機関紙120号 (2016年4月29日発行)



もくじ

ひしひしと感じる参院選の重要性
 ヒトラーのまねごと
 警戒心と自信を胸に
   桂 敬一(元東大教授・メディア研究者)

未 完
   中川とき彦(書家;若松町在住)

戦後の原点を心に刻みつつまだ間に合う、その今に
   早乙女 勝元(作家)

鈴木彰の「戦争法廃止に怯え妄・虚言」

太郎の部屋のほっとたいむ 41
 楽しかった「フォー力ード」

【連載・沖縄通信】異常な目取真俊氏逮捕
   原田みき子(沖縄県本部町在住)

過酷きわまる労働者の実態 多数を取ってこそ…
   上田月子(弁護士・川越法律事務所)

コ一ヒーブレイク 《民話の灯》
   原 緑

無責任な「戦前」に立ち枯れを1
   鈴木彫(イ一フストレーダー・調布市在住)

熊本地震の現実の「恐怖」と北朝鮮の幻想の「脅威」
   梅田正己(書籍編集者)

『臨界幻想2011』上演に
   大森喜久男(所沢演劇をみる会)

紹 介
  ●吾妻9条の会講演会「知っておきたいイマドキの改憲
  ●第15回よりよい教科書を子どもたちに教科書学習会「『特別の教科道徳』って何だ?」第2弾!
  ●メーデー5月1日(航空公園野外ステージ、10時)
  ●5・3憲法集会 有明防災公園
  ●ドキュメンタリー映画『2015国民平和大行進一歩でも二歩でも』
  ●米寿記念 彫金芸術の金字塔 岡部昭回顧展

事務局から
 ▼原発はただちに停止せよ
 ▼統一候補擁立すすむ
 ▼2000万署名
 ▼5月2日「クローズアップ現代」に注目
 ▼総会は7月に




ひしひしと感じる参院選の重要性

桂 敬一(元東大教授・メディア研究者)

 敗戦後の日本では、国民生活が長期にわたって飢え、住宅難、貧困などによって窮迫に脅かされてきたが、不戦、平和、民主主義の約束が未来の明るさを保証してくれており、その安定感はずっと政治に対する期待と信頼の拠りどころとなってきた。

 しかし、第二次安倍政権が出現、長官の首をすげ替えて、法制局に集団的自衛権による武力行使も合憲、とする解釈をうち出させ、これを閣議決定だけで政府方針として政策化、さらに国会における事実上の与党単独採決によって、いつでも、地球上のどこででも、米軍が要請するどのような状況でも、「切れ目なく」自衛隊を協力させることができる、とする新安保法制を成立させてしまったのだ。それはクーデターというに等しい。それだけではない。これでも自衛隊を、海外における実戦に参加させることは、なかなか難しい。なにしろ現行憲法九条がまだ生きており、その戦力不保持・武力不行使の規定は厳として存在しているからだ。これでは南スーダンのPKO(国連平和維持活動)に送った自衛隊を、襲撃に遭った外国の友軍救援に差し向け、戦闘に参加させること(駆けつけ警護)がやりにくい。そこで安倍首相は最近、衆参両院ともに与党が改憲提案に必要な議席の三分の二以上を獲得し、現行憲法をそっくり改憲する−それを今度の選挙で実現、自分の自民党総裁・首相の任期中に実現する、と公言しだした。今度の選挙とは、7月の参院選、さらに可能ならばそこでの衆参同時選挙を指すものであることは明白だ。仮に同時でなくとも、先に参院選で大勝ちすれば、すぐ衆院解散・総選挙に打って出るだろう。

ヒトラーのまねごと

 安倍政治の暴走は、さらに酷さを募らせる。最近になって首相は、自然災害の突発、テロによる攻撃などに対処するために、憲法に「緊急事態条項」を設ける必要がある、といいだした。これは、緊急事態が生じたときは、立法府=国会を飛び越え、その議決なしに行政府=内閣が法律と同じ効力を持つ政令を定め、運用することができる、というものだ。すでに自民党の改憲草案中にはこの「緊急事態条項」が書き込まれている。実はこれは、ナチス・ドイツのヒトラーの真似といってもいい。ヒトラーは憲法には手を着けなかったが、緊急事態の際は行政の長に全権を委ねるとする「全権委任法」(略称・授権法)を議会につくらせ、独裁の手段として活用、憲法を空洞化したのだ。

