機関紙100号 (2014年6月29日発行)
貴会のニュース100号の発行をお祝い申し上げますとともに、発行以来毎号をお送りいただき、厚く御礼申し上げます。貴会のニュースには政治や文化の動向を知るうえで貴重な論考が毎号掲載され、多くを学ばせていただいております。
申し上げるまでもなく、安倍内閣の下で、集団的自衛権を初めとする解釈改憲による憲法破壊の企てが次々と提起され、強引に推し進められています。最近は教育の分野でも政府見解を教科書に書かせ、また竹島尖閣列島が日本の領土であることを明記させるなど、まるで教科書の国定化を目指すような動きや、教育委員会を首長の諮問機関に格下げするとか、大学の教授会を骨抜きにして研究教育を財界の目指す方向へ向けさせようとする動きも強まりました。
貴会と関係の深い情報通信の分野でも、NHK会長の暴言が問題となり、その罷免を要求する運動が起こっており、その一環として受信料不払い(ないし留保)運動も始まっています。さらに特定秘密保護法の施行に向けて国会に特定秘密の運用を監視する「情報監視審議会」を設置するという計画まで持ち出されました。
これは国会内に電波傍受を遮断する部屋を作り、8人の委員が秘密会を常設して特定秘密の漏洩を監視するということです。これは戦前の暗黒時代への逆戻りということにほかなりません。
これらの逆コースに対しては全国いたるところで反対の動きが広がっています。私たちの所沢でも様々な取り組みが起こっていますが、それぞれが反対運動に取り組みながら大きく協力を広げようという連帯も「守ろう憲法・オール所沢」連絡会という形で進んでいます。
これからも貴会がマスコミ・文化の分野で活発な活動を展開されるとともに諸団体との連携をいっそう強めてくださるよう切望しております。
05年4月19日に第1号の機関紙が発行された。6月26日の結成式で「九条を守れ」と増田れい子さん(ジャーナリスト)が語り、会場一杯の参加者は平和憲法を無傷で次世代に手渡すことを誓いました。あれから9年、機関紙は今月で100号を達成しました。日頃から特段のご協力とご支援を頂いております著名な学者、文化人、ジャーナリストの皆様、急な原稿依頼にもご快諾頂く市内在住の会員の皆様、そして毎月、欠かさず、調布から政治漫画イラストを描いて下さっている鈴木彰さんらに心から感謝申し上げます。
憲法九条は「崖っぷち」です。日本が攻撃されていなくても他国の紛争に武力で協力する集団的自衛権の行使容認は日本を戦争への道に引き込むことです。解釈改憲で憲法九条が存在しても戦争をするならば、まさに憲法破壊のクーデターです。到底、許されることではありません。
どんなに情勢が深刻でも、私たちはあきらめません。9年前の結成式で「広く、深く、多様に語り合おう」と呼びかけた思いを発展させ、次の地平線まで機関紙をさらに充実させ、地域から情報を発信することに全力を注ぐことを誓います。(編集部)
林 茂雄(名古屋外国語大学名誉教授・元中日新聞編集委員)
今年の憲法記念日・5月3日の東京新聞を開いて驚いた。全面見開き2ページに8327人の名前が収録された「集団的自衛権は戦争への道」の「意見広告」である(写真)。ぎっしり詰まった人名が二色に着色されて、遠目に見ると大きく「殺すな」の文字が透かし模様に浮かび上がる凝りようだ。広告主は『市民意見広告運動・市民の意見30の会・東京』(写真)。何故この広告を掲載するのかの理由が「未来への責任・九条実現」の見出しで要点を纏めた文章が書かれている。
これは新聞報道ではない。いかなる政党・党派にも属さない市民集団が自らの意思で経費を使って発表した『公告』である。しかし、この政治的意見を紙面に掲載する以上は発行する新聞社の主張と社論(社説)が反映されているはずだ。集団的自衛権に関する最近の新聞・テレビの報道・放送でこの問題ほど明確に賛否が分かれたのは珍しい。結果を先に言うと、新聞では読売と産経が「解釈改憲」に賛成。朝日、毎日、東京が反対。日経と共同通信(全国の地方紙に原稿配信)がやや反対寄りの報道ぶりだ。これは各社の世論調査結果を報道・社論に反映している。細かい数字は省くが賛成派の世論調査は「賛成」が多く、反対派は「反対」が強い。調査対象の回答を報道・社論に反映させたのか、各社の報道・社論を世論調査の形で裏付けたのか微妙なものがある。
