機関紙123号 (2016年8月6日発行)
桂 敬一(元東大教授・メディア研究家)
「後出しジャンケン」と他候補陣営から非難・嘲笑が浴びせられたが、鳥越後太郎さんが市民連合と野党共闘4党(民進・共産・社民・生活)に推され、都知事候補として出馬するとの報せを聞いたときは、正直、大きな安堵感を覚えた。鳥越さんは「党」に所属していられるような人ではない。元来がジャーナリストとして人格形成してきた人物だ。ペンやマイクを手に取り、正義を回復すべき問題が目前にあれば、それまでの行きがかりにはこだわらず、全精力を傾けてその追及や解決に努める人なのだ。市民連合・野党共闘の統一候補として、これほど相応しい人はいなかった。
そうした生き方、経歴が、大局に臨んでもすぐに正しい道筋を見抜き、ひるまずそこへと進む判断力と、立場を超えた多くの人々から愛される人柄とを、彼に備えさせた。その反面、雑然たる実務世界のなかでの、いろいろな専門知識を要する業務処理は、どうやら苦手らしい。だが、その弱点は、人々の多様な考え方を許容することによって補い得るものであり、そういう器となる資質を、この統一候補は十分に持ち合わせていた。
参院選で与党は、改憲発議の要件、3分の2の議席獲得を、自公だけでは達成できず、おおさか維新、その他の改憲派小党を糾合、辛うじて実現した。市民連合・野党共闘が、32ある1人区で11議席を獲得、前回の2議席を大きく超える成果を上げたことが注目される。これで野党の体制は強化され、安倍政権も、すぐ改憲発議には動けない。こうした状況のなかで力を強めた野党共闘が、安保法制と改憲に反対する鳥越知事を実現したら、その勝利は都政レベルに止まらず、参院選の善戦の意味をもっと拡大、国政次元でこの国の路線を転換する決め手となる可能性さえある。参院選・都知事選のあと、すぐに衆院解散・総選挙の情勢が浮上してくるに違いないからだ。
都知事選にこのような大きな意味を持たせることとなった一因として、先に立候補に名乗りを上げていた宇都宮健児弁護士が、鳥越一本化に協力してくださったことの意義も大きい。都知事選対策ではより大きな経験を積んでこられた宇都宮さんが出馬を辞退なさったことは、並大抵の決断ではない。心から敬意を表したい。
7月21日の朝刊を開いたら、鳥越候補に「女子大生淫行」疑惑、とのでかいキャッチ・コピーを打った『週刊文春』の発売広告を見つけ、驚いた人が多いのではないだろうか。私も、ここまでやるかと、呆れもし、腹が立った。その日から翌日にかけてネットの着信を見ていくうちに、このネタはライバル誌『週刊新潮』が捨てたものだ、文春が動くに当たっては自民党筋や、俗称「内調」=内閣情報調査室も動いていた、とする情報にお目にかかり、さもありなんと思った。鳥越陣営は裁判闘争の体制を整えた。
こんなご苦労なことを大がかりによくもやるもんだ、と思うのと同時に、安倍政権や右翼メディアがいかに鳥越都政の実現を恐れているかということも、思い知らされた感じだ。7月22日の読売・社説が「鳥越氏の演説では、野党の国会議員が安倍政権の批判に多くの時間を割き、本人も『憲法を大事にする』と呼応している。野党が都知事選をPRの場に利用している……」と非難していた。憲法を守る都政であってなにが悪いんだ。
憲法を守る都政は、首都圏の米軍基地の見直しも課題とする。それは名護・辺野古の米軍新基地建設や北部・高江のヘリパッド建設に反対する沖縄県民のたたかいと結びつく。脱原発は、福島の放射能汚染地区への帰還強制や全国各地の原発再稼働に反対する住民とのたたかいにも結びつく。やがて訪れる大震災を考えれば、被災者避難の協力を仰ぐ広範な地域・地方との連携協議も、すぐにも必要だ。巨大都市・東京は独りではあり得ない存在なのだ。日本全体のよりよき変化と結び合ってこそ、みずからもよく変わり得るのだ。
