機関紙104号 (2014年10月31日発行)



もくじ

原発問題への取り組みと福島知事選
   真木實彦(福島県九条の会事務局長)

安倍内閣の暴走に歯止めをかける一撃に
   鴨川孝司(「会」世話人)
鈴木彰の「その内に『羊の皮』も怒り出す」

太郎の部屋のほっとたいむ 25
   読書の秋に、この一冊を
   鈴木太郎(詩人・演劇ライター)

集団的自衛権とコーポラティズム
   山本達夫(椿峰在住 元出版社勤務)

テレビで「集団的自衛権」はどう伝えられたか
   岩崎貞明(放送レポート編集長)

過熱する「カジノ狂想曲」
   竹腰将弘(「しんぶん」赤旗記者)

「秘密」は戦争の準備であることを実感
   元陸軍第九技術研究所(登戸)を訪ねて

紹 介
   ●いま、埼玉の空が危ない「14年前の自衛隊機墜落を風化させないために」r戦争をする国」を許さないin所沢集会」
   ●「アルメニア・コミクス・カルテット」所沢公演
  




原発問題への取り組みと福島知事選

真木實彦(福島県九条の会事務局長)

 原発事故以後3年7か月を経てなお現地福島の実態は、まだ本格的な復興の段階とはとても言えない状況にあります。しかし一方、全国的には福島は遠いところの問題と受け取られがちで、その間隙をぬって政府は当面する薩摩川内原発の再稼働に向けた動きに余念がありません。福島には明るい復興への槌音だけが期待されているようです。こんな状況の中で、福島は事故後初めての知事選挙を旬日後に控えることになっています。

 自民党本部は、すでに県連が決定し選挙活動を開始していた候補を、今年の一連の知事選での連敗を避け、最低負けた形は取りたくないという事情から強引に引きずり降し、現知事の跡目と目される候補への相乗りをこれまた強引に整えたようです。

 一方、「みんなで新しい県政をつくる会」は既に立候補されている候補者の中から、県民の命と生活・生業を守り、原発ゼロを強く主張する候補を「自主推薦する」ことを表明しました。最終的な拠り所となったのは「県民の立場に立って国と東電にはっきりものが言える」人物だと判断したことが大きかったようです。

 原発事故以後福島では、県内10基あるすべての原子炉の廃炉と原発に頼らない県土づくりを「オール福島」の声として作り上げ、除染の徹底と受けた被害に対する賠償を国と東電に要求することに全力を事げてきました。

 しかし、このような県民運動を基礎にして、その必然的発展として県知事選を取り組む事にかならずしも十分ではなかった面のあったことが反省すべき点として指摘できるかと思われます。

 その点に関連して言えば、11月に行われる沖縄県知事選から学ぶべき点が大きいと考えています。国策の犠牲を一方的に貧しい片隅の地方に押し付けて、最後は「金目」と強権で無理押ししていく。このようなやり方の典型が戦後一貫して「基地」を押し付けられ続けてきた沖縄です。この3〜4年の福島が経験してきた事態ともこの点に共通性があります。

 これまで60年以上にわたって闘ってきた沖縄の粘り強い闘いの経験から十分に学んで、福島もこれから長く続くであろう闘いに腰を据えて取り組んでいかねばと考えています。

 現地での持続的な闘いを軸にしながながらも、その上でさらに全国の世論に押し広げ国民的な運動にしていくことがカギとなる筈です。共にがんばりましょう。(14・10・18)(福島大学名誉教授)



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安倍内閣の暴走に歯止めをかける一撃に

沖縄知事選

鴨川孝司(「会」世話人)

 沖縄にいる友人が「10月22日の琉球新報に古堅実吉さんの記事が載っているよ」と知らせてくれました。見出しは「日本歴史転換点」とあり、「憲法を基本に今の日本を照らしてみると基地負担などあるべき姿でない状況が70年近くも沖縄に押しつけられている。今の闘いには沖縄の命運がかかっていると同時に、日本の歴史の転換・発展にもつながる」とありました。安倍政権にとって、沖縄の知事選で自民候補が破れたときの衝撃は滋賀県知事選の敗北よりは大きく、暴走に歯止めをかける一撃となるだろうと思っていましたが、日本の闘いの転換点と言い切る沖縄での闘いに対する思いの深さ、大局感を教えられました。