いずれせよ1960年の「日米安保条約改定」の時は「報道七社の共同社説」を掲載して言論界が一致団結して反対したのとは様変わりだ。「解釈改憲」賛否の報道が憲法改定、原子力発電、特定秘密保護法への賛否と連動しているのも大きな特色だ。
明治維新を経て国家の近代化を進めた明治時代の新聞は政論新聞から発足した。時の政治問題を議論し、国家の発展に貢献するのが存在理由だった。
しかし、新聞が商業主義の道に進み、企業としての安定を求めて発行部数優先の経営方針を取り入れると政治的主張が希薄になった。「どの新聞を読んでも内容は同じ」と評される紙面になった。
その意味では、集団的自衛権の「解釈改憲」を巡る報道は、新聞社自体の自己主張の対立と不特定・多数の読者の説得を争う言論が持つ本来の機能が復活したと評価できる。(栃木県那須町在住)
北村 肇(「週刊金曜日」発行人)
安倍晋三首相は5月15日、私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の報告書が出されたのを受け、集団的自衛権行使に関する解釈改憲について「基本的方向性」を明らかにしました。会見は、ばかばかしいの一言でした。 さて、マスコミはどんな報道をするのかと注目していましたが、案の定、とんでもない論調の新聞がありました。翌日の全国紙(『東京新聞』を含む)5紙の1面記事と社説の見出しを紹介します。私が「いい紙面」と感じた順番になっています。
【A紙】
▼1面〈「戦地に国民」へ道〉〈解釈改憲検討首相が表明〉▼社説〈行使ありきの危うさ〉
【B紙】
▼1面〈集団的自衛権行使へ転換〉〈首相、憲法解釈変更に意欲〉▼社説〈戦争に必要最小限はない〉
【C紙】
▼1面〈集団的自衛権容認を指示〉〈首相、憲法解釈変更に意欲〉〈戦後安保の転換点〉▼社説〈根拠なき憲法の破壊だ〉
【D紙】
▼1面〈集団的自衛権限定容認へ協議〉〈憲法解釈見直し〉〈来月閣議決定目指す〉▼社説〈日本存立へ行使「限定容認」せよ〉〈グレーゾーン事態法制も重要だ〉
【E紙】
▼1面〈首相行使容認へ強い決意〉〈集団的自衛権 政府の基本的方向性〉〈多国籍軍「戦闘参加」ない〉▼社説〈「異質の国」脱却の一歩だ〉〈行使容認なくして国民守れぬ〉
普段、新聞をよく読んでいる方はおわかりと思います。A紙『東京』、B紙『朝日新聞』、C紙『毎日新聞』、D紙『読売新聞』、E紙『産経新聞』です。上位3社はいずれも批判的な論調でした。これに対し『読売』社説の冒頭部分はこうなっています。
〈日本の安全保障政策を大幅に強化し、様々な緊急事態に傭えるうえで、歴史的な提言である〉〈在外邦人を輸送する米輸送艦に対する自衛隊の警護などを例示し、集団的自衛権の行使を可能にするため、政府の憲法解釈の変更に取り組む考えも表明した。その方向性を改めて支持したい〉
『産経』も似たようなものですが、『読売』以上にいけいけの姿勢です。社説にこんなことも書いています。〈自衛隊の活動への強い制約を解くことが課題である。内外に表明している積極的平和主義の具体化へ、現実的対応を求めたい〉
2紙は論外として、上位3紙の紙面でも抜け落ちていたことがあります。それは、9条が形骸化しているという現実です。集団的自衛権行使をできないのは当然であり、むしろ、周辺事態法や武力攻撃事態法などの見直しが急務だという論調を展開してこそ新聞ジャーナリズムです。
解釈改憲の是非に終始するだけでは、「壊憲」をもくろむ安倍政権に足をすくわれてしまいます。肝心なのは平和憲法の蘇生です。
ところで、会見当日の首相動静(『朝日』)によると、安倍首相は午後8時6分に東京・西新橋のすし店「しまだ鮨」に行っています。〈時事通信の田崎史郎解説委員、毎日新聞の山田孝男特別編集委員、朝日新聞の曽我豪編集委員らと食事。10時15分、東京・富ヶ谷の自宅〉同店のホームページによると、料金は「カウンターでひとり15000円〜、座敷でひとり10000円〜」だそうです。これでは新聞が読者の信頼を得られないのも当然です。
「マスコミ・文化九条の会所沢」の会報が100号を迎えられたとのこと。凄いですね!まさに継続は力。200号といわず、まずは1000号を目標に! ただし「九条の蘇生を実現して廃刊」となれば、それもかっこいいですね!
