機関紙119号 (2016年3月26日発行)
真木實彦(福島県九条の会 福島大学名誉教授)
メルトダウンした原子炉の内部の状態もいまだよくわからず、廃炉作業に入るめども立っていません。その前段階である汚染水の処理に汲々としているのが現状です。毎日400トンに及ぶ汚染水が原発敷地内に溜まり続けていますが、長期的には敷地内に林立するタンクだけでは収容しきれず、海に放出する以外にないとの判断から、その了解を地元に求めている有様です。このような事態を事故後の原発がすでにアンダーコントロールの状態にあると言えるでしょうか。とても言えたものではありません。
事故直後放出された放射性物質を除染する作業は今でも続いています。しかし、県土の7割を占めると言われる森林の除染は行わないことがすでに決まっています。除染した汚染物を貯蔵する中間処理施設も原発周辺部に設置することが決まりましたが、その建設は難航を極めています。したがって、除染された汚染物は黒いシリコンバックに話められて県内至るところに「仮置きされたまま」放置されています。その風景は原発事故収束の困難さを無言で語り掛けている「異様な景観」を形作っています。
都市部では家屋の建つ敷地内に穴を掘って埋められたままです。運び出される見通しは全くありません。「異様な景観」や「我が家の庭に埋められた汚染物」が無くなるのはいつの日の事でしょうか。
昨年10月に行われた国勢調査の速報値が発表され、第一原発を取り囲む自治体4町(富岡、大熊、双葉、浪江)が初めて人口ゼロと判明しました。我が国で国勢調査が始まって以来の出来事です。常識から言って、住民が存在しない自治体など在りえないはずですが、どのように対処すべきか?避難者の立場に立った柔軟な工夫が問われる事態です。
事故当初県内外に避難を余儀なくされた県民は16万人を上回りましたが、現在でもまだ10万人近い人々が避難生活を余儀なくされたままです。とりわけ、長引く避難生活の中での「関連死」の増加が胸を痛めます。福島県内で、震災後亡くなったいわゆる「震災関連死」がこの5年間で2000人を超え、地震や津波による直接死を上回ってしまいました。またこれは、宮城・岩手の2倍から4倍を超える多さです。異常な事態と言えるでしょう。
避難者が最も多く移り住んでいるいわき市では仮設住宅での避難者の自家用車破損事件、仮設団地を目指したロケット花火打ち込み事件、新築住宅への落書き(「原発賠償御殿!」)事件などが起こっています。このような住民間の諍いないしは対立感情の表面化現象は氷山の一角で、表に出ない住民間の非一体感がかなり広く隠されていると思われます。これら住民間の分断状況の背景には放射線量によって機械的に線引きし、賠償などに差をつける行政の心無いやり方などが分断状況を増幅していることは確かです。
原発事故5年を経過した福島から問いかける全国規模のシンポジウムが今年3月県内で開かれました。そこで、原発にほど近い楢葉町で被災し、長期間の避難生活を余儀なくされているある女性の発言が深く参会者の胸を抉りました。「瞬時にして原発事故は日常生活のすべてを断ち切り、生きがいも、繋がりも、奪い去ってしまったのです。被災地の今の現実を直視して、福島を見捨てないで頂きたい」という切実な訴えでした。
福島県南相馬市の川房地域から避難した人たちの、小さなミニコミ誌「川房通信」(発行者、中里範忠さん、富良野市在住)の行間から悲鳴が聞こえます。
「この5年間を振り返って、避難者としての心境をなんと表現すればいいのか。悔しい、悲しい、情けない、辛い、いまいましい、断腸の… どの言葉を比べてみても中途半端な感じです。心中を正確に言い表すことができません。
そもそも、避難する際、行政からは防災無線を初め何の説明もなく、テレビで枝野官房長官(当時)の発表を聴いて避難したのでした」
「福島原子力発電所において何らかの爆発的事故があったということが報告されております。(中略)すでに10`圏のお住まいの皆さんに避難をお願いしておりましたけれども、改めて福島第一原子力発電所中心にして20`圏の皆さんに万が一の対応策として退避をお願いすることにしました。(中略)今回の措置によって10`から20`の間の方々は、具体的に危険が生じるということではありませんが、新たな対応をとることの可能性が出たことに万全を期す観点から20`に拡大したものであります」と。