 熊本地震発生の翌日、4月15日、菅義偉官房長官が記者会見で、大災害時などの対応を政府に委ねる緊急事態条項を憲法に新設することは「極めて重く大切な課題だ」、と述べたのに注目したい。また同日、米国務省のカービー報道官が熊本災害支援を口にすると、防衛省が素早く動き、米国本土でも、米軍基地のある沖縄でも、危険が取り沙汰され、使用が抑制されてきた米軍のオスプレイが救援物資搬送に使われ、中谷防衛相がその安全性を保証する発言を行い、テレビがその姿を映し出したものだ(4月18日)。

警戒心と自信を胸に

 こうした流れの全体は、日本がいま、容易ならざる事態に直面していることを、示している。戦後の不戦、平和、民主主義の約束がひっくり返され、新しい「戦前」が強引につくり出されようとしている、といっても過言ではない。これにストップをかけ、安倍政治にまつわる面々を表舞台から放逐、戦後政治のなかにあった希望をより堅固なものとして再生、さらにそれを、東アジアの平和確立、戦争によらない方法でのイスラム圏の安定化、「パナマ文書」が暴露した腐れきったグローバル資本主義の克服などのために発展させ、世界を新たな針路に向かわせていくことこそ、いま日本がなすべきことではないのか。

 これらのことを考えるとき、7月の参院選の重要性をひしひしと感じる。参院選で自・公・おおさか維新に3分の2以上の議席を許せば、これまで考察したような彼らの暴走は、一気に加速し、この国を取り返しのつかない地点にまで押し流してしまうだろう。だが、反対に、立憲主義の市民と野党の連合がそれを許さず、つぎの選挙でさらに多くの議席を獲得する勝利を積み重ねていけば、そこに新しい不戦、平和、民主主義の伝統が定着、日本の政治の変化は、国際社会でも評価され、信頼と期待も大きくなっていくはずだ。そうした警戒心と自信との両方の思いを胸に、選挙に臨みたい。




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未 完

中川とき彦(書家・若松町在住)

 『未完・仲代達矢』の本を読んでいる。演劇人、映画俳優として歩んでこられた随想の頁をめくるにつれ、教えられるところが多い。それにとても読みやすいところが一番であります。

 私の、劇場に足を運んだ記憶といえば、学生の頃に二、三度。佐渡島では地方ドサ回りの芝居「まぶたの母」くらい。仲代達矢の演劇はみたことがありません。映画では「椿三十郎」「天国と地獄」「切腹」が記憶にある。近年では、テレビで藤沢周平原作の「三屋清左衛門残日録」とつい最近、『時間のあと』に収められている「果し合い」。画面の中の仲代達矢にとても魅力を感じているファンの一人。その『未完』の中で語られる言葉に、人間としての仲代達矢さんに、深い感動を覚えるのです。

 あとがきに、

 『未完』というタイトルについて、一言ここに添えておきたい。これまで役者として、数々の映画や演劇の作品を演じてきたが、その自分の演技について、それなりに満足するものではあっても、すっきり臓腑に落ちるまで納得できるものはなかなか見当たらない。どうしても「何かを成し遂げた」という感覚が得られないのだ。いや、もう少し具に言うと、八十歳を越えた今になっても、太陽の光の屈かない真っ暗な洞穴の中で、蝋燭一本の光だけを頼りに何かを探し続けている自分の姿をイメージしてしまうのである。ある意味でそれは宿命のようなものかもしれない。

 戦争中の貧しくてひもじい生活、恭子夫人とパリでみた『授業』という芝居に深く共感を寄せた仲代達矢は、無名塾で今も後進の指導と自らも更に追求していく姿に、私は只々脱帽の他ない。戦争と抵抗の思慮に!!

