲法九条」を聞いたとき、私は「原爆慰霊碑」(広島平和都市記念碑・1952年8月設置)に刻む25文字の碑文に思いを重ねた。「安らかに眠って下さい。過ちは二度と繰返しませぬから」の碑文は、「主語」をめぐって戦後政治の中で幾度か論争もあった。私は主語を、この碑の前に立つすべての人、国籍をこえた一人の人間としての「私」「私たち」であり、世界市民である、と理解している。核時代の戦争、「勝つ」ために使われる核兵器。そこにもはや「国」も「勝利」もない。二度と戦争をしない、核兵器を使わない。このことを理解し、実践することだけが、新しい世界の歩む道となった。九条の先駆性、「心」を凝縮する誓いだと思う。
哲学者の鶴見俊輔さんは、「国家から自分を見るのは時代遅れ」、「赤ん坊が生まれた時に見る世界と同じように、被爆体験は全く新しい世界・視点を生み出した」と語り、作家・沢地久枝さんは、大陸からの引き揚げ体験を語りながら「いまの憲法は日本がどん底で勝ち取った」と歴史を振り返った。
憲法九条を守るという自己決定をすることで、本当の民主主義を手にすることができる」と大江さんらは呼びかけた。三末篤実さん(広島カトリック教区長)が「平和の実現は、互いに信じあう一人一人の行動から始まる」と閉会挨拶でそれに応え、再び「軍靴の足音」を聞く今、参加者の決意を一つにする集会となった。
機関紙1 もくじへ忍足欣四郎 (東京都立大学名誉教授・小手指町在住)
数日前のこと、ある出来事の年代を確認する必要が生じて『日本史年表』を開き、ついでに、敗戦後の記録に眼を通そうという気になりました。その中で、戦後の民主化へのさまざまな動きを支えた国民の熱い思いがわたしの記憶に蘇ってきました。
思えば、国民の大多数は何も知らされないままに戦争に捲き込まれました。そればかりか、近隣諸国にも多大な犠牲を強いました。そのことへの反省から「平和憲法」が制定されたのです。したがって、憲法は国家権力から国民を守るという意図が根底にあります。憲法の制定には連合軍総司令部の示唆・介入があったと言われますが、大切なのは、国民が自分たちの憲法と感じたという事実です。「日本国憲法公布記念式典の勅語」、『日本国憲法』の前文、第九条は今でも私たちを感動させます。
憲法は、事のあるべき姿についての根本的な考え方という意味での「理念」です。理念は現実の動きに合わせて軽々しく改めるべきものではなく、現実の不当な動きを抑止する力となるものでなければならないと思います。
機関紙1 もくじへ