これだけでは、原発がどうなったのか、なぜ逃げなければならないのか、どこに逃げればいいのかわかりません。とにかく原発から遠い北西方向に向かったというのが実際のはなし。
ガス欠状態になった車を川俣の道の駅に乗り捨て、同行していた親戚のトラックの助手席で飼い犬を抱いたまま16時間、五泉市に向かったのですが、途中二本松か郡山あたりを走っているとき、運転している義兄と、この避難はいつまで続くのかと話したのを覚えている。いまとなっては希望的楽観的観測と言われるわけだが、『せいぜい一週間かそこら』というのが二人の合致した気持ちだった。私だけではありません。川房の人たち全員が同じでしょう。
「1週間はあっというまに過ぎ、1ケ月、3ケ月、1年、3年、5年が過ぎてしまいました。気が遠くなるようです。これから5年後の川房の姿を想像することさえできません」と通信で語っています。
岩崎貞明(放送レポート編集長)
高市早苗総務相は2月8日の衆院予算委員会で、民主党の奥野総一郎議員の質問に答えて、政治的公平が疑われる放送が行われたと判断した場合、その放送局に対して「放送法の規定を順守しない場合は行政指導を行う場合もある」としたうえで「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使っで繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と述べ、放送法4条違反を理由に、電波法に規定のある電波停止を命じる可能性に言及した。
2月9日の同委員会でも「法律に規定された罰則規定を一切適用しないとは担保できない」と、再び電波停止の可能性を答弁した。
奥野議員の質問は、昨年11月、産経新聞・読売新聞に全面意見広告を掲載して、TBS『NEWS23』のアンカーマン・岸井成格氏の発言を「放送法違反」と断じた「放送法遵守を求める視聴者の会」という団体が出した公開質問状に対して、高市総務相が、個別の番組でも一方の政治的見解だけを繰り返し放送したような場合には放送法違反の判断を下す可能性がある、と踏み込んだ回答を示したことを問いただしたものだった。
昨年来、安倍首相をはじめ閣僚や自民党首脳などから、「政治的に公平であること」などをうたう放送法4条の「番組編集準則」を根拠に、放送局に対して威圧的な態度に出るケースが目立っている。法律に違反したらペナルティを受けてしかるべき、という考え方だ。しかし、大多数の憲法・言論法の研究者は「番組内容に関する規律は放送事業者の自律に基づくべきで、番組編集準則違反に対して電波法の無線局の運用停止や放送法の業務停止などの行政処分を行うことは表現の自由を保障する憲法上許されない」との見解だ。実際、番組内容を理由に政府が放送局に対して不利益処分を行ったことは、過去に一件もない。放送法には番組編集準則に対応する罰則が設けられていないし、他の業界を監督する法律にあるような業務改善命令などの規定も存在しない。つまり、番組内容を理由とした不利益処分を想定した法律の構造にはなっていないのが放送法なのだ。
その理由は明らかで、政府による放送への介入を排除するのが放送法の目的だからだ。戦時中、政府に対して批判的な言論が一切許されることがなかった反省から生まれた日本国憲法は、表現の自由の保障を高らかにうたい、そのもとで成立した放送法は、表現の自由の一形態である「放送番組編集の自由」を主軸としている。だから、政治的公平などを規定した放送法4条は、あくまでも放送事業者が自律的に守るべき倫理規範であり、これを根拠とした罰則適用は即ち憲法違反で、あり得ないのだ。
総務省は2月12日、高市発言をフォローする形で、政治的・公平に関する「政府統一見解」を国会に提出し、個別番組でも一方の政治的見解だけを繰り返し放送した場合には放送法違反と判断しうるという見解を示した。では、政府の立場を一方的に宣伝する政府広報番組は、軒並みこれに抵触するのではないか。
だいたい、政府そのものが一方の政治的立場を代表する存在なのだから、放送の政治的公平を判断する資格があるはずがない。どの先進国を見ても、番組内容にかかわる問題は第三者的な独立行政委員会が所管することになっている。