 翁長候補の選挙政策が発表になり、そこには「建白書」で団結し、あらゆる手段を駆使して新基地は造らせないとの固い決意がありました。基地建設と引き替えの経済振興策は将来に大きな禍根を残すというくだりも、長い沖縄の闘いの、そして圧倒的多数の県民の一致した思いの追求の到達点として打ち出されてきたのだと思いました。

 実際、あのきれいな辺野古の海をトラック350万台分の土砂で埋め、これから20年先に基地ができるという考えは、21世紀に世界が求める平和の方向に逆行し、一部金儲けの人たちだけが一時喜ぶだけのものでしか無いことは、誰もが判ることです。

 今、その基地建設に安倍政権が狂奔しているのは、自民党の候補といえる仲井真現知事の選挙支援があります。仲井真候補は「苦渋の選択というのはいろんな面があり、普天間が動かない状況を放っておけるのかということも選択だ。基地の過重負担の中で辺野古に移るということに、もろ手を挙げて大賛成というまでにはならないだろう」と言いつつ、辺野古移転を推進する考えを示しました。

 自民党はなりふり構わぬ選挙戦を始めていると聞きます。名護市長選の時も基地と引き替えの「一括交付金」やら、500億円の金をちらつかせました。

是非勝たせたいと募金

 選挙政策は沖縄の将来への多面的な内容が盛り込まれていますが、基地の選択はその中心問題です。なんとしても、翁長氏に勝ってもらいたい、勝たせたい、そして日本の明るい展望を開きたい、その思いを強くさせられます。

 所沢で知事選に連帯する募金に取り組みました。訴えると「是非とも勝たせたい」「沖縄には行けないが」と募金に積極的に応じてくれます。2010年から毎年のように「基地はいらない沖縄と連帯する実行委員会」を組織し、毎年のように集会を行ってきましたが、これほどの反応は今までになかったものです。それだけ、安倍政権の暴走に不安と怒りを持ち、何かをしなければという気持ちが一人一人の胸の中に蓄積されているのを感じます。そこから、新たな力をもらっています。



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鈴木彰の「その内に『羊の皮』も怒り出す」




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太郎の部屋のほっとたいむ 25

読書の秋に、この一冊を

鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)

 読書の秋である。今回は、おすすめの新刊書を取り上げることにした。その一冊とは小田島雄志著『井上ひさしの劇ことば』(新日本出版社・1400円)である。

 本著の帯には「ジェクスピアの目を借りて読み解く新しい井上ひさし論」と書かれている。そのことばのとおり、シェイクスピアの全作品の翻訳の偉業を成し遂げた著者だけに、井上ひさしの劇についても、全作品を見た立場から詳細に読み解かれていくのである。その展開が実に面白い。井上ひさしとシェイクスピアと筆者という3人の視点、思想が相乗効果を生み出しているといえる。

 「劇ことば」という領分から舞台を分析することができることは並大抵なことではないと思う。「劇ことばというのは、相手は登場人物(たち)をとおして不特定多数(の観客)にも伝えます。登場人物がおかれた状況で口走る日常会話より体温が高く、切れ味の鋭いことばとなります」というだけに、「ことばに伝達力とエネルギーが必要」ということになる。

 「薮原検校」という舞台がある。盲目の検校や杉の市、琴の市など悪党の物語。地人会の公演を見て「すごい芝居があるものだ」と感動した記憶がある。「腹で聞く、腹に響くことばというのは、幕が下りて劇場から出ても腹にまだドシンと、その響きが残っているのを感じたりする。これが芝居の名せりふ、芝居のせりふのもっている効果です」と指摘されると納得はいく。

 これは一例に過ぎない。「日本人のへそ」から「組曲虐殺」まで、井上ひさし劇のせりふの醍醐昧が味わえるのも格別な魅力である。




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集団的自衛権とコーポラティズム

山本達夫(椿峰在住 元出版社勤務)