 この仲代達矢の探究心に、私の書生活は何と甘いものかと思わずにいられない。今日の時流に乗らない、効率化の流れに乗らない。もっともっと職人的に、古典を求めて…。



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戦後の原点を心に刻みつつまだ間に合う、その今に

早乙女 勝元(作家)

 中米コスタリカ共和国を訪ねたのは、10年余も前のことだが、コーヒー農園で会った青年との会話が思い出される。

「君たちの国は軍隊がないが、どこかの国から攻撃される心配はないの?」
「ありません」
「なぜ?」
「こちらからの軍事的な挑発は絶対にない。だって、ないものは出せませんからね。したがって、やられる心配もないんですよ」
「日本もホントは軍隊のない国のはずなんだが、今はそうはいかない。近くに物騒な国があるから、ほどほどの軍事力が必要という人が多い。備えあれば憂いなし、とかいってね」
「えっ、それは逆じゃありませんか。備えがあるから憂いが生じる、と」

 私は、次の言葉を失った。コスタリカは常備軍廃止を憲法に掲げて半世紀余になるが、どこかの国から攻撃を受けたためしはない。近隣諸国に平和主義を訴えて、中米和平をまとめてきたことで、ノーベル平和賞となった。パラダイスではないが、私が取材した隈り、改憲して軍事国家への声は皆無だった。

 日本の平和と民主主義は、いま重大な危機にある。3ヶ月後の参院選挙の結果次第では、平和憲法が地に落ちるかもしれない。

 小国コスタリカから学ぶべきは、誰もが今こそ戦後の原点に戻って、「国の交戦権はこれを認めない」とした初心を心に刻みながら、これからの政治を考えるべきではないのか。まだ間に合う、その今に。




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鈴木彰の「戦争法廃止に怯え妄・虚言」




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太郎の部屋のほっとたいむ 41

楽しかった「フォー力ード」

鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)

 劇団青年座が上演した「フォーカード」。大人の雰囲気に溢れ、笑いあり、スピード感あり、起承転結が見事にあり、旬の俳優たちが持ち味を発揮、十分に楽しめた。登場人物は13人、カードと同じ数である。作=鈴木聡(ラッパ屋)、演出=宮田慶子。

 昭和の雰囲気がある中野坂上の喫茶店「憩」が舞台。ここで、20数年ぶりに集まった4人がいる。横山千鶴(増子倭文江)に呼び出された神崎由佳里(野々村のん)、中込彰(大家仁志)、谷義人(横堀悦夫)である。かつて劇団「新流」の俳優養成所で芝居を学んだ仲間たちだ。劇団員には昇格できず、それぞれの道を歩んできた。千鶴が相談を持ちかけたのは、ある人物から大金をだまし取るためのペテンである。そのために、かつて養成所のフォーカードと呼ばれた四人の演技力で成功させようというのである。この発想がユニーク、よくぞ考えついたものだと感心させられた。ある人物とは中野区の地主で投資家の立花秀雄(山野史人)である。いかにして大金をせしめるのか、シナリオが作られ、喫茶店で芝居の稽古もする。これがまた面白い。「ワーニャおじさん」の一場面なども再現されたりもする。

 人を騙してまでも大金をものにしたいという性の悲哀が、おおらかな喜劇として描かれていて大成功。初日乾杯にもつきあって、作家や演出家、俳優たちとも談笑、大きな収穫であった。(新宿・紀伊國屋ホールー=4月15日所見)




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【連載・沖縄通信】異常な目取真俊氏逮捕

原田みき子(沖縄県本部町在住)

