機関紙116号 (2015年12月1日発行)



もくじ

彷佛するナチスの全権委任法 安倍に負けてたまるか!
   北村 肇(『週刊金曜日』発行人)
    早く安倍政権を打倒
    盤石でない自民党支持
    原点に立ち返り…

若人(甲骨文字)
   中川とき彦(書家・若松町在住)

【連載・沖縄通信】 無法国家になった日本
   原田みき子

鈴木彰の「開会拒否? それで何とかなる気かい」

太郎の部屋のほっとたいむ 37
   「異説・野口英世物語」の世界

民主、名誉ばん回のチャンス 戦争法廃止、野党共闘の先頭に立て
   行木恒雄(ジャーナリスト)
    期待される「国民連合政府」
    参院一人区で選挙協力
    無党派層が政治を決める

コ一ヒーブレイク
   《うわぁ、虫が》
   原 緑

注意要する右翼改憲派の新動向
   竹腰将弘(ジャーナリスト)
    安倍首相のメッセージ
小さなミニコミ紙の太きな役割「川房通信」 忘れてほならない事故と避難住民の労苦

事務局から




彷佛するナチスの全権委任法 安倍に負けてたまるか!

北村 肇(『週刊金曜日』発行人)

 「戦争法」成立にパリの連続襲撃事件、大阪府・市長選の「大阪維新の会」圧勝。戦後70年は、とんでもない1年になりました。でも落ち込んでいるヒマはありません。天下分け目の戦いとなる参院選まで半年ちょっと。まさに目の前です。いうまでもなく、ここで安倍政権を完膚なきまでにたたきのめさないと、この国に未来はありません。

早く安倍政権を打倒

 忘れもしない9月19日未明。「戦争法」はまさに暴力的に成立させられました。民意も国会も無視した違憲法が、与党にいわせれば“民主的”につくられたのです。ナチスの全権委任法を思い出さざるをえません。

 「ドイツ政府によって制定された法律は、国会および第二院の制度そのものにかかわるものでない限り、憲法に違反することができる。ただし、大統領の権限はなんら変わることはない」

 民主的なワイマール憲法は全権委任法により有名無実化されました。同法の成立が1933年、ベルリンオリンピツクが1936年、そしてポーランド侵攻が1939年です。背筋がぞわっとするような符合をみせています。

 安倍首相は憲法改定を緊急事態条項から始めたいと宣言しました。いまのところ憲法を変えるのが現実的に無理なのは政府もわかっています。そこで浮上するのが、自民党改憲草案にあった緊急事態条項そのままの法律新設。「戦争法」と同様、違憲の法律になるのは間違いありません。この条項では、緊急時に首相が憲法を超えた全権を持つだけではなく、緊急事態が解かれるまで国政選挙は実施しないとなっています。独裁政権を永遠に保つことも可能なのです。だから、一刻も早く安倍政権を打倒しなくてはなりません。

盤石でない自民党支持

 「戦争法」成立後、一旦は下がった安倍政権支持率がまたぞろ上昇しています。たとえば、『朝日新聞』が10月17日、18日に実施した世論調査によると、安倍政権を「支持する」と答えたのは40%、「支持しない」が41%でした。一応「支持しない」がわずかに上回りましたが、閣僚の不祥事が相次ぎ、TPPの「大筋合意」がなされた後としては高止まりといえるでしょう。自民党の支持率も34%で、民主党の7%を圧倒しています。しかし、ていねいに数字を分析すると、決して「自民一強」とはいえない現実が浮かび上がってきます。「支持する」と答えた人に「これからも安倍内閣への支持を続けるか」と聞くと「はい」は45%しかありません。つまり、安倍政権の堅い支持層は全体の18%にとどまるのです。

 実は、最近の国政選挙における自民党の比例区得票数は1700万〜1800万票の枠内にあります。有権者数は約−億人ですから自民党支持者は17%〜18%程度なのです。これは直近の圧勝した選挙でも変わりません。