 「日本は、世界で一番企業が活躍しやすい国をめざします」。国会における安倍首相の所信表明演説である。神戸大学名誉教授の二宮厚美さんは、国民生活不在の“アベノミクス”を批判した著書『安倍政権の末路』で、「国民ではなく、企業が…と公言した首相や大統領が古今東西かっていただろうか…これが実現すると、日本は世界で一番労働者が働きにくい国になってしまう」とのべている。

満身創痕のアメリカ

 またジャーナリストの堤未果さんは、アメリカのあらゆる分野でみられる“政治と企業が癒着した実態”を詳細にレポートした『貧困大国アメリカ・3部作』の完結編で、「ポスト資本主義の新しい枠組み、コーポラティズム(政治と企業の癒着主義)にほかならない」と指摘している。わず19名の国務大臣が強行した集団的自衛権の行使容認。粗雑な論理で性急に閣議決定した背景に、民主主義とは無縁のコーポラティズムがある。そのことを「9条の会」事務局次長であり一橋大学名誉教授の渡辺治さんの見識と、ジャーナリストの斎藤貴男さんの著書『戦争のできる国へ』を参考に、以下考えてみる。

 冷戦が終結した90年代の初め、アメリカは「世界の警察官」として名乗りをあげた。その目的は、グローバル企業の権益確保のために圧倒的な軍事力で海外市場の秩序維持をはかることだった。

 自国のグローバル企業が求めれば、世界のどこであろうとアメリカの青年の血が流れた。そうしたアメリカの世界戦略への“不服従”と“憎しみ”の暴発が9・11同時多発テロといえる。

 血を血で洗う報復戦争に突入したアメリカは、巨額の戦費による壊滅的な財政破綻と国民の厭戦気分が限界をこえる。

資本主義の終焉では

 外面は超大国だが内面は満身創痍のアメリカから、「カネだけでなく、ともに汗も血も流せ」という要求が一段と強まる。

 企業のグローバル化をすすめる財界はアメリカの要求を無視できず、今まであまり熱心ではなかった「自衛隊の海外派兵」「集団的自衛権の行使容認」「憲法改正」などを次々に政策提言していく。アメリカと財界の要求に応え、小泉政権は戦後はじめて戦場のイラクヘ延べ1万人の陸海空自衛隊員を「海外派兵」した。

 安倍政権は、さらにすすんで集団的自衛権の行使容認を強行し、武器輸出三原則を放棄し、ODAの軍事分野での使用を認め、先制攻撃できる軍事力の増強をはかり、ガイドラインに明記する米軍支援を世界規模どころか宇宙空間にまで広げる。そしてその先に「憲法改正」を本格化させようとしている。

 これらは「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざす安倍政権のコーポラティズムから派生しており、その根底には、根拠のない信仰にも似た経済成長至上主義の国家観がある。

 1冊の新書がいま売れている。「資本主義の死期が近づいているのではないか」という書き出しではじまる水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』である。



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テレビで「集団的自衛権」はどう伝えられたか

岩崎貞明(放送レポート編集長)

 2014年7月1日、安倍内閣は実質的に憲法9条を踏みにじる、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。この歴史的「暴挙」をテレビはどう伝えたか、当日夜のニュース番組を振り返る。

 まずはNHK『ニュースウオッチ9』。番組冒頭から約23分の特集だった。中心になったのは日本の安全保障政策の歴史をたどるコーナーだったが、安保闘争など市民レベルの動きにはまったく触れずじまい。阪田雅裕・元内閣法制局長宮が閣議決定に反対の立場で短いインタビューに応じたほかは、今回の閣議決定を問題視する意見は報じられなかった。

 スタジオ出演した政治部記者や大越キャスターは「問題視しているのは中国・韓国だけ」「国民の理解がなかなか追いついていない」などと、まるで政府の見解を聞いているよう。「平和憲法」という単語は一度も聞かれなかった。

 一方、民放のニュース番組は、閣議決定に疑問を呈する報道が目立った。

 日本テレビ系「NEWSZERO」では15分程度、村尾信尚キャスターによる安倍首相への単独インタビューが中心だった。村尾キャスターは安倍首相に対して「新三要件に該当するかどうかを質問しているのであって、(避難する人を)助けるかどうかの問題でない」などと食い下がるものの、安倍首相は「私が言ったことから避けている」などとかわしていた。単独インタビューという手法の弱点が出た形だ。