思い返したいのが、革新勢力に担がれ、1967年に美濃部都知事が登場したときのことだ。それまでは革新首長は蜷川京都府知事しかいなかった。美濃部知事のあと、黒田大阪府知事や長洲神奈川県知事も出現、革新首長は福祉、教育、公害対策などで顕著な業績を残した。飛島田横浜市長、屋良沖縄県知事の存在も見逃せない。自民一党独裁の五五年体制の下でも、革新地方自治が成り立ち得ることが証明されたのだった。
しかし、五五年体制は高度経済成長政策の行き詰まりに直面しつつあったが、改憲・再軍備を急ぐ風ではなかった。革新地方自治は地方住民の暮らしの改善に専念することができたのだ。これに対して、鳥越候補が目指した都政は、国民を再び戦争に巻き込むために憲法を改悪、国家への奉仕を国民に強制し、そうした「1億総活躍」こそ「美しい日本」のあり方だとする国家ナショナリズムに彩られた「アベ政治」と、否応なく対決するものとなっている。それは過去に例のない、まったく新しい都政の実現の追求だ。
この都知事選で鳥越都知事を実現できなかったが、より強化された市民連合と野党共闘が勝利することの意義は、計り知れないほど大きい。それは確実に、来る衆院選をたたかう、全国の反アベ政権陣営の拡大や連携に繋がっていく。それらの力をもってすれば、日米軍事同盟と財界・大企業に隷従するだけの自公政権の行き詰まりを打開する道へと、この国を前に進めることも不可能ではない。大新聞の選挙予測を見ると、「小池有力並ぶ増田追う鳥越」とか「鳥越危うし」といった見出しが目につく。現状にヌクヌク安住していたいメディアの願望の現れだ。私たちはこんな状況に安住したままではなにも得られない。
岩崎貞明(『放送レポート』編集長)
テレビ報道が萎縮している、としばしば指摘される。今回の参院選報道、とくに公示期間中の報道・情報番組には、ほとんど見るべきものがなかったという批判もある。実際、NHKを含む在京地上波テレビ6局の参院選関連の放送時間が、前回2013年よりも3割近く減った、と報道された(毎日新聞7月12日)。この聞、大きく扱われたのは舛添知事辞任に伴う東京都知事選挙をめぐる話題や、日本人7人が犠牲となったバングラデシュでのテロ事件関連のニュースだった。
今回、自民・公明の政権与党は、選挙後に予想される改憲論議や消費増税をめぐる議論、TPP批准問題などに一切言及しない選挙戦を展開しようと画策したようだ。そのためにもっとも簡単な手段はメディアヘの露出を極力抑えることだ。
自民党は、投票前の党首討論について、参院選の公示日を挟んだ6月19日から25日まで、と日程を区切って在京テレビ各局などにスケジュール調整を要請した。そして、その後の各政党からの申し入れ等にもかかわらず、これ以降の党首討論は事実上拒否した。
投開票日の7月10日夜の開票特番の出演交渉の際にも、自民党側からは「党首の出演時間を短くしたい」という意向が示されたという。この結果、ラジオについては一時、開票特番での安倍自民党総裁のインタビューはなし、ということになりかけた。テレビ・ラジオ側が改めて出演を申し入れた結果、ニッポン放送が代表取材する形で放送された。
このように、争点報道が十分とは言えない状況だったのに、選挙が終了したとたん「改憲勢力が3分の2に」という文言がメディアに氾濫したことに、戸惑いを覚えた視聴者も多かっただろう。理由として想像できるのは、今回の選挙で民進党のキャンペーンに「3分の2は取らせない」というものがあったことだ。争点報道の中で「3分の2」に言及すると民進党のキャンペーンに同調する形になることを、メディア側が恐れたのではなかったか。さらに言えば、民進党に有利な報道を行っている、と自民党側から批判されることを、メディア側が憂慮したからではなかったか。