大森喜久男(所沢演劇をみる会 事務局長)
集団的自衛権行使へ闇くもに突き進もうとしている安倍首相が、5月15日に記者会見をしました。直接聞くことは出来ませんでしたが、報道によれば「国民の命を守る」という言葉が、21回もあったといいます。なるほどこんなことを言っていました。紛争地から米国の船で逃れようとしている赤ちゃんを抱いたお母さんたちのパネルを前に、「まさに紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子供たちかもしれない。彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない。」と。
冗談ではありません。こんな情緒的でお涙ちょうだいの説明で済まそうとは、国民もバカにされたものです。「憲法9条こそが国民の命と生活を守る」砦となるものです。
所沢演劇をみる会は、この夏7月22日に俳優座の芝居「樫の木坂四姉妹」に取り組みます。解説に、「この作品は、樫の木坂と呼ばれる長崎港を見下ろす高台の家に、肩を寄せ合って生きる老三姉妹の物語である。しかし、あえて「四姉妹」としたのは、原爆で命を奪われた三女が、ある時は彼女らの行動を縛り、ある時は励まし慰めたりと、今もくっきりと共に生きているからだ。
2000年、長崎は夏を迎えようとしていた。被爆者である三姉妹の生活を撮り続けてきたカメラマンの洲崎は、その日部屋のピアノについて尋ねる…。」とあります。
三姉妹を俳優座を代表する中村たつ(長女)・岩崎加根子(次女)・川口敦子(四女)の三女優が演じます。8月6日・9日・15日、さらにフクシマの3月11日を、私たちは心に新たにしなければなりません。この芝居を、是非みなさんに観ていただきたいのですが、会は会員制であって、券売りはしていません。これを機に入会して芝居を楽しみつつ、日本演劇の民主的発展の力になっていただきたいと、願うばかりです。
次回は民藝の「海霧」(主演:樫山文枝・伊藤孝雄)です。すばらしい芝居、名舞台が続きます。〈会場所沢市民文化センター)
モンゴルの民話の朗読と民族歌舞団の演奏の舞台があった。文化座の「少年と白い馬」(5月29日〜6月6日=東京・両国・シアターX)である。俳優の佐々木愛が朗読し、バトオチルとモンゴル国立民族歌舞団アンサンブルが演奏した。この二つの異なった世界がつくり出した新しい試みは、大きな感動を生みだしていた。作・演出=島守辰明、企画=阿部義弘。
小学校の国語の教科書でおなじみの「スーホの白い馬」がもとになっている。少年・スーホが育てた白い馬との心のこもった交流をいきいきと描いている。少年たちによる草競馬で優勝したとき、国王が白い馬を奪ってしまう。悲しみのスーホのもとに逃げ帰ってきた白い馬は死んでしまう。しかし、馬の体を使って楽器をつくってくれと言い残す。そうして誕生したのが馬頭琴であった。馬頭琴はモンゴル民族が誇りとする伝統的な楽器である。舞台は民族衣装を身に着けたモンゴルの人たちの演奏ではじまる。中心になったアラーンズ・バトオチルは現代モンゴルを代表する馬頭琴奏者・ホーミー歌手である。そして、気鋭のミュージシャンたちがひとつになる。情緒的でもあり、牧歌的でもあった。ソロで歌う「オルティン・ドー」には豊かな声量と迫力に圧倒された。
佐々木愛の語りも迫真の力がこめられていて、物語がより立体感をともなって迫ってきた。6月の半ばまで秋田県下を巡演中である。(鈴太太郎=詩人・演劇ライター)
*前回の「河原崎国太郎さん」は「河原崎國太郎さん」に訂正いたします。
「マスコミ・文化 九条の会 所沢」の9周年総会が6月14日、中央公民館で開かれた。「NHKはどうなっているのか」と題して、永田浩三さん。元NHKプロデュサー、武蔵大学教授)が記念講演を行い、公共放送、NHKが原発報道、秘密保護法、集団的自衛権で公正中立の報道をしたのかと疑義を呈し、籾井勝人発言に揺れるNHKのどこに問題があるのかを解き明かした。