 4月1日の芥川賞作家目取真俊氏の逮捕は県民に大きな衝撃を与えた。目取真氏はカヌーメンバーの中心であり、プログ「海鳴りの島から」でも活動を発信している。軍の警備員は彼を狙っていたのではないか?と思う根拠はいくつかある。氏の証言に拠れば、これまで一人か二人しかいなかった軍警が四人もいて、活動も黙認していたのにいきなり走ってきて仲間を捕まえようとしたこと、氏が「やめてくれ」と抗議したら逆に陸上に引きずり上げられ、後ろ手に手錠をかけられ連行されたそうだ。最初から本名で呼ばれたことも不思議だ。8時間の拘束の間、銃をホルダーに入れたMP1人が監視し、食事はハンバーガー1個と水。何回も弁護士との面会を求めたが聞き入れてもらえなかったそうだ。

 目取真氏に非が無かったことは、名護署が引き取りを拒んだことからも明白である。国と県が「和解」をし、工事も中断されている中でこの逮捕は異常である。工事の遅れに焦った米軍が、中心人物を逮捕して運動を弱体化させようと意図したのではないか?しかしこれまで25名の逮捕者と44名の救急搬送者を出しても衰えない私たちの運動は、叩かれれば叩かれるほど強くなっていく。目取真氏も釈放されて翌日から現場に戻っている。差し入れの一番に大学ノートとペンを頼んだあたり、すでにこの逮捕劇は作品として書き始められているだろう。

 4月18日「辺野古土砂搬出反対全国運絡協議会」の交流会が名護市で開かれる。私も所属する「本部町島ぐるみ会議」が主な受け入れ団体で、全国8県18団体総勢300名の参加が見込まれる。辺野古の工事に使う土砂は西日本を中心に8県から運ばれることになっているが、中には国立公園の小豆島もある。2013年12月「環瀬戸内海会議」が防衛省や環境省に辺野古へ瀬戸内海から土砂を搬出しないよう申し入れをしていて、この動きが今につながっている。ありがたいばかりである。

 実は16年前にも自宅の目前の山々が山口県の会社に砕石されそうになり、「辺野古の海にいくのではないか」と新聞で訴えて運動を起こした経緯がある。近隣の集落と連帯してシンポジウムや音楽祭を開き、会社側に断念させたが、運動するなかで日本唯一の円錐カルストの山と分かった。辺野古の海にも日本に3頭しかいないジュゴンがいる。北限なのである。このような大切な環境を破壊して戦争のための基地を造る愚かさを許してはならない。




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過酷きわまる労働者の実態 多数を取ってこそ…

上田月子(弁護士・川越法律事務所)

 最近また派遣労働者が増えていると聞く。企業にとっては、安く使えて、クビを切りやすい、非常に便利な存在だからだろう。2015年9月30日から施行されている「改正」労働者派遣法により、ますます派遣労働者は企業にとって魅力的な存在となった。 「改正」前は、ある業務に最高3年派遣労働者を使ったら、その業務にはもう派遣労働者を使えないので、まだ使いたかったら直接雇用しなければならなかった。一定期間その業務に誰かを従事させていたならもはや臨時的・一時的業務ではないということである。だから、常用代替防止の原則から、臨時的・一時的業務に限られている派遣労働者をそれ以上使うことは許されなかった。

 ところが、今は違う。過半数労働組合等から意見聴取しさえすれば、3年経っても、所属組織(「課」など)を変えれば、そのままその派遣労働者を使い続けられる。さらに、同じ所属組織においても、別の派遣労働者に変えれば、3年経っても派遣労働者を引き続き使うことを禁じられない。これでは派遣労働者はいつまで経っても正社員になれない。

 雇用の基本は正社員であったばずなのに、いつの間にか正社員が高嶺の花である世の中になってしまった。現政権が目指す「世界一企業が活躍しやすい社会」は労働者にとっては過酷な社会だ。「改正」派遣法は悪法に違いないが、その成立過程を見てきて、多数を取らなければ悪法であっても成立を阻止できないことを実感した。




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コ一ヒーブレイク

《民話の灯》

原 緑

 昔々、あるところに… 小さいころに誰もが聞いた昔ばなしは、心地良いものでした。あの「まんが日本音ばなし」の市原悦子さんの個性的な語りを覚えている方も多いのではないでしょうか。もう、ずいぶんと前になりますが、一大ブームを起こしました。