放送局の幹部を呼び出して事情聴取したり、街頭インタビューの扱いなど番組表現の詳細に至るまで事細かく立ち入って「要請」したり、このところの自民党は放送局への介入が甚だしい。法律が定める権限に基づかない限り放送への介入を認めていない放送法への違反行為を繰り返しているのは、まさに自民党のほうではないか。
極右集団の様相が濃い意見広告団体「放送法遵守を求める視聴者の会」に対抗して「政治家に放送法遵守を求める視聴者の会」というのも立ち上がって、2万人以上のネット署名を集めている。放送が権力に屈してしまうのか、市民とともに自由と民主主義を守る戦線に加わるのか、いま正念場を迎えている。
鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)
壌晴彦が主宰する演劇倶楽部『座』は、「日本の美しい言葉と姿の文化」を継承し、次世代への橋渡しをするNPO法人として名乗りをあげた。今回公演の「おたふく」は、山本周五郎の珠玉の短編「妹の縁談」「湯治」「おたふく」の三本で、構成・演出は壌晴彦。江戸情緒と下町の人情がすがすがしい周五郎作品を和の世界でたっぷりと見せてくれた。共通しているのは、ふた親を支え、けなげに生きる姉・おしず(土居裕子)、妹・おたか(相澤まどか)、それぞれの心の裡に秘めた愛の物語。長唄の師匠・おしずは、はたから見れば器量よしなのだが、自分では「おたふく」と信じている。妹のおたかと両親と江戸日本橋の長屋に住んでいる。弟の英二は妙な浪人者の仲間に入り、世直しの夢に浮かされていて金の無心だけにやってくる。
みどころはやはり「おたふく」の一篇。おしずが若い頃から思いを寄せていた彫金師・真二郎(森一馬)と結婚する。おしずは真二郎に尽くし幸せであった。だが真二郎は自分が得意先の「鶴村」の主人・仁左衛門に納めた高価な品を、おしずが身につけているのを見て、いらぬ憶測から酒を浴び苦悶する。しかし、おたかから姉の一途な心を聞かされて、涙するのであった。
壌晴彦の語りは的確な声と独特の響きがあった。土居裕子と相澤まどか、ともに好演、内山森彦が老爺など四役をこなす奮闘ぶりを見せた。邦楽の鳳聲喜三雄の笛の演奏が冴えていた。(新宿御苑・シアターサンモール=3月18日所見)
原田みき子(沖縄県本部町在住)
前県政の埋立て承認には暇疵があるから辺野古の埋立ては不可と申し立てた沖縄県に、国は代執行訴訟を起こし争っていたが、3月4日突然和解案を受け入れた。
私はこのニュースを耳にした瞬間「国は何を意図したのだろう」と不安でいっぱいになった。これまで何度も国には裏切られている。去年の夏にも「集中協議に入るから工事を一時中止する」と発表し、形式だけの協議を演出して選挙を有利に導いた。今回も近づく選挙の対策ではないか?最初に浮かんだ考えだった。辺野古に通う仲間たちも「工事中断に追い込んだのは一定の勝利だが油断できない。きっと選挙対策だろう」と連絡しあい、これまで同様の運動を続けることを確認した。
安倍晋三首相は「和解」を言いながら「辺野古が唯一」と述べる有様で、県民を愚弄するにも程がある。
沖縄はサンフランシスコ講和条約で吉田茂首相によって米国に占領地として差し出され、岸信介首相によって日米安保条約のために米軍基地として差し出され、復帰に際しては岸氏の弟佐藤栄作首相によって、本土の基地の移設先とされ基地拡大が進んだ。現在の首相安倍晋三氏は岸氏の孫であり「ナチスのようにやればいい」と発言して物議を醸した麻生太郎副総理は吉田茂首相の孫である。
特定秘密保護法、戦争法、次に来るのは徴兵制か……と暗たんたる思いであるが、6月の選挙では現政権にはっきりN0を突き付けたいものだ。
さて3月12日の沖縄タイムスのコラム「和解成立の衝撃」は興味ある内容だった。米国務省高宮の談が載っており「初めて和解案を目にしたときの印象は代執行訴訟が要件を満たしていない点を指摘し、敗訴する可能性を示唆していた。法廷闘争に出た日本政府の見通しの甘さを明示していた」と振り返り「日本政府が敗訴したとなれば、日米両政府が沖縄に対して強硬姿勢との誤った印象を与えかねず、米議会も再び懐疑的になる恐れがある」と明かしている。米国側は、日本政府は訴えたものの負ける可能性があると感じていたようだ。あわてて政府が和解に転じた裏には米国からの指示があったのかもしれない。国務省高官は「(日本政府は)早急に事を運ぼうとして入り口でつまずいたが、態勢を立て直した。埋立て承認に瑕疵はない。取り消しの違法性を間う裁判では必ず勝利する」と結んでいるが、辺野古の現場を見れば再び工事の完成に疑問を抱くことになるだろう。日米両政府に鍛えられて私たちの運動はより強く大きく成長している。