テレビ側からしてみれば、政治関連の話題は最近ではあまり視聴率が取れない、という実態がある。「政治的公平」を最大限に意識して番組制作をしなければならないから、問題に深く切り込むような意欲的な企画ができないのだ。無理してリスクを取っても「数字」が上がらないのなら、数字の取れそうな別のネタを追ったほうがいい…報道番組の制作者がそういうマインドになったとしても無理からぬところだろう。しかし、そういったテレビ側の態度が、有権者の政治的無関心を増幅させているおそれはある。それが投票率の低下につながり、結果として与党に有利な選挙結果を生んできたのではないだろうか。
メディア関係者の「思い込み」による自粛もあると思う。テレビ各局は、選挙期間中は各政党や候補者に関する報道の時間を均等に配分するなど「公正な報道」に神経を尖らせているが、実は選挙期間中の報道の時間を政党や候補者で均等に配分しなければならない、という決まりは存在しない。公職選挙法第148条は「選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない」と明記している。同法にいう「選挙運動」として放送において厳しい規制を受けるのは政見放送と経歴放送だけで、報道番組については「選挙の公正を害してはならない」と書かれているだけだ。
選挙報道はさまざまな立場から「不公平だ」としばしば批判にさらされるので、均等配分によって批判を避けるという態度が、報道機関の習い性となってきたのではないだろうか。放送関係者も、「選挙の公正」という法律の文言に気を取られ、いつのまにか政見放送と報道番組を混同し、時間配分に過剰なまでの神経を使うようになった、と言えるだろう。
表現の自由は、勝ち取らなければ広がらない。「無意識」の自己規制も含めて、選挙におけるテレビ報道の自己検証を求めたい。7月30日、小手指公民館分館ホールで「マスコミ・文化九条の会所沢」の11周年記念講演と総会が開かれました(写真、左)。大野裕さんが司会進行を務め、中原道夫代表委員の開会のあいさつの後「参議院選挙結果と私たちの課題」と題して九条の会事務局・渡辺治さんの記念講演が行われました。会場には県内外から170名を超える人たちが来場し関心の高さがうかがえました。
講演後に開かれた総会には約40名の会員が参加し、大野さんの司会で議事がすすめられました。冒頭、佐藤俊廣事務局長が「これからの活動について」報告し、参院選の結果、改憲勢力が3分の2を超えた情勢下で9条を守る運動が今後ますます重要になってくると強調されました。
全国でとりくまれた「戦争法の廃止を求める2000万署名」を本会では2094筆を集め目標を超過達成し、また所沢9条連絡会が共同して作成した5万枚のチラシ配布は所沢市の全15万世帯の3分の1に匹敵すると報告されました。
同時に、北朝鮮や中国脅威論からくる平和への不安から、市民の間には安保関連法やむなしとの考えも根強いことは無視できず、これからの9条を守る活動のあり方が問われていると提起されました。
活動の重点的課題としては、@世話人会の活性化、A「会報」の充実と読者拡大、B「9の日行動」への参加拡大、C読み応えあるチラシの工夫、Dプロジェクト「学ぶ」「基地」「文化」の活発化、E憲法カフェの充実、F9条連絡会や守ろう憲法・オール所沢などとの連携強化などがあげられました。
当面の企画として、@8月26日「清瀬ひまわりフェスタと米軍大和田通信所ウォッチング」(所沢平和委員会共催)、A9月3日「憲法カフェ」の「日本会議」についてジャーナリスト竹腰将弘さんの話を聞くなどが予定されています。
会場からは、葛西建治さんが入間自衛隊病院建設や防大の一類感染症研究などの動向から自衛隊の監視活動を強化していく必要があること、鈴木和翁さんが米軍通信基地内での受信アンテナの新工事や横断道路敷設が近隣住民の要望に沿うように要求を強める必要があるとの発言がありました。
佐藤事務局長による会計報告と、白戸由郎さんの会計監査報告が参加者全員の拍手で承認された後、閉会のあいさつをおこなった草鹿光世代表委員は、歴史の曲がり角に立っている今、憲法を生かし守ることは一人ひとりの意識的な日常活動にかかっていると訴え11周年総会は無事終了しました。(山本)