 テレビや漫画は別として、「民話」はいくつもの出版社から本当に良い絵本となって、実にたくさん出版されました。私は子育ての時期に、子どもと一緒にその民話の絵本に見入ったものです。

 民話といえば聞き取り・再話・出版といった大きな仕事をされた松谷みよ子さんが思い浮かびますし、児童文学の分野で活躍した斎藤隆介さんの一連の民話風ものがたりや、木下順二さんの日本を代表するオペラとなった「夕鶴」なども思い浮かびます。

 その作家たちも、次々と亡くなってしまいました。昨年の2月に松谷みよ子さんの訃報で気づけば、この分野で後に続いて活躍している作家も作品もありませんでした。

 ところで、その“どん尻に控えて”いた創作民話界の巨匠、あるいは重鎮といわれ、「無睾の民衆を前提とする創作民話と対峙して、誤りも犯せば条理にも反する等身大の」エネルギッシュな民衆像を描いていた作家、さねとう・あきらさんをご存知でしょうか。

 氏は所沢市にお住まいて教育委員をされましたが、その後狭山市に転居されました。私は公私共に大変お世話になりました。今年預いた年賀状には「昨年、松谷みよ子先生を失ってから、創作民話界もずいぶん寂しくなりました。結果として私がアンカーマンとなってしまいましたが、現場に戻りましたら、創作民話の充実に力を尽くし、その職責を全うしたいと考えております」とありました。そのアノカーマン、さねとうさんは昨年来体調を崩し、この3月に亡くなられました。

 対「神話」という視点で「民の話」を書いた作家たちの、仕事の灯を消してしまってはならないのです




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無責任な「戦前」に立ち枯れを1

鈴木 彰(イ一ラストレーター・調布市在住)

 「平和安全保障法制」の名で国民を欺き、70年間の非戦の「戦後」を「戦前」に切り替えてしまう法律が施行されました。これが憲法九条に違反して、日本を戦争できる国に変える「戦争法」であることは、安倍首相自身が「違反するなら憲法を変える」と言っていることからも明らかです。太平洋戦争の「戦前」ぎりぎりに生まれ、「戦中」に父の戦死に遭遇し、恩讐を乗り超える不断の努力抜きには成り立たない青春と人生を生きてきた私は、2度目の「戦前」に生涯を全否定される思いです。

 安倍首相は一昨年末の総選挙で「勝った」と言いますが、あの時、与党が議席の68・5%(内自民党は61・1%)と200億円もの政党助成金を手にしたのは、国民が支持したからではなく、小選挙区制で票と税金を多数を掠め取ったからです。与党の得票は2497万(同1766万)、得票率は46・8%(同33・1%)に過きず、全有権者比では25%にも届いていません。

 憲法違反の「戦前」に対して日本国憲法は無傷です。そしていま、「アベ政治を許さない」のポスターが巷に踊り、「戦争法の廃止を求める2000万人統一署名」が自民党の得票数を凌ぐ民意を「アベ政治」に突き付けています。来るべき参院選と総選挙を視野に「戦争法廃止」「憲法を守れ」の願いをかざして、200O万署名と「野党共闘」を広げにひろげれば、違法な「戦前」を「アベ政治」ぐるみ撤去することは可能です。




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熊本地震の現実の「恐怖」と北朝鮮の幻想の「脅威」

梅田正己(書籍編集者)

 今回の熊本地震が与えた最大のメッセージは、日本の「安全保障」にとって最も切実で差し迫った課題は、自然災害にいかに備えるかということだ。

 何しろこの列島には、東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが迫り、地下には2000本以上の活断層が走っている。全国どの地域であっても、いつ驚天動地の災害に襲われるかわからない。これ以上の「脅威」があるだろうか。