 TBS系「NEWS23」では約23分。官邸前の抗議デモの様子や、ノンフィクション作家の半藤一利・澤地久枝両氏に岸井成格キャスターが自らインタビューして伝えた。岸井氏はスタジオで「閣議決定の撤回をお願いしたい」と締めくくった。

 テレビ朝日系「報道ステーション」は38分、番組の約半分の時間を使った。首相官邸前の中継映像で番組を開始して、「閣議決定反対」の市民の声を生中継で伝えた。番組中で、官邸前の抗議デモの映像は計七回使われた。憲法学者の小林節・慶庵義塾大学名誉教授はインタビューに応じて「最高権力者が法を無視するなら、それは『人の支配』じゃないですか」と厳しく批判。

 各地の人々の反応では、福島県内の仮設住宅で生活する人が「現在のことで精一杯で、先のことを言われてもわからない」と答えていたことが印象に残った。

 集団的自衛権行使によって前線に立たされることになる自衛隊員の匿名インタビューもあり、「行け行けドンドンで進められていくのが怖い」などと不安を口にしていた。




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過熱する「カジノ狂想曲」

竹腰将弘(「しんぶん」赤旗記者)

 カジノときいても、多くの人はピンとこないかもしれません。海外旅行で、ラスベガスやマカオ、韓国のカジノを見物したという方がまれにいるくらいでしょうか。

 カジノは、ルーレットやバカラ、スロットマシーンなどのゲームを賭けの対象とし、ほぼ無制限の巨額の金を一瞬の勝負でやりとりする、最も射幸心(思いがけない利益を期待する気持ち)を刺激し、人をのめりこませる賭博場です。

 刑法で賭博を禁じている日本ですから、当然ながらカジノの開設は許されていません。

ところが海外にしかないカジノを、この日本でも合法化し、上陸させようという動きがあります。

 カジノ解禁推進法案(特定複合観光施設区域の整備推進法案)は昨年12月5日、国会に提出され、今度の臨時国会で成立がねらわれています。この動きをすすめているのは、日本共産党と社民党以外のすべての政党(自民、民主、維新、公明、次世代、結い、みんな、生活など)の国会議員200人以上が参加するカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)です。

 カジノ議連の幹事長である岩屋毅自民党衆院議員は「賭博好きの国会議員が日本で遊ぶ場所をつくろうと言っているわけではない。私は博打嫌いだし、命を賭けているのは政治だけだ。日本の成長戦略の一環として必要な施設だといっている」と説明しています。

 経済成長のためのカジノ…。外国から富裕層の観光客を呼び込みお金を落としてもらい、観光と地域経済を活性化させ、雇用や税収をあげるというわけです。

 安倍晋三首相は5月30日、訪問先のシンガポールでカジノ施設を視察し、カジノは「日本の成長戦略の目玉になりうる」とのべました。首相みずからカジノ解禁の“旗振り役”をつとめ、法案成立に躍起になっています。

 日本の政界では過去十年以上にわたってカジノ解禁の動きがありましたが、ときの政権中枢がこれほどカジノに前のめりの姿勢をとったことはありません。

 日本は刑法で賭博を禁じる国ですが、現実には、競馬・競輪などの公営賭博、パチンコ・パチスロの蔓延で、世界有数の「ギャンブル大国」となっています。

 各国のギャンブルの市場規模を示すものとして、ギャンブル施設の粗利(あらり=客が負けた金額の総計)をまとめた統計があります。

 いま、カジノ世界一は2006年に米・ラスベガスを抜いたマカオで、年間2兆6800億円です。

深刻なギャンブル依存症

 日本はパチンコだけでも3兆9000億円。マカオのカジノをはるかに上回ります。これに公営賭博を加えれば、日本人は一年間に5兆5500億円以上のお金を賭博で負ける世界有数のギャンブル大国となっています。

 米国はラスベガスのカジノだけなら4600億円。全米に900以上あるカジノと競馬を加えれば5兆円です。人口が日本の2倍強ある米国も追いつかないほど、日本人は賭博に多額のお金をつかっています。その結果は、世界に例がないほど悲惨で、深刻なものになっています。