皆さんこんにちは。「マスコミ・文化九条の会所沢」。「マスコミ・文化九条の会」とか分野別の「九条の会」で所沢という地名が付いているというのはすごく珍しいと思うんです。全国でも「九条の会」はたくさんありますが、多くは地域の「九条の会」なんですね。何千という九条の会は地域の「九条の会」なんですが、あと「マスコミ・文化九条の会」とか「宗教者の九条の会」とか、これが4割弱あります。「医療生協の九条の会」とかありますけれども、地域に根ざした「九条の会」、分野別でもないんですけれども、どこでも共通して「九条の会」は地域に根ざした「九条の会」というのが元気がいいというか、活躍しています。
今日はそういう「マスコミ・文化九条の会所沢」というところで講演をさせていただきますので、是非とも皆さんに憲法の今の状況をお話したいと思います。
皆さんのお手元に資料が色刷りであるので、ご覧いただきながらお話を聞いていただきたいのです。
今日は、憲法のことというよりは、まだ皆さんの記憶に新しい、この間の参議院選挙、これが私たちの憲法や、私たちの目指す憲法の生きる日本というものにとって、どんな意味があるのかということを選挙の結果を振り返りながらお話をさせていただきたいと思います。
「参議員選挙結果と私たちの課題」ということでお話をさせていただきたいんですが、今度の参議院選挙は7月10日にありました。まだ記憶に新しいと思いますけれども、この選挙の結果というのはマスコミによりますと、ものすごく評価が分かれているんですね。読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞、大手のマスコミは、みんな、今回の選挙の結果の最初の見出しは「改憲勢力3分の2獲得」。そしてこっちの見出しでは「安倍政権、安倍自公与党改選過半数を獲得」という見出しが躍りました。全体としては安倍政権が信任をされ、安倍自公が前進をしたと、こういうふうに書かれています。他方、政党の機関紙ですけれども、赤旗を見ますと、今回1人区の共闘で大きく前進と書いてあるんですね。これは大手のマスコミの評価と、そういう政党の機関紙の評価が珍しく選挙の結果をめぐって大きく食い違っている。片方は安倍自民党が前進したと、公明党も議席を拡大したと。一方では今度の選挙では野党共闘が大きく前進したんだという、こういう二つの顔があって、じゃあ、どっちが正しいのかというと、私は結論から言うと、これは両方正しいと。足して2で割るような話ですけれども、両方の側面があります。今回の参議院選挙は非常に珍しく2つの顔を持っているというのが大きな特徴です。どうしてそうなったのか。
これは決して自然になったことではなくて、私たちの運動とか、「九条の会」の様々な運動が、こういう結果を作り出したと思うんです。そのことを中心にお話をして、その中から私たちはどんな力をくみ取って、改憲を阻むための私たちのこれからの運動を作っていくのかということにも触れたいと思います。今回の参議院選挙というのは一体何だったのかということをまず、お話したいと思います。
今回の参議院選挙の一番大きな特徴は、安倍政権の3年半の悪政にもかかわらず、安倍は倒れなかった。安倍の自公与党は、大きく国民の批判でもって、ちょうど第一次安倍政権が2007年の参議院選挙でめためたに負けて、安倍さんがお腹が痛くなってしまったという状況を作ることはできなかった。むしろ改憲勢力が3分の2を獲得して、大きく改憲の危険性が改めて浮き彫りになった、そういう選挙だったという側面があります。その側面からまずお話をして、次に、そうではない参議院選挙について、やっぱり共闘、市民と野党の共闘ができて、この参議院選挙における安倍政権の大勝を阻んだ、そういうもう一つの顔を振り返ってみたいと思います。