丸山重威(ジャーナリスト)
「野党は共闘!・安倍はやめろ!」 国会を取り巻く群衆の声をよそに、昨年は戦争法を強行し、今年になってからは、「明文改憲」のムード作りに躍起になっている安倍政権を倒し、「戦争への道」を阻止しようという共同の闘いが広がっている。
夏の参院選に向けた野党共闘では、地域の市民団体と野党の地域組織との協議が進み、3月中旬までに11県(9選挙区)で統一候補擁立が決まった。
共産党が選挙区での独自候補擁立を取りやめ、民主党の公認候補や無所属候補への一本化で合意か大筋合意したもので、宮城、福井、山梨、長野、長崎、熊本、宮崎の7県に、鳥取・島根、徳島・高知の2合区を加えた計9選挙区で合意した。
さらに、4月24日投票の北海道5区と京都3区の補選でも、市民組織「市民連合」が参院選以外で初めて統一候補の池田真紀氏(無所属)を推薦、京都では共産党が独自候補をおろし、事実上、比例から鞍替えの民主党・泉健太氏と、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党との争いになる見込みだ。
今回の共闘の特徴は、運動を続けてきた市民と、政党が一緒になって生み出されてきていることに大きな特徴がある。運動の中心になっている市民団体は、戦争法反対運動を担ってきた、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」、「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」、「安全保障関連法に反対する学者の会」、「立憲デモクラシーの会」、「安保法制に反対するママの会」の5つの団体が一緒になって結成した「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合{通称 市民連合)。
有志が呼びかけ人となる形で、2015年12月20日、国会内で記者会見して発表した。取り組んできた2000万人署名を軸に、この理念と方針に賛同する諸団体の有志、個人で組織し、@安全保障関連法の廃止 A集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む立憲主義の回復 B個人の尊厳を擁護する政治一を掲げ、野党共闘促し、積極的に候補者の推薦や支援をする、とした。この考え方をベースに各地で取り組みが始まった。
これを最初に具体化して、統一候補を生み出したのが熊本。同県の民主、共産、維新、社民、新社会党の5野党が、県内の市民グループ50団体による「戦争させない・9条壊すな!くまもとネット」からの要望で無所属の統一候補擁立を確認。ことし2月11日、無所属の弁護士の阿部広美氏(49)と「市民連合」が、@安全保障関連法の廃止A立憲主義の回復B個人の尊厳を擁護する政治の実現一を掲げた政策協定を締結した。
続いて、3月2日には、宮城県の民主党と共産党が、民主現職の桜井充氏(59)に候補者一本化を決定、2月に桜井氏と政策協定を結んだ社民党のほか、維新も加えた4党共闘が成立。
さらに、7日には長野で共産党が民主公認の元TBSキャスターの杉尾秀哉氏(58)を推薦、野党候補として一本化することを決めた。
8日には、今回の参院選で合区される「徳島・高知」選挙区で、民主、共産、社民三党が、民主推薦の新人、弁護士・大西聡氏(52)を「統一候補」とすることで合意。
17日には、宮崎で無所属の読谷山洋司氏(52)、18日には長崎で民主党公認の西岡秀子氏(51)も決まって、確認書が交わされている。
このほか、共同通信のまとめでは、福井、山梨と、鳥取・島根の合区でも「大筋合意」が成立。青森、岩手、秋田、山形、栃木、岐阜、和歌山、岡山、山口、愛媛、大分の11選挙区では、一本化に関する協議が続いている。