 また政党支持率をみれば、トップは「支持政党なし」の41%です。ここが動けばいつでも自民党政権は崩壊します。決して自民党は盤石ではないのです。

 では、参院選で政権交代を果たすためには何が必要なのか。一つは野党連携です。共産党がせっかく大胆な提案をしたのですから、野党はその案に乗って結集すべきです。昨年の総選挙では東京地方区25区のうち23区は自公両党が占めました。しかし、与党候補が過半数得票を獲得したのは9区だけ。あくまでも机上の計算ですが、野党が一本化していれば多くの選挙区でひっくり返った可能性があるのです。

 ところが民主党が煮え切らない態度をとっています。理由は簡単。党内に自民党別働隊ともいえる右派が存在するからです。彼ら彼女らは橋下徹氏との連携も視野に入れているようにみえます。「改憲一派」といってもいいでしょう。

原点に立ち返り…

 維新の党が割れたように、この際、民主党も分裂すべきです。リベラル派は右派を追い出し、共産党、社民党、生活の党と山本太郎と仲間たち、維新の党との連携の道を模索すべきです。場合によっては自民党内のリベラル派、公明党とも手を結べばいい。

 ただ、現状では民主党リベラル派に力があるとはいえません。そこで、必要になるのが「市民の力」です。共産党の方針転換の背景にはシールズの動きがあったのだと思います。若者が共産党を動かしたといっても過言ではありません。

 社会変革に曲玉は必要ない。国政選挙に民意を活かせばいいのです。そのためには、有権者の半数近くを占める「無党派層」を投票に駆り立でなければなりません。本来、その役割を果たすのはマスメディアです。しかし大きな期待はできません。だったら、メディアが報じざるをえないほどの大きなうねりを私たち市民が世代を越えてつくればいいのです。デモ、集会、チラシ、署名……原点に立ち返り、考えつく地道な運動をすべて展開しましょう。独裁政権を倒すのは、いつの時代、どこの国でも「市民の力」です。負けてたまるか!



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若人(甲骨文字)

中川とき彦(書家・若松町在住)

 若い神に仕える巫女(みこ)が、長髪をなびかせ両手をあげて舞いながら神のお告げを求めようとして、エクスタシーの状態にある形。この女が若い女であったことから「わかい」の意味になった。

 人=立っている人を横から見た形で、r人・人間」をいう。

 若人と書きたくなった理由は、戦争法案に反対する市民の中にSEALDs(シールズ)という若い青年たちが、がんばっている姿に感動を覚えたからです。

 私はパソコン、インターネット、アイパッドとか、一切受けつけないアナログ人間でして、情報はテレビ・ラジオ(深夜)と赤旗日曜版が主です。ネット情報による広がりの大きさに只々驚嘆。

 2015年8月の日曜版に、若い青年二人と不破哲三さんが語り合う中で、不破さんは「戦後70年間の日本の政治における戦争観・戦争法案をどう見るか」を、とてもわかりやすく若者に応えています。「いま国民の世論と運動で安倍内閣を包囲する条件はどんどん大きくなっています。とくに若い人たちの中に、自発的に声をあげ、運動に参加する動きが広がっていますね。運動の質も量も前例がないように思います」。

 書棚を見ると羽仁五郎の著書が50冊ほどある中で、『君の心が戦争を起こす一反戦と平和の論理一』(光文社から昭和57年発行)の序に、「この本は二度と戦争を起こさないための本だ。今、世界は、そして日本は、一歩ずつ戦争の方向に向かっていると思われる。誰もがそれを望んでいないのに、誰もがそのことに手を貸している。そんな不思議な構造の時代になってしまっているのだ。こういう人間の心、歴史の動きというものは、いったいどこから来るのか…中略…ぼくが八十年余りの生涯をかけて研究してきたことの成果を、書きつくした。だからこれは、平和を愛する人びとに贈る、ぼくの遺言の書なのだ1982年12月1日羽仁五郎」。