最初の顔、安倍政権が大きく目標数を獲得して、改憲勢力3分の2を達成したということから検討してみたいと思います。実は、安倍さんは、今度の参議院選挙に3つの狙いを持っていました。本当は同日選挙をやりたかったんでしょうけれどもできませんでした。一つは何かというと、あの戦争法、私たちが大きく反対をした、去年5月に国会に出てきて、9月の19日に強行採決されたあの戦争法、あれを発動できる態勢を作りたい。だって強行採決、去年されちゃったんじゃないの。確かにされたんです。そして安倍政権はそれを目論んでかなり早くから準備をして、閣議決定を行って解釈を変え、戦争法を出して、満を持してこれの成立に臨みました。
ところが、安倍政権にとってみると、大きな誤算が生じたんですね。それは何かというと、国会の周りで戦争法反対の人々が大きく立ちあがった。今までどうしても手を組むことができなかったような、例えば民進党と共産党、当時は民主党と共産党、それから社民党、こういうものが戦争法に反対する、立憲主義を取り戻すということで、一点で共闘を組んで大きな戦いを仕組んだ。これは、民主党ができたのは96年ですから、今から20年前なんですけれども、20年間一度もできたことがなかった。今の社民党の前身である社会党と共産党が、2つの政党ができてから60年間一度もできていなかった共闘ができて、戦争法廃止で、自衛隊を認める人も認めない人も、安保を認める人も認めない人も、自衛隊がアメリカの戦争に追随して、海外で戦争することだけは許さないという形で統一をした。
民主党の議員さんたちはみんな安保賛成、自衛隊賛成なんですね。共産党の議員さんたち、共産党を支持する人たちは、安保条約が日本の米軍基地を作って、戦争の根源だということで反対をしている。自衛隊もこれは憲法違反だということで反対をしている。この人たちが手を組みました。
マスコミや自公は野合だと言いましたけれども、決して野合ではなくて、その自衛隊に賛成する人も反対する人も、安保条約に賛成する人も反対する人も、自衛隊がアメリカの戦争に加担して、海外で戦争することは今まで一度もやったことはなかった、これをやらせようとするような戦争法には反対だということで立ち上がりました。
その結果、強行採決はされたんだけれども、戦争法を発動することはとうていできなかった。いまだに、安保法制ということで賛成ですか、反対ですかというと、反対の人が多いような状況が作られ、安倍政権始まって以来、支持と不支持が逆転するという状況が作られて、強行採決をしたんだけれども、到底戦争法を発動してアメリカが望んでいる南スーダンのPK0とか、アメリカのシリア空爆に対する後方支援とか、とてもできるような状況じゃない。これをできるようにするには、参議院選挙で勝って、安倍政権は、安保法制、これは国民の合意を得たよね、ということでやっと、秋の臨時国会から来年にかけて、待ち遠しいといいますか、アメリカがやいのやいのと言っている南スーダンヘPK0とか、アメリカの戦争に対する後方支援をやれる態勢を作りたい。そのためには参議院選挙では勝たなければいけない。これが第一番目の狙いです。(文責、編集部)(次号に続く)
鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)
声優さんたちでおなじみの青二プロダクションの関西出身の女優が結成した語りのユニットが「はんなりラヂオ」。「はんなり」とは主に関西地方で「ぱっと明るく、上品で華やかなさま。華なやかなさま。〈華なり〉の略」という。舞台には古びたラジオがおかれている。前説から、こてこての大阪弁が聞こえてくる。この感触が、大阪育ちの東京人にとってはしびれてしまう。柳沢三千代、竹田佳央理、新千恵子、陰山真寿美を中心に客演を揃える。
今回は6回目。「はんなり☆夏語り〜絆〜」をテーマに、浅田次郎原作「うらぼんえ」(脚色・演出=TARAK0、田辺聖子作「ぎっちょんちょん」(演出=永井寛孝)、藤沢周平原作「約束」(演出=阪脩)の3本立て。それぞれに趣の違う作品である。小説で描かれた言葉の世界を、声を通して立ち上げてくれる、なんともいえない魅力が満ちている。舞台にはマイクが数本立てられていて、登場人物がさまざまに交差していく。シンプルな舞台がいい。