「戦争への道」を防ぎ、立憲主義と平和憲法擁護の日本を作れるか、野党共闘とその成果が、日本の将来を決める大きなカギを握っているといえそうだ。(元共同通信)
原 緑
3月はいろいろなことが変わる季節です。雑木林では、茶色のカサカサの幹の思わぬところで、伸びるタイミングを待っている小さな新しい芽が目につくようになりました。人間の社会では一般的に年度末で、部署や人事の交代があります。放送の番組交代も大きな問題を含みながら、各社で足並みをそろえて準備がなされているようです。
過日、学士会の新しい代議員の候補者一覧を見ていた夫が「お、籾井だ。籾井がいるぞ、×をつけなきゃ」と騒いでおりました。
とうとう学士会にまで乗り込んで“正しい判断をする学者の世界”に安倍路線を敷こうというのでしょうか。たしかにルールに則った立候補で、これもヒトラーもどきのやり方なのかと気分の悪いこと。
「あいつ何処を出たんだろう?ふう〜ん、九大の経済か」、「学士会の人というのは教養があるのでしょ。まさか彼に投票する人がいるとは思えないけれど。なんせ、良識を覆す騒ぎで新聞をにぎわせたし」、「そんなことはないぜ」
専門馬鹿(失礼!)という言葉もあるように、自分の研究以外のことは知る必要がないと思っている学者先生もいるのでしょうか。
「番号を間違えないようにね」「他の候補者の冤罪になったらまずいからな」などと冗談をかわしながら、黒いボールペンで丁寧に×印を書きました。
ところが、その後で「あ!」と落ちが付いたのです。該当する選挙区以外の人に印をつけた場合は無効です、と書かれてあるではないですか。籾井氏の判断は九州大学を出た人のみに与えられた権利だったのです。
修正液の出番かと思いきや「いい、このままで。意思表示だ。他の候補者で×をつけなくてはならない様な人もなさそうだから、無効でもとにかく籾井には×」と一件落着。
野次馬根性ではありますが、結果を知りたいと思います。
行木恒雄(ジャーナリスト 椿峰在住)
「違憲の戦争法(安保法制)廃止法案」を2月に民主、共産など5野党共同で衆院に提出していたが、政府・与党は無視して審議せず、戦争法を3月29日に施行する。この暴挙に全国各地で抗議行動が盛り上がるとともに、市民と野党との連携による「安倍内閣退陣」「参院選は野党共闘で」という運動が前進している。具体的には参院一1人区での選挙協力で統一候補を擁立して当選を目指す。
その中心課題は参院で自民、公明など改憲派に改憲発議が可能な「3分の2議席」を獲らせず、憲法9条の明文改憲の野望を打ち砕くことだ。衆院では自公両党ですでに「3分の2」以上を確保しており、安倍首相はついに改憲を「在任中に成し遂げたい」と本音を明言した。私たちは戦争法廃止の2000万人署名運動を軸に、衆参同日選も視野に総力を結集したい。
学生の「シールズ」や「学者の会」など市民団体が戦争法廃止と立憲主義・民主主義の回復のため「野党共闘」を求めているのに呼応して、2月19日には民主、共産、維新、社民、生活の5野党党首が「安保法制廃止・閣議決定撤回」、「安倍政権打倒」、「国政選挙で現与党と補完勢力を少数に」、「国会、国政選挙などあらゆる場面で協力」一一の4項目で合意し、戦争法廃止法案を衆院に共同提出した。「自公」対「5野党と市民」という画期的な対決構図だ。これに脅威を覚えた自民は「自公」対「民共」という的はずれな反共宣伝に必死だ。
7月の参院選は自民、公明、おおさか維新、日本のこころを大切にする党など改憲派4党と民主・維新の合流新党「民進党」(岡田克也代表)や共産、社民、生活の改憲反対派4野党との対決だ。参院の議員定数は242で、半数の121が改選議席。現有議席でみると、自公など改憲派4党が146で過半数を上回り、非改選が84もあって底堅い。改選62が全員当選すると総計146で、目標の「3分の2」の162に16足りないが、不足分は党勢低迷の旧民主から奪い、無所属からも取り込んで目標達成できると強気の皮算用。一方、改憲反対派の4野党は非改選がわずか28、改選53(うち旧民主42)が全員当選しても合計81で、「3分の1」ぎりぎり。政権運営に失敗した旧民主の「負のイメージ」が強く、マスコミの世論調査でも「合流新党に期待しないしが朝日51%、日経64%、NHK69%など。