 ところがこの国で語られる「脅威」は外国からの侵略の「脅威」ばかりだ。

 昨年は強行に強行を重ねて、11もの法律を束ねた安全保障開運法を成立させ、この3月末からそれが施行され始めた。

 この安保法を通すのに最大の理由とされたのが、北朝鮮の「脅威」だった。

 では、北朝鮮はどんな利益を求めて日本に攻めてくるのだろうか? 日本にはさしたる資源はない。人間だけはふんだんに存在する。それを北朝鮮が70年前の米国めように占領して統治することができるはずがない。北朝鮮が日本を攻撃する理由はどこにもない。

 それでも、いや、あの若い独裁者は何をしでかすかわからない異常者だ、どんな気まぐれで日本にミサイルを撃ってくるかわからない、と言う人があるかも知れない。

 しかし彼の言動からそれは否定される。彼は親族や側近を含め数多くの要人を粛清してきた。なぜか。自己の独裁を脅かす危険を事前に除去するためだ。

 また彼は各所に出かけて、指示・指導する姿を映させ、テレビで流す。自己の独裁者としてのイメージを固め広げるためだ。

 つまり彼にとって最重要なのは、独裁者としての自分なのだ。その独裁者は、もちろん「国家」がなければ存在しない。

 ところで、彼が日本へ、あるいは韓国ヘミサイル発射を命令する。その一発に対してはたちまち百発の返礼がとどく。軍事力の落差は周知の通りだ。北朝鮮という「国家」は消滅する。同時に独裁者も消滅する。

 そういう危険を、独裁者の地位にあれほど執着する彼が犯すはずはない。


 では、なんで北朝鮮はミサイル開発と核実験にあんなにこだわるのか? 日本や韓国を攻撃するためには、射程1500キロのノドンで十分だ。しかし北朝鮮はその後、テボドン(射程2000キロ)、ムスダン(同3000キロ)と開発を進めてきている。なぜか? 目標がアメリカ大陸だからだ。

 66年前、北朝鮮は米韓軍と朝鮮全土を戦場にして戦った。63年前、休戦協定を結んで戦火はやんだが、潜在的な戦争状態は今も続いている。アメリカは韓国に陸空軍の基地を持ち、毎年、北朝鮮を仮想敵とする大規模な合同演習を行なっている。

 この潜在的戦争状態を打ち切るには、休戦協定を平和条約に切り替えなくてはならない。そのためにはアメリカと直接交渉をする必要がある。しかしアメリカは一貫してその北の要求を無視してきた。

 それで北朝鮮は必死でミサイル開発と核実験にとりくんでいるのだ。核弾頭を搭載したミサイルが一発でもワシントンに届くことになれば、アメリカ政府はいやでも北の要求に応じざるを得ないだろう、と。


 以上が、北朝鮮がミサイルと核開発に躍起になっている極めて簡明な理由だ。ところがメディアはそれを「国際的な脅威」にすりかえ、テレビは若い独裁者の姿をくり返し椰楡的に流して「異常な国」の「異常な独裁者」の「脅威」を視聴者の無意識に埋め込む。

 「北朝鮮の脅威」は幻想にすぎない。地震、火山の噴火、津波、台風、集中豪雨など自然災害こそが、この列島(日本国)の現実の脅威なのである。必要なのは、安保法などを作って自衛隊の海外派兵の準備を進めることではない。自衛隊を改編して、少なくとも半数を災害救助隊に専門化することである。熊本地震の恐怖がそう教えている。(4月20日記)




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『臨界幻想2011』上演に

大森喜久男(所沢演劇をみる会)

 首都圏12団体と、青年劇場の『臨界幻想2011』を上演する運びになった。

 福島第一原発の事故から既に5年が経過したが、この間我々は何をしてきただろうか。

 送られてきたチラシの小さい文字に目を凝らしていて驚いた。何と、この劇は30年も前に上演されていたというのだ。さらに驚くことは、原発事故の後、「再演のために見直してみたが変える必要がなかった。問題は何も変わっていないということだ。それがまた悔しい」と作者ふじたあさや氏は語る。作者の先見性・洞察力には脱帽するばかりだ。