 「ギャンブル依存症」一。キャンブルヘの衝動が抑制できず、経済的、社会的、精神的問題が生じているにもかかわらず、やめることができない病気です。私たちの身の回りを見回しても、ギャンブルで借金を重ね、仕事や家族を失った人、その人を支えるために苦しんでいる人の一人や二人はすぐに思い浮かぷのではないでしょうか。

 厚生労働省の研究班が昨年七月に行った大がかりな調査研究で、日本の成人の4・8%(男性8・8%、女性1・8%)、推計536万人にギャンブル依存症の疑いがあるという結果がでています。

 これがどれほどたいへんなことなのかは、諸外国との比較で明白です。同じ方法で行われた調査で、香港は1・8%、米国は1・58%、韓国は1・8%など、ほとんどの国が1パーセント前後でしかありません。

 北海道立精神保健福祉センターの田辺等所長は日本の依存症有病率の高さについて@ギャンブル体験の日常化Aサラ金などで資金入手が容易であることB女性への普及一をあげています。日本中どこでも、いつでも賭博ができるパチンコ・パチスロという世界にも例のない日常化した賭博施設の存在によって、日本は「世界最悪のギャンブル依存症大国」となっています。

 その日本に、どうしてカジノを新たに上陸させることが許されるのでしょうか。世界でも立ち遅れている日本のギャンブル依存症対策を国の責任で強力に推し進め、苦しんでいる多くの人に手をさしのべることこそ、先決ではないでしょうか。

誰が儲かるのか

 カジノ議連は「2020年の東京オリンピック開催までに1〜3カ所、最終的には国内10カ所程度」のカジノ施設をつくるといって、各地のカジノ誘致運動を競わせています。カジノ法案は、カジノを設置する区域を「地方公共団体の申請に基づき国が認定する」と言う枠組みですから、手をあげる自治体がなければはじまりません。

 このため、早くから地方自治体を巻き込みながら、商工会議所や地域経済の有力者、関連業界、日本進出で巨額の利益をあげようとしている海外のカジノ企業などが一体になって、カジノ誘致運動が形づくられています。

 人の不幸を前提に、「大きな経済効果がある」と言い募るカジノ推進派の主張は、広い国民の間での議論に耐えるものではありません。ねらいは、国民がカジノの危険性に気付かぬうちに大慌てで法案を通してしまうということです。

 安倍政権や誘致自治体、日本進出を狙う海外のカジノ資本、おこぼれを期待する関連業界などの推進派が一団となって踊る「カジノ狂騒曲」が過熱しています。私たちは、カジノ法案にも、カジノ誘致にも反対する大きな世論を、地域から広げていく必要があります。

「カジノ狂騒曲」

筆者が「カジノ狂騒曲」を小松公正さんと共著で新日本出版社から上梓しました。本体1400円(祝別)。 090-7815-4902 葛西まで












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「秘密」は戦争の準備であることを実感

元陸軍第九技術研究所(登戸)を訪ねて

 鉄道網の発達と用地取得が容易なことから、戦前の多摩・武蔵野は一大軍事都市でした。埼玉県南部には所沢飛行場、陸軍航空士官学校(現入間基地)があり、多摩東部・武蔵野には中島飛行機武蔵製作所、中島航空金属、多摩陸軍技術研究所(現学芸大学キャンパス)、などの軍関係施設がありました。その一つに陸軍第九技術研究所(現明治大学キャンパス)があります。

「秘密戦(謀略)」の研究

 15日、「会」の基地プロジェクトは所沢平和委員会と共催で陸軍第九技術研究所(登戸研究所)を12人で訪れました。

 川崎市多摩区のほぼ中央、小田急向ヶ丘遊園駅からバスで15分の小高い丘の上に、明治大学生田校舎のキャンパスが広がっています。

 理工学部、農学部の学生で賑わうこの場所にかつて、陸軍第九技術研究所(登戸研究所)がありました。老朽化した木造平屋建築の工場や倉庫は崩壊の危険性があるため、当時の36号棟を可能な限り、建物に作り付けの設備はそのまま残し、部屋割り・内装・照明も戦時中の姿に近いものとして復元されていました。