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【連載・沖縄通信】 無法国家になった日本

原田みき子(沖縄県本部町在住)

 11月11日の早朝行動には議員団と市民会わせて500人が参加した。東京の警視庁から来た機動隊員と沖縄県警の機動隊員を合わせた人数より多かった。この日、市民は初めて囲いの中から脱出に成功し、再度ゲート前に座り込んだ。工事車両の前に寝転んで止める作戦も成功し、いつもは20分から30分で排除されているのに90分以上頑張った。つくづく人数さえいれば、工事は止められると確信した。

 実はマスコミでは「建設工事に着手」と報道されているが、本体工事はもちろん埋立て工事が始まっているわけではない。ボーリング調査と資材置場の造成が行われているだけだ。毎朝の行動の成果で、去年の11月に終わるはずのボーリング調査もいまだ終わらず、本体工事の目途はまったくたっていない。それをあたかも工事が進んでいるかのように安倍政権が発表するのは、米政府や国民へのごまかしであり、私たち沖縄県民に対しては「早くあきらめろ」という恫喝であろう。

 辺野古の集会でIさんが歌う「とにかくここで」という歌は、沖縄のフォーク歌手安里正美が作った。フォークというよりブルースに近い。紙幅の都合で全文を紹介できないのが残念だが、2回繰り返されるフレーズ「日本人でしょうか僕も 日本だと思いますかここは」のところで、皆涙する。1さんの声がかすれ、深く胸をつく。「ほんとうにそうだ。ここは日本なのか? 私たちは日本人なのか?」沖縄に暮せば疑問が湧いてくる。訴えても訴えても聞く耳を持たない政府。佐賀県がオスプレイの訓練に反対を訴えるとすぐ断念するのに、沖縄では辺野古の新基地建設に反対する候補が名護市長選、知事選、衆院選すべての選挙区で勝っても無視される。非暴力でおたがいに腕を組んで座り込んでいるだけなのに、屈強な機動隊員を何百人も使って非情な弾圧を繰り返す。「東京の機動隊が来てから暴力が激しくなった」と感想を漏らす人が増え「平手でなく拳(こぶし)で突いてくる」と気づいた。

 私は6月に受けた機動隊員の暴力で、体のあちこちにアザを作られ、写真を添付して公安委員会に訴えたが「調査の結果、そういう事実はありません」という返事をもらった。海上で繰り返される保安官たちの暴力も「安全のための行為」とされている。

 安倍政権は辺野古と他の2つの自治会に直接補助金を出す交渉を始めた。県や市を飛び越えた買収工作だし、知事の取り消し処分を私人をかたって訴えるなど、今や日本は無法国家に転落した。




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鈴木彰の「開会拒否? それで何とかなる気かい」




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太郎の部屋のほっとたいむ 37

「異説・野口英世物語」の世界

鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)

 文学座の「再びこの地を踏まず」は「異説・野口英世物語」という副題がつけられている。マキノノゾミの新作、西川信廣の演出で上演された。細菌学者としてノーベル賞候補に3度も名前があがるほど、その名は世界的に知れ渡っている野口英世である。そして、一般的には、母・シカとの感動的な母子物語を想起するところである。

 しかし、この作品は、なんともおかしな野口英世の青春物語に仕上がっている。二幕構成で、前半では金銭感覚のない英世が、善意の人たちに支えられている姿を描き、後半では25歳でアメリカに留学、米国人女性メリーと結婚、研究の成果をあげ死を遂げるまでが描かれる。このメリーとの16年間についての興味が作品の核となっている。したがって、英世の母・シカは登場しない。