「うらぼんえ」は夫に裏切られて孤立したちえ子(新千恵子)のもとに、おじいちゃん(竹内正男)が現れるという、優しい奇蹟の物語。「ぎっちょんちょん」は大阪弁が楽しい漫才師の話。花奴の大田淑子(テアトルエコー)が熱演。「約束」は江戸情緒が心地よい人情もの。幸助(榎木薗郁也)とお蝶(陰山真寿美)は5年たったらまた会おうと約束する。そして、5年の歳月のあとの再会とは……。阪脩の語りがいい、落ち着きの中に雰囲気を醸し出していた。
原田みき子(沖縄県本部町在住)
花を活けた。庭に咲くハイビスカスはピンク、赤、オレンジとその色はさまざまだ。すべての花を大壷いっぱいに活けた。嬉しいからではない。悔しくて情けなくて全身からふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれなくて、庭中の花を切って回った。
私たちは虫けらなのか。沖縄県民は人間ではないのか。参院選で「オール沖縄」が応援する伊波洋一さんが大勝した7月10日の翌朝、国は東村高江のオスプレイヘリパッド工事の再開に踏み切った。それはまさに選挙で示した「基地NO」の民意を圧殺する行為に映った。私は勝利の美酒を愉しみ、寝就いたばかりだった。「今、業者の車が資材を積んで集まっている」と早朝電話で起こされた。現場の高江までは車で80分かかる。駆けつけようにも体にアルコールが残っている。
国は大差で敗れた現職の沖縄担当大臣島尻安伊子氏の復讐をするかのように、暁の弾圧に出た。この日から業者の車が次つぎに資材を運び込んだ。7月22日午前6時、戒厳令かのように県道を封鎖して工事が強行された。高江はやんばるの貴重な動植物が生息し、人口は150人足らずだが小さな子どもが多い。ここに全国から500人の機動隊員が集結し、住民の前に立ちふさがった。前日は1600人の集会があり、200人の人が泊まり込んでいた。機動隊員は一人に対して5、6人で襲いかかる。彼らに囲まれたときの恐怖は表わしようがない。仲間と横一列に腕を組み座り込む市民を無理やりひきはがす。訓練で鍛えられた肘や膝で押さえつけられると絶命するかと思うほど痛い。この日は男性一人がろっ骨を折る大けがをし、計3名が救急搬送された。座り込むだけの非暴力の運動に対して、国はここまでやる。まさに国家テロだ。さらに同日、国は辺野古の工事再開を求めて和解を取り止め、沖縄県を提訴した。
日本という国は恐ろしい国になってしまった。参院選では3分の2の人が安倍政権を支持する結果に終わった。沖縄弾圧は3分の2を獲得した驕りのように感じられる。どんな暴挙に出ても国民の支持は変わらないとふんだのか。沖縄近現代史の新崎盛暉氏は「沖縄に対する敵意」と評される。ヒトラー誕生の時を思い起こさせる。彼も国民から選ばれた人物だった。日本はとんでもない崖っぷちに立っている。このまま安倍政権の暴走を許したら、沖縄の現実が日本の現実になる日が近い。対岸の火事ではない。
原 緑
フェイスブックに参加してくれれば、連絡が一発で終わるんだけれどな〜、と言われました。フェイスブックなど、生活には全く必要がないのですが、お手数をかけさせているのであれば申し訳ないからと、思い切って最先端の世界へ乗り込もうとしたのです。
ところが、本人確認のために携帯電話の番号が必要だというではありませんか。携帯電話を持っていない私としては、何とかそれをしないで次に進みたいのですが、どうしてもダメなのです。
ネットを見ると同じような問題で質問をしている人が結構いたのですが、これと言った解決策に行き当たりません。や〜めた、とパソコンを閉じました。完了しないで閉じると2〜3日もしたら形跡はなくなるものと思っていたのですが、翌日パソコンを立てると「アカウントの認証をして完了させてください」というフェイスブックからのメールがありました。しかも、完了していないはずなのに3人の人から「お友だちに…」というメールも入っていたのです。