はじめに、開催の挨拶を行った、草鹿光世代表委員は、「私たち戦争を知っている年代は、その悲惨さをきちっと教えていくことが必要です。九条の会が発足して、10年経ちました。集団的自衛権の解釈改憲で憲法九条があっても戦争をする国に変えようとしています。市内の九条の会が力を合わせて、この動きを跳ね返す運動が求められます。永田さんのお話を聞いて、NHKに何が起きているのか、私たちはどうすればいいのか、それを学ぴ、そして論議をしたい」と力を込めて会員に訴えた。
講演のあと、佐藤俊広事務局長が総会で講演されたことのある、東京新聞の編集委員・半田滋さんの『日本は戦争をするのか』が5月に岩波から出版され、あっというまに品切れになり、二刷、三刷となっている。永田さんの共書『NHKが危ない』もたくさんの人が買い求めている。個別的自衛権で十分と主張する、柳澤協二さんの『亡国の安保政策』も四刷になっている。明日の自由を守る若手弁護士の会のリーフレットも10万部以上普及したと、安倍首相のやりかたに危機感があり、本やリーフがたいへん売れていることを紹介し、「これからの活動について」を以下のように提案した。
集団的自衛権容認の緊迫した状況の中で、総会の名で、自民、公明、安倍首相宛てに抗議の意思を送ることを提起したい。
@今月で会報100号を達成する。現在1400部印刷している会報は、会員のほか、市議、労働組合、民主団体、記者クラブ、原稿出筆者に配られている。この宝をもっと広げていきたい。私が配達する会員の方で、熱心に隅から隅まで読んでいる人がいる。全国の九条の会で毎月会報を作り、配布してきたのは私たちの会だけだろうと自負している。この会報をぜひ、広めたい。
Aもう一つ継続していることに「9の日行動」がある。去年、幟を作り、最近ではゼッケンを作り、それを既着して新所沢駅頭で毎月9日に街頭宣伝をしている。もっと大勢の人にこの街頭宣伝に加わって頂きたい。
B今の情勢に合った新しいパンフレットを作る。
Cマスコミ報道を監視し、良い紙面・記事には激励し、おかしなことには批判の声をあげる。私たちの声を新聞社、NHK、民放に届けることは無駄ではない。
D市内の9条連絡会、近隣地域の9条の会との連携をさらに強めたい。来年は10周年を迎える。反撃の時期でもあり、運動の継続をみすえ世話人・事務局の若返りをはかりたい。
参加者からも多くの発言があった。
山口のMさんは、「所沢市議会が集団的自衛権の解釈改憲を変更しないよう、国会などに提出する意見書を採択するよう運動をしている。すべての会派を訪問した。文言に苦労しているが、平和都市宣言のある所沢に相応しい内容にしたい。二つの会派は独自で意見書を出す予定。「マスコミ・文化九条の会所沢」も積極的に取り組んでほしい」と訴えた。
下富のYさんは、「忘れないでほしいとの観点で発言する。大飯原発差し止めの素晴らしい判決が出た。樋口裁判長は『住民が生命を守り生活を維持する人格権の根幹を具体的に侵害する恐れがある』と安倍が進めようとする愚行を明確に指弾している。絶対に忘れてはならないことだ」と語った。
緑町のTさんは、「6月28日の午後1時30分からコーププラザ(こぶし団地入口)で日本ユーラシア協会の総会が開かれる。その冒頭に、地球上で最も恐ろしい核爆発被害を受けた、ドキュメンタリー映画を上映する。ロシアの核コンビナートで核爆弾を作っていたが、そこが大事故を起こした。その事故のドキュメンタリー映画。反原発、再稼働反対の運動に大きな意味を持つ。この事故はチェルノブイリの20倍の被曝線量を出した。総会の冒頭にこの映画を上映するので、映画だけでも観て下さい」とお誘いした。