 ……青年が死んだ。死因は心筋梗塞。26歳。

 未来産業と憧れ、原子力発電所に就職して7年目だった。周囲の人間はただの病死と納得し、失意の恋人も新しい人生を選び直そうとしていた。その折も折、残された母親のところへ、労働者被曝の調査に訪れた者があった。

 「息子さんの死は、原発と関係があるんじゃありませんか」……息子の死の真相を追い求める母によって、知られていなかった事実が次々と浮かび上がる。そして…

 是非ご覧いただきたい演劇です。但し券売りはしていませんが、「みる会」に入会することでご鑑賞できます。
◆5月23日(月)18時30分開演
◆会場:市民文化センター・ミューズ
◆間い合せ先04−2924−1099




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紹 介

●吾妻9条の会講演会「知っておきたいイマドキの改憲」

講 演:黒澤いつきさん(明日の自由を守る若手弁護士の会)
日 時:5月22日(日)13時〜16時(12時半開場)
会 場:吾妻公民館
参加費:300円
連絡先:090−2635−8840立川

●第15回よりよい教科書を子どもたちに 教科書学習会「『特別の教科道徳』って何だ?」第2弾!

日 時:5月27日(金)18:00〜20:30
会 場:新所沢公民館第5,6学習室(2F)
主 催:「教科書を考える所沢市民の会」代表 牧 柾名
間い合わせ:篠原 042−394−6652

●メーデー5月1日(航空公園野外ステージ、10時)

●5・3憲法集会

会場:有明防災公園(ゆりかもめ「有明駅」徒歩2分)イベント広場
時間:11:00 プレコンサート 12:00集会 13:00から
主催:5・3憲法集会実行委員会

●ドキュメンタリー映画『2015国民平和大行進一歩でも二歩でも』

57年前、西本敦さんが1人で始めた平和行進は、全都道府県に広がり、10万人以上が参加する国民的な運動となった。
 映画は、東京から広島までの約1000`を、91日間かけて歩く2015年の行進を追う。雨の日も風の日も、平和への思いを託されて歩く人、行進を支える人。戦後70年、安倍政権が「戦争法」を強行した年につくられた意味は大きい。
 所沢では7月3日、午後16時30分に市役所から行進が行われる。

●米寿記念 彫金芸術の金字塔 岡部 昭 回顧展

日時:6月14日(火)〜20日まで、午前10時〜午後6時、初日1時から最終日は4時まで。
会場:セシオン杉並、地下鉄丸の内線東高円寺駅下車
入場:無料

●第30回 憲法フェスナバル

日時:5月28日(土)
会場:銀座ブロッサムのホール




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事務局から

 ウグイスがさえずり、あたたかい日が続くようになりました。
▼原発はただちに停止せよ
 死者50名、避難者10万名、住宅損壊や道路の寸断など甚大な被害が広がる九州・熊本の大地震。新幹線、在来線、高速道路などがストップするなか「異常なし」と運転をつづける川内原発。「異常」が出てからでは遅い。人命救助、安全を最優先に原発は直ちに停止すべきです。
▼統一候補擁立すすむ
 参議院選挙まであと3ヵ月。「戦争法廃止」「安倍政権打倒」などで合意し、1人区での統一候補は18選挙区に。青森、宮城、山形、栃木、群馬、長野、山梨、福井、石川、滋賀、岡山、鳥取・島根、山口、高知・徳島、熊本、長崎、宮崎、沖縄。
▼2000万署名
 4月9日、新所沢駅の「9の日」行動では、36筆の署名が集まり、会全体では1345筆を超えました。9条連絡会が作製したチラシと署名用紙をセツトにして配布した数は2万部超。5月3日、有明防災公園で行われる憲法集会で、全国で取り組まれた署名数が発表されます。ご注目を。6月5日には「戦争法廃止!安倍内閣退陣!」の大規模な国会前行動が取り組まれます。
▼5月2日「クローズアップ現代」に注目
 所沢「吾妻九条の会」が取り組む2000万署名の様子が放送されます。
▼総会は7月に
 例年6月開催の「総会」は、今年は参議院選挙後の7月に行います。現在、講演者を検討中です。




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