民進党単独では「新しい風」を起こせず、現状維持すら難しそう。従って、選挙協力が可能な「32の一人区」が主戦場だ。
旧民主政権下だった6年前には8議席(今回改選)確保できたが、政権崩壊した3年前は完敗してゼロ。改選議席の維持と新たな統一候補による議席増を果たすには野党共闘による選挙協力しかない。
このため、共産党の「選挙協力による統一候補擁立」「共産候補を取り下げて比例区に回す」という現実的で、大胆な呼びかけが市民運動の共感を呼び、野党共闘の合意となった。岡田代表は党内の根強い「共産アレルギー」を乗り越えた。
作家の瀬戸内寂聴さんも「道は野党共闘しかない。若い人たちは共産党への偏見などない」と期待している。
3月4日、宮城で初の5野党の政策協定で無所属の統一候補が誕生したのに次いで、長野、新潟、宮崎、長崎、福井、合区の徳島・高知でも統一候補が決まった。熊本ではすでに市民団体支援で誕生、沖縄では「オール沖縄」の候補を決定済み。合区の鳥取・島根でも前向きに協議中。東京に次いで関西でも「市民連合」が発足、滋賀、奈良、和歌山での候補者一本化を働きかけている。
一方、世論の過半数が改憲に反対だが、安倍首相は参院選に勝って2018年9月末までの自民総裁任期中に改憲発議・国民投票に着手するため、「衆参同日選挙」に踏み切るとの見方もある。「10%増税の延期」を掲げて世論を誘導し、野党共闘を分断して優位に立つという戦略だ。この挑戦に勝つため、同日選に備えて衆院選でも選挙協力しなければならない。
今後、衆院選に向けた野党共闘では、アベノミクス、貧富の格差、消費税10%増税、原発再稼働、辺野古新基地建設、待機児童…など、幅広く、多くの課題に取り組むよう期待されている。
山本達夫(会世話人)
「自衛隊員に与えられる任務は、これまで同様、危険の伴うものです」。3月21日行われた防衛大学校の卒業式で安倍首相はそう訓示した。29日施行される安保関運法は、「これまで同様」どころか戦場で殺し殺される危険が伴うものである。今年、防大生の任官拒否が昨年の25人から47人へ増えた理由は、その危険拒否と考えるべきだ。
防衛官僚だった柳澤協二さんは『自衛隊の転機』(NHK出版)で、「これまで公務で死亡した自衛隊員1800名の中で、訓練死は1500名にのぼり、1年で25人が訓練で亡くなっていることになる」と述べている。いくら危険な訓練といっても戦場以上の危険な訓練などありえない。施行後は年間25人以上の死者と殺人者まで生まれる任務を課しておきながら、「これまで同様の危険」などと訓示する男に最高指揮宮の資格はない。
●ピースボート世界一周の旅
お話:清水滋雄
日時:4月16日(土)14:00〜
会場:すうぃーとはーと 喜多町11ー15 (航空公園駅から徒歩7分)
会費:500円(コーヒー、ケーキ付き)
問合せ:佐藤(04-2942-3159)
▼野党共闘広がる
戦争法強行から半年が経ち、3月末に施行されようとしています。これに対して野党5党が戦争法廃止、安倍政権打倒などで合意し、参議院選挙の1人区での統一候補擁立が急ピッチで進んでいます。熊本をはじめ、青森、宮城、長野、高知・徳島、長崎、沖縄の9選挙区で実現し、さらに統一候補擁立に向けた努力が続いています。
▼2000万署名
3月9日、所沢駅頭で、市内8つの9条の会が共同し、2000万署名を取り組みました。当日はあいにくの雨でしたが、それぞれの会がのぽりをたて、チラシを配布し、マイクで署名を訴えました。私たちの会からは、15名が参加、全体では30名の大規模な宣伝行動に。これまで私たちの会として、9条連絡会で作製したチラシ・署名用紙を約2万枚配布し、集めた署名は700筆を超えました。4月9日の「9の日」行動は署名を中心に新所沢駅頭で行います。ぜひ、ご参加を。あと1か月、目標の2000筆実現まで頑張りましょう。
▼沖縄の最新映像
3月12日、糸数慶子さんを迎えて行われた「沖縄に基地はいらない戦争法の廃止を」の集会には160名が参加し、力強い集会となりました。集会の冒頭、工事中止を盛り込む「和解」成立を喜ぶ沖縄の最新映像が上映されました。この映像(DVD)をご覧になりたい方は世話人までご連絡ください。