 舞台は英世(今井朋彦)を支える歯科医師・血脇守之助(瀬戸口郁)の弟子・奥住亀吉(佐川和正)の語りで展開していく。金遣いが荒く、借金生活が続く。初恋の女性・ヨネ子(藤崎あかね)の下宿先でも無理じいをする。さらに渡米の資金のために結婚詐欺のようなことまでしてしまう。だが、研究心は旺盛である人柄に支える人がいるのだ。今井の演技力が際立っている。それは、後半も持続されていく。メリー(松岡依都美)との暮らしぶりも相変わらず自己中心であったが、伝染病の病原菌の発見など研究成果をあげていく。たしかに「人間・野口英世」に迫るマキノ流の評伝劇であった。(紀伊國屋サザンシアター=11月9日所見)




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民主、名誉ばん回のチャンス 戦争法廃止、野党共闘の先頭に立て

行木恒雄(ジャーナリスト)

 「9・19を忘れない」---戦争法(安保法制)廃止を求め、安倍政権の憲法と民主主義破壊を許さない「19日行動」の2回目、11月19日、国会周辺は9000人もの人々で埋まった。全国津々浦々で、闘いの炎は弱まるどころか、燃え広がっている。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」、学生の「シールズ」など29団体の呼び掛けで「2000万人署名」運動も始まった。

 安倍自公政権に代わる「戦争法廃止」の政権を実現するため、来夏の参院選では野党の選挙協力で議席の過半数獲得、さらに衆院選での勝利が期待されている。

 このカギを握るのは野党第一党の民主党だ。共産党が早くも「戦争法廃止の国民連合政府樹立と選挙協力」を提案、民主党はこれを真摯に受け止め、野党共闘の先頭に立ってほしい。かつて、わずか3年τ政権崩壊した民主党だけに、今こそ名誉ばん回のチャンスである。

期待される「国民連合政府」

 「国民連合政府」の提案は@戦争法廃止、安倍政権打倒の闘いを発展させる A一致する政党・団体・個人が共同して国民連合政府を作る B連合政府で一致する野党が国政選挙で選挙協力する---というもので、同時に昨年7月1日、集団的自衛権行使を容認した閣議決定の撤回も求めている。

 共産党として前例のない大胆なもので、社民党や生活の党はじめ、各方面から賛意が寄せられている。瀬戸内寂聴さんは「たいへん結構です。野党はまとまって力を強くし、お互いに虚心坦懐に力を合わせてほしい」、小林節・慶応大名誉教授も「わが意を得たり。誠実に野党が協力すれば、議席を取り戻せる。戦争法も廃止できる」と、歓迎している。

参院一人区で選挙協力

 一方、民主党は、中道派と言われる岡田克也代表が「共産提案の連合政府のハードルは高い。この前提条件を外さないと、選挙協力の話は進まない」という。これは党内の共産アレルギーに配慮したもので、選挙協力には前向きという。

 リベラル派の良妻昭・代表代行は「参院の一人区32で、候補者を一本化するのが共通認識だ」、枝野幸男幹事長も「参院選は立憲主義と民主主義を守る大事な闘い。特に一人区で、幅広く応援できる候補者を擁立することが重要だ」と主張、選挙協力に期待している。反自民の統一候補を立てて野党協力すれば、当選する可能性があるからだ。しかし、安倍政権に代わる新政権をどう作るか、民主党独自の政策はまだ見えてこない。

 今、戦争法廃止を闘う民主党への期待が高まっている。5野党の中心となって政府を追及、内閣不信任案提出で野党共闘に取り組んできたからである。それだけに、あえて苦言を呈すれば、安倍独裁政権打倒の肝心な時に、相変わらず.「解党して維新の党と新党結成」とか、「維新の党と統一会派」とか、路線対立を続けていることである。

 また、3年前の2012年総選挙で惨敗し、国民から見放された政策---「消費税引き上げ」「辺野古新基地の容認」「原発再稼働の容認」など、勇気を持って見直してほしい。さもないと、国民の支持は広がらない。