「会」基地プロジェクトの白戸さんは、これからの取り組みとして、「戦争になれば、戦闘行為だけでなく、さまざまな謀略が行われる。現在の明治大学平和教育登戸研究所は、旧日本陸軍がいろいろなことを研究したところです。731部隊の細菌兵器を研究しました。経済を混乱目的に大量の偽札を印刷したのもここですが、秋には現地を訪ねて学習会を予定しています。また東京戦災資料館などの見学も予定しています」と参加を訴えた。
このほか、「所沢戦争展」、「はだしのゲン」、「ひまわり」、「横田・入間基地ツアー」、「守ろう憲法・オール所沢」など12人の発言があった。討論の後、13年度会計報告、監査報告が承認された。最後に代表委員の一人、持丸邦子さんが、「戦争する国は絶対にイヤです。平和憲法を死守しましょう」と語り、閉会した。
「九条の会」の呼びかけ人の一人、加藤周一さんとたくさんの番組を作りました。一番印象に残っている事は、私はNHKの職員であった時代が長いのですが、朝日新聞の方、岩波書店の方、TBSの方、共同通信の方、さまざまな現場のジャーナリストたちで勉強会を立ち上げたことです。
その中で折々のジャーナリズムの問題について加藤さんがご意見番、スーパーバイザーとして話しをされました。加藤さんは、とてもリベラルな方で、ご意見番の加藤さんのもとにはせ参じた人に亡くなられた筑紫哲也さんがおられました。また、共同通信の原寿雄さん、TBSの報道特集のキャスターをされている金平茂紀さんや朝日新聞の人が多かったです。岩波書店では、世界の編集長を長く務め、社長になられた岡本厚さんもおられました。
加藤さんが一番心を痛められたことの一つに、いまから13年前のNHKETV2001番組改変事件がありました。これについては後で詳しく話します。簡単に言えば、今の安倍総理がまだ内閣官房副長官だった時代に、NHKの番組が放送される直前に番組についての意見をNHKの幹部に言い、その意見を聞いてきたNHK幹部が、私を含め現場の人間にかなり露骨な指示をして、番組が放送前に劇的に変わってしまうという出来事が起こりました。
これについて加藤周一さんは、ジャーナリズムの有り様について、さまざま闘ってきた国々があるのですが、一番見本とすべきは、一つはTVで言えば、英国のBBC、米国のTV局、米国の新聞社、完壁といえることではありませんが、ニクソン政権の時に副大統領のアグニューという人がさまざま汚職事件を起こして、これについてNYタイムスがキャンペーンを張ったことがあります。NYタイムスは副大統領から厳しい虐めにあいますが、その時にメディアは横の連帯をして、アグニュー副大統領を最終的には首にするというところまで闘い続けたということがありました。その時、筑紫哲也さんが「米国と深く関わっていたということもあって、よくご存じてした。
加藤さんも筑紫哲也さんも、日本だけのメディアの問題と考えないで、世界中のメディアのこととして、教えて下さったことを改めて思い出します。
22日に国会が終わります。安倍政権の暴走が止まらないどころか、ますます加速しているという事態だと思います。これを巡ってメディアはきちんとその問題点を伝えているのかということについて、皆さん、さまざまな疑問を持っておられると思います。
集団的自衛権を巡る議論ですが、いま佳境に入っているのは与党の自民党と公明党との閣議決定を巡るせめぎ合いですが、本来、憲法解釈をどうするか自身、国会でそもそも議論すべきことなのにもかかわらず、二つの政党のしかもオープンにならない密室の中での議論の中でいいの悪いのとせめぎ合っており、国民がその議論の中になんら意見を言うことができないのは、おかしなことです。