 1937年(昭和12)12月、陸軍科学研究所の拡張のため「登戸実験場」として同研究所はスタートしました。39年には「陸軍科学研究所登戸出張所」と名前を変え、43年には「第九技術研究所」となります。しかし、この名称は、地図はもちろん、陸軍の法規資料にも掲載されていません。この研究所で何が研究されていたのかを知ると、その理由が分かります。

 展示されている資料には、旧日本軍が秘密戦のための兵器・資材を研究・開発するために設置した研究所で、一般にはその存在を秘密にされたとありました。

 秘密戦とは、防諜(スパイ防止)・諜報(スパイ活動)、謀略(破壊・撹乱活動・暗殺)・宣伝(人心の誘導)の4つの要素から成り立っていて、戦争には必ず付随するものです。最初は、電波兵器(く号兵器・ち号兵器)・無線機器・宣伝機器(せ号兵器)などを開発する施設でしたが、39年に大幅に機能が拡充され、新たに毒物・薬物・生物兵器(主に家畜を殺傷したり、植物を枯らす細菌兵器)・偽札・偽造パスポート製造などが行われました。42年には風船爆弾(ふ号兵器)の開発が行われました。最盛期には、敷地11万坪、建物100棟余、技術将校・技師・技手などの幹部所員250名、一般の雇員・工員などをあわせると総勢1000名に達する大規模な研究所になりました。が、戦局の悪化に伴い、45年には主たる機能は、伊那地方に分散し、そこで敗戦をむかえます。

 風船爆弾や大陸向けの偽札製造はよく知られていますが、暗殺用の毒物兵器・青酸ニトリルも開発しました。即効性のある青酸カリに対して、遅効性があり、48年におきた「帝銀事件」の容疑者として、731部隊関係者や登戸研究所関係者が捜査対象になりました。警視庁は使用された毒物との関連から登戸研究所第二科関係者に注目しましたが、捜査は途中で頓挫しました。

 45年8月15日、陸軍省軍事課から、敵に押収されては困る「特殊研究」に関する全ての証拠を隠滅せよとの命令が極秘に出され、関係書類や実験器具を直ちに焼却・埋設処分するなど証拠隠滅は徹底的に行われ、登戸研究所の存在は消滅しました。旧日本陸軍最大の謀略施設であることから、戦後、GHQによる登戸研究所の接収のあと、関係者はGI(参謀第2部)による尋問を受けたにもかかわらず、戦犯指名を受けたものは一人もいません。ソ連への資料の流失の阻止と、米軍への情報提供を条件に731部隊と同様に免責されたとの指摘があります。

 いま、特定秘密保護法の運用基準案と施行日が急がれていますが、「秘密」は戦争の準備であることが、登戸研究所を見学してからよく分かりました。(葛西)




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紹 介

●いま、埼玉の空が危ない「14年前の自衛隊機墜落を風化させないために」r戦争をする国」を許さないin所沢集会」

日 時:11月22日(土)13時30分
場 所:所沢市生涯学習推進センター
◇基調報告「危ない埼玉の空」
埼玉県平和委員会代表理事平山武久氏
◇お話する人
神奈川県平和委員会 宮応勝幸氏
…横浜の2米軍基地全面返還運動の成果と厚木基地夜間飛行差し止め判決の意義と所沢米軍通信基地返還への展望…
◇各地域からの報告と発言
資料代300円 誰でも参加できます

●「アルメニア・コミタス・カルテット」所沢公演

 昨年のモスクワ・カルテットに続き、今年は24年結成、90年の歴史と伝統を持つ名門「アルメニア・コミスタ・カルテット」が公演を行う。

 曲目はアルメニアの大作曲家ハチャトリアンの「剣の舞い」、同じく浅田真央さんが愛する《仮面舞踏会》より「ワルツ」があり、クラシックもチャイコフスキー弦楽四重奏第3番、そしてアルメニア音楽の父コミスタの心ふるわせる素晴らしい14の小品からいくつかをお聴き下さい。

と き:12月8日(月)18:30開演
ところ:所沢市民文化センター・キューブホール
    一般2500円 シルバー・学生2200円(全席自由)
主 催:日本ユーラシア協会所沢支部
協 力:駐日アルメニア共和国大使館 
後 援:所沢市教育委員会
お問合せ:04−2939−7630 坪井




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