無党派層が政治を決める

 集会・デモに自発的に参加している学生・青年・主婦・学者…「無党派」と言われる多数の人々が、「野党は選挙協力して統一候補を立てよ」と期待している。無党派層が政治に目覚め、政治を決める時代に入ったと言えよう。注目すべきは来年から18歳以上が選挙権を持つこと。この若者たちには「共産アレルギー」はない。民主党は党内外の反共保守勢力に気を遣うよりも、将来ある若者たちの声に耳を傾けるべきだろう。

 一方、共産党の志位委員長は各種の集会に、放送に、飛び回っている。「岡田さんとは選挙協力の必要性では一致している。ただ、政権問題でハードルが高いと言っている。ハードルは壁ではない。壁は越えられないが、ハードルは越えられる。いろんな提案や意見があれば、良く聞いて、話し合っていきたい」と謙虚で柔軟な姿勢だ。党利党略を超えて団結した「オール沖縄」の経験に学び、戦争法廃止を求める全ての勢力が「オール・ジャパン」に結集したい。




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コ一ヒーブレイク

《うわぁ、虫が》

原 緑

 たまたま取りだした紙袋の底に、ひからびた小さな虫がばらばらと落ちていました。あたりに目をやると、この紙袋を置いてあった部屋の隅に、同じようにひからびた虫が点々と散らばっています。この見覚えのある虫はにっくき小豆ゾウムシに違いありません。紙袋の中の小豆を入れておいたビニール製保存袋を恐る恐る取り出してみると、あの小さな小豆に、ひどいものでは二つも三つもの穴があけられ、小豆の間にはまだ生きて動いているのやもう死んで動かないものや、とにかく、もう、虫が一杯!

 「うわあ…」目にした時のショックはかなり強烈でした。しかもけっこう分厚いビニール袋なのに、あちこちには豆にあいた穴と同じような円形の穴があけられ、夏の暑さで息絶え絶えの連中が、新鮮な空気を吸うためにやっとの思いで潜り抜けたのかと思わせるありさまでした。

 このアズキゾウムシはとても繁殖力が旺盛で、一粒の小豆の中で世代交代までするということです。異常発生と受け止めたのはこちらの取り方で、虫にしてみればごく正常に生きていたのかもしれません。

 これは夏の話。今また、新たに豆類を収穫する時期が来ました。中でも黒豆の枝豆の美味しいこと。乾燥させる前の黒豆です。採れたての豆は短時間で苑で上がるし、豆そのもののふくよかな甘みもあって、ビールに欠かせません。でも、すぐにお腹がいっばいになってしまうので困ります。

 ところで、無農薬で野菜を作るということはこのような虫の害はさけられず、商品としてのリスクを背負い込むことになります。こだわって頑張っている生産者は、農薬を散布する畑より何倍もの労力を要しますが、もちろん彼らの人件費はどこからも出できません。生産物の価格そのものだけしか要求できない農業にTPPは…などと、頭の中には雑多な思いが解決策を見いだせずに駆け巡ります。




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注意要する右翼改憲派の新動向

竹腰将弘(ジャーナリスト)

 右翼改憲派が最近、大規模な集会を開きました。

 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(共同代表・ジャーナリストの桜井よしこ氏ら)が11月10日、日本武道館で開いた「今こそ憲法改正を! 1万人大会」。座席は9割がた埋まり、参加1万1300人余という主催者発表は、さほど大げさではありません。

 「新憲法制定」を呼号する「日本会議」主導の集会だというのに、安倍晋三氏は「自民党総裁」の肩書きでビデオメッセージを寄せました。前代末聞のことです。もはや憲法擁護義務などどこ吹く風、総理大臣としての矩(のり)を超えています。

安倍首相のメッセージ

 首相はメッセージで「21世紀にふさわしい憲法を追求する時期にきている」としたうえ、「第1次安倍政権で国民投票法が制定され、第2次安倍政権で宿題とされていた投票年齢の18歳への引き下げが実現した。憲法改正に向け渡っていく橋は整備された」とみずからの事跡を誇示。「憲法改正へ、共に、着実に、歩みを進めていきましょう」と呼びかけました。