九条の会の背骨になる「憲法九条」をどう守り、血肉あるものにしていくのかにありますが、集団的自衛権の議論というのは、180度背を向けて、憲法をないがしろにして、再び戦争に導く、とんでもない動きだと私は思っています。このとんでもない動きについて、メディアは、はたしてきちんと問題点を伝えているのだろうか。NOと言わざるを得ないということです。
今日のテーマですが、「NHKはどうなっているのか」です。これについてお話をします。NHKの集団的自衛権についての報道は極めて不十分なものでした。今朝はワールドカップを観ていました。無敵艦隊と言われたスペインが5対1で負けてしまいました。6時頃です。その後、NHKの朝のニュースでノンフィクション作家の保坂正康さんが、集団的自衛権はNOと気骨のあるお話をしました。私は少しびっくりしました。N○を取り上げたことでびっくりする私を笑いました。つまり、NHKはそのようなニュースはやってくれない、と皆さん方も思っているのではないでしょうか。
これには前歴があります。2011年3月11日、東日本大震災を受けての福島第一原発事故でNHKには連日のように原子力村の御用学者がスタジオに呼ばれて、枝野官房長官が「ただちに健康に影響はない」を連呼するわけです。ただちに健康に影響はない、ということは長期的には影響があるということと、同じことです。しかし、そうは政府は言いませんでした。水素爆発が次々に起きて、大量の放射性物質が外に放出されるわけですが、これを巡ってもNHKは原発から北西に向けて高濃度にまき散らされる危険性について、きちんと伝えなかったという罪があります。その後の汚染状況についても、伝えることがとても遅かった。
事故を受けて、さまざまな人たちが、今の社会の原発依存についてNOと声を上げて、さまざまな集会が連日のように開かれました。特に首相官邸や国会を取り囲むという、翌年の連休から8月にかけての再稼働を巡る激しい動きについても、NHKは伝えることをためらうということが、ずうっと続いてきたわけです。私も国会周辺に行きました。声を上げている人から「NHKのニュースはどこを向いて放送しているのか」というご批判がたくさんありました。
NHKは信頼できないどころか、大本営発表だという厳しい批判がありました。大本営発表という表現が何を言っているかというと、当時はTVもなく、大本営と放送は一体のものでした。新聞もラジオは情報局に全部集められて、情報局の検閲のもとに放送が出されるという特殊な状況でした。戦局をきちっと伝えることもなく、国民をひどい戦争に導いていく、その先導役、旗振り役をNHKが担った苦い歴史があります。これをもって大本営発表と言われるわけですが、2011年3月11日以降、再び大本営発表とNHKを比喩して使われるということは、なんと情けないことかと思うわけです。
去年の12月6日に成立した秘密保護法についてもしかりです。私も秘密保護法がどれほどひどいものかということについて、私は住まいが西荻窪というところですが、杉並の方々と連日声を上げて、さまざまな活動をしてきました。今も続けていますが、市民の方々は国民の知る権利が奪われる、そういう世の中はよくない、と皆さんが言います。日比谷の野音の集会でも、報道の自由を守ろうと市民の方が叫んでおられました。にもかかわらず、当の報道の自由を守る主体となる、報道機関のNHKがそのことに声を上げない、あるいは、きちんとニュースで伝えないのはとてもひどいことだったと思います。市民に対しての裏切り以外のなにものでもありません。(次号に続く)
日 時:8月18日(月)14:00〜
会 場:所沢市民文化センター
前 売:1000円 小、中、高生(無料招待券あり)
主 催:所沢上映実行委員会(04−2992−9927)
会 期:8月3〜5日まで
会 場:市役所1F
会 期:8月2〜4日まで
会 場:浦和駅西口前コルソ7階ホール