驚きつつ、最後の砦!と、PCレスキューの「さすりや塾」塾長さんにSOS。さっそく拡張機能を使った解決策を教えていただきました。でも、不安なんですよね、とかくパソコンをあれこれと操作するのって。そこで若い人の応援を得て再度トライしてみたのですが…応援に来てくれた彼女いわく「この黒メガネのサイト、開けたくないです」。 結局、フェイスブックは使わないことにして、私一人のためにお手数をおかけ願うことにしました。今や携帯電話(今はそう言わない?)を持たない人は「文明」に受け入れられないということが分かりました。いわゆる“ガラパゴス”です。
このすったもんだの最中に野田知祐さんの本を読んでいたのですが、文明を後戻りするようなカヌーでの川下りの月日って、とても魅力的ですけれどねえ。
埼玉県には米軍基地が3カ所あります。私たちの住む所沢市の米軍通信基地のほか、朝霞、大和田(新座市など)に戦後71年たってもなお占領状態が続いています。
地図の太いラインが通信所境界ラインです。敷地面積は東京ドームの約25・5倍で、119・6f。この中に、私有地738,OO1u、市町村有地37,708uがあり、基地の敷地内に民家も存在します。
所沢の米軍通信基地が西武ドームの22倍ですから、ほぼ同じ敷地面積です。大和田通信所の歴史は古く、戦前は海軍の通信所。真珠湾攻撃の際、「われ攻撃に成功せり」の通信もここで受信しています。かつてはフェンスのない米軍基地と呼ばれましたが、近年、強化され立派なフェンスと送信の大型アンテナまで装備が強化されています。
案内される方は、有原誠治氏(アニメ監督)。ジョギングのかたわら大和田基地の変わりようを子細に調べています。見学する施設は米第5空軍374空輸航空回所属で、所沢基地と共に航空機との通信を担う横田基地の通信施設の一部です。
日 時:8月26日(金)午後1時に清瀬駅改札口に集合。「日本会議」の正体
講 師:竹腰将弘さん(ジャーナリスト)
日 時:9月3日(土)14:00〜
会 場:新所沢公民館学習室6号(新所沢駅西口歩5分)
問合せ:佐藤(04-2942-3159)
※どなたでも参加できます。
日 時:8月28日〜31日 9:00〜17:00(初日は13:00〜 最終日は16:00まで)
会 場:所沢市役所1階市民ギャラリー日本に住む私たちにとって、平和を考える特別な月「8月」がやってきました。
▼渡辺「講演会」に170名
7月30日の講演会・総会へのご参加ありがとうございました。レジュメ・資料をもとに熱弁をふるわれた渡辺治先生の講演に、「元気」をもらった方も多かったのではないでしょうか。先生も指摘されましたが、改憲派が衆参両院で3分の2を占める事態を迎え、「九条の会」にとっても、第2ラウンドの闘いが始まります。講演会には、所沢市内の「九条の会」、川越や日高、狭山など近隣地域からも多数参加されました。今後も連帯を強め、大きなうねりの運動を作っていきたいものです。
▼29回目を迎えた「平和のための戦争展」
28日から31日までの4日間、市役所一階市民ギャラリーで開催されます。28日には「すいとん」の試食会も。
▼「憲法カフェ」
4回目のテーマは「日本会議」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の中心メンバーとして、草の根から改憲連動を運める「日本会議」。その系譜、安倍政権との関係などを竹腰将弘さんに話していただきます。ご期待ください。
▼川越でアーサー・ビナードさんの講演会
9月11日、「九条の会」かわごえ連絡会の主催で、コンサートとビナードさんの講演会が開催されます。参加費999円。チケットの申し込みは佐藤(2942-3159)まで。