 主催した「国民の会」なる団体は、昨年10月、日本会議、神道政治連盟、各界の改憲派の個人を糾合して結成されました。集会への動員を担ったのも、各県の神社庁、崇敬会、遺族会などです。

 注目されるのは、「会」として置いた「全国代表者会議」の下に、各都道府県の「県民の会」が組織され、「国民運動推進団体」としての体裁が整えられるに至っていることです。

 集会では、「会」結成から1年の「国民運動の成果」として@全国47都道府県すべてでの「県民の会」結成、A地方議会での改憲決議釧都府県、B改憲賛同の国会議員署名422人、C改憲賛同国民署名445万人余---が、誇らしく報告されました。『永遠のO』の百田尚樹氏総指揮によるドキュメント映画「今こそ日本国憲法を改正しよう(仮題)」を年内に完成させ、全国的な上映運動を展開するなど、いっそうの「改憲国民運動」拡大を狙っています。

 思い起こされるのは、第−次安倍政権(2006年9月26日〜07年9月26日)当時の憲法をめぐる国民世論と改憲派の激しいせめぎ合いです。

 憲法をめぐるキナ臭い動きが極限に達した当時、読売新聞の世論調査で、1993年以来15年ぶりに改憲「反対」が「賛成」を上回るというエボツクメイキングな事態が起きました。同調査で、改憲賛成派減少、同反対派増加の転換点となったのは2004年の「9条の会」結成でした。

 安倍氏の政権投げ出しによる改憲運動の「一頓挫」を受けた08年3月の新憲法制定議員同盟の総会では、「われわれと正反対の勢力、『9条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織づくりができておりまして、それに対抗していくには、こちらも地方に拠点をつくっていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点になる」(愛知和男・同同盟幹事長=当時)、「各党の府県支部に憲法改正の委員会をつくり、全国的な網を張っていくことが私たちの次の目標。そしてできれば、超党派の全国的な国会議員、地方議員の連合の会をできるだけ早期につくりたい」(中曽根康弘・同会長)と、9条の会への対抗意識をむき出しにした「国民運動」志向が表明されました。

 実際には、この「運動」はながらく低調でしたが、第2次安倍政権登場後、各種保守団体にベルトがかかり始め、それなりの到達となっているとみるべきかもしれません。

 一内閣の解釈変更で、憲法を破壊する行動をとった安倍首相が明文改憲を目指すというのは大いなる矛盾です。当面の国民のたたかいの焦点は、立憲主義と民主主義を取り戻し、反立憲主義と独裁の政治にストップをかけることにあります。

 安倍政権の暴走は、さらにその先の明文による憲法破壊にまで向かっていることを見据え、戦争法廃止を実現する政府の樹立に向け、世論と運動をいっそう大きく広げていくことが求められています。




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小さなミニコミ紙の太きな役割「川房通信」 忘れてほならない事故と避難住民の労苦

 故郷の川房を離れて、避難生活を続ける、労苦が「川房通信」の行間から悲鳴のように聞こえてくる。紙面には、毎号のように、元川房部落の住民の訃報が掲載されている。江井剛さん(43歳)、飯崎良高さん(70歳)、若くして鬼籍に入られた。福島の事故さえなければ、死ぬ年ではない。過酷な避難生活が身も心もズタズタにしたのだろうか。東電の責任を改めて思い知らされる。

 川房通信の発行者、中里範忠さんは、現在は北海道富良野市に避難中。そこで「川房通信」を編集して、全国に散る元川房部落の人たちを励ましている。「川房通信」は新聞、TVでも紹介されている。中里さんが、古里への帰還に向けた準備のために一時帰宅した報告を紹介する。

 「大震災・原発事故後初めて4年6ヶ月ぶりに川房の自宅に泊まった。原子力規制委員会は『住民が帰還するか否かの判断に質す、住民が帰還する前から、帰還後に想定される住民の個人線量の水準について把握しておくことが重要である』として、いわゆる『ふるさとへの帰還に向けた準備のための宿泊』を提唱し、『帰還の選択をする住民の個人線量の水準、状況を把握するため、個人線量計等を用いて個々人の生活実態に即し、きめ細かく線量を測定する』ことにしている。(線量測定を各人に義務づけているわけではない)

 居住制限区域が準備宿泊の対象になったのは初めてだそうで、私はこれを申し込み、平成27年9月7日から9月20日の13泊14日間滞在し、そのうち11日間分について被曝量を測定記録した。居住制限区域では貴重なデータではないかと思う。これまで一時立ち入りで何度も帰宅していたが、泊まることは禁じられていたし、公表されていた放射線量からも、自ら測定したデータを見ても、荒廃した室内を見ても悲哀を感じるばかりで泊まることは考えなかった。

 今回、市のお知らせを見て、政府や市が泊まってもいいというのだから、そんなに心配することはないのではと、申し込む気になったのである。

 9月7日、午後O時15分市役所で線量計Dシャトルを受け取り早速身につけ測定開始。9月17日午後3時に機器を返却し、データをプリントアウトしてもらった。

 データには1日単位の被曝量と1時間毎の被曝量が確認できる。それによると測定期間の総被曝量が80・7マイクロシーベルト。これを一年間に概算すると2・89ミリシーベルトとなる。これから自然放射線量分として年間O・54ミリシーベルトを減算して、年間推定追加被曝線量は2・35ミリシーベルト。係員の言葉によると、原町や鹿島と比べると川房はやはり高いということだ。

 原町に買い物に出た他は、母屋と離れを行ったり来たり、室内で作業したり、生け垣のツタ草を刈ったりしたのを中心に約200mの外には出ていない。その場合の1時間あたりの平均被曝量はO・2からO・5マイクロシーベルトだった。この結果から、川房の居宅に住み、時折小高の街や原町に行くパターンなら、年間追加被曝は2〜3ミリシーベルトに収まる。仮に年間追加被曝を1ミリシーベルト程度に抑えるならば、1年の半分は追加被曝のないところで過ごすしかない。

 出仕事、山菜採りや茸狩り、犬の散歩など林道の奥に長時間入ることは被曝をより高めることになる。原発事故前の私の日常は、軽登山靴を履き、犬を連れてカメラを持って野山を歩き回ることだ。今後、同じことをすると追加被曝をたっぷり浴びることになる。敢えてそれをやるのは私の自己責任ということか」と手記に記している。




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事務局から

 秋も深まりましたが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。今号から最終頁のこの欄で、私たちの会はいまどんなことに力を入れているかをお伝えしていくことにします。

▼2000万署名

 安保関連法(戦争法)が強行採決されてから2か月が経ちました。立憲主義、民主主義、平和主義を破壊する戦争法の廃止に向けて、2000万署名が開始されました。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の呼びかけによる統一署名です。11月20日の世話人会で、私たちの会としても全力でこの署名に取り組むことを確認しました。目標は2000筆です。署名用紙を2枚同封しましたので、友人、ご近所のみなさんなど幅広く訴え、署名集めにご協力ください。2000万集まれば、戦争法廃止の大きな力になります。

▼9条連絡会

 所沢市内の8つの「9条の会」は、毎月「連絡会」を開いています。8月末には共同して、所沢・埼玉選出の国会議員へ要請行動を行いました。特に柴山昌彦衆議院議員にたいしては憲法違反の「戦争法」になぜ賛成したのか市民への説明を求めました。しかし、何度の問い合わせにも答えず不誠実な態度に終始しています。連絡会では、いまの情勢にあった新しいチラシをつくることを確認し、製作チームの打ち合わせが始まりました。多くの市民に読んでもらえる読み応えのあるものにしようと張り切っています。ご注目ください。




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