機関紙130号 (2017年3月28日発行)



もくじ

野党共闘と連合
 北村 肇(『週刊金曜日』発行人)
  “野合で何が悪い”とは言うが
  共産を含め野党連合で行くと宣言すべき

ヒトラーと共謀罪
 鑓田英三(駿河台大学名誉教授)
  「予防拘束」で15万人の共産党員が強制収容所に
  政治犯、普通犯の区別無く普通に暮らすドイツ人まで
  法案認めるとナチス同様の「監視社会」迎える

河合栄治郎と治安維持法
 林 茂雄(名古屋外国語大学名誉教授)
  いつも家にいるお父さん 治安維持法違反で起訴
  「国体護持と社会主義封じ込め」と明記
  「一般人には関係ない」 それが危ない、廃案が良識

鈴木彰の「籠池や買わずにアベと共謀し」

太郎の部屋のほっとたいむ 51
 鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)
  藤田傳の実験的芝居の凄さ

【連載・沖縄通信】安倍政権の暴走を止めよう!
 原田みき子(沖縄県本部町在住)

「沖縄ヘイ卜」に反省の色なし? 『ニュース女子』その後
 岩崎貞明(『放送レポート』編集長)
  放送の自立が保てなければ表現の自由は崩れてしまう
 
コ一ヒーブレイク
 原 緑
  《三点支持》

ミケランジェロ「目覚める捕虜」
 山本達夫(会世話人)

オスプレイ横田配備、最長3年延期に

さよなら原発パレード

紹 介
  ●「吾妻九条の会」が講演会
  ●ドキュメンタリー映画沖縄「いのちの森 高江」上映会
  ●所沢平和委員会が平和運動のパーソナリティ畑田重夫さんを招き総会と講演
  ●谷英美(当会会員)さんが『顔』一沖縄戦を生き抜いた女の半生一を朗読します

事務局から
  ▼「共謀罪」反対の声を大きく
  ▼沖幅へのカンパ5万円
  ▼チラシをご覧ください
 




野党共闘と連合

北村 肇(『週刊金曜日』発行人)

 まずは、神津里季生「連合」会長の発言を紹介します。

 「~共産党とは、歴史的な経緯や国家観の違いなどがありますから、現時点においても相容れない存在です。ただ、『戦術』と『戦略』は違う。『戦術』では、いずれ解散総選挙がありますが、今の“安倍一強”政治の中で野党が力を合わせるのは当然で、今後、選挙で“自民党一強”を許さず、どうやって変えていくかが大事です」

 これは『週刊金曜日』(2月24日号)に掲載された、神津会長と中野晃一上智大学教授による対談の中での発言です。続いて中野氏から「選挙の戦術として協力するとなると、当然、自公側から“野合”批判が出てきますが」と聞かれ、神津会長はこう答えます。

 「極論すれば、私は“野合”で何が悪いかぐらいの思いです。たとえば国会でも、民進党の政策が他党と共有できるところは共闘すべきです。ただ、政権選択を有権者に求める選挙で、政権構想は一つのパッケージですから、民進党が政権をめざす以上、政策で何かを折り合うのは違うと思います」

“野合で何が悪い”とは言うが

 要は、あくまでも民進党政権をめざすものの、当面は自民党政権を倒す目的で野党共闘は進めるということです。でも、にわかには信じがたいというのが正直なところです。先の衆院補選(東京10区)における異様な事態が思い起こされます。池袋駅頭に民進党の鈴木庸介候補応援のため、野党各党の代表が終結しました。ところが、肝心の鈴木候補者がいなかったのです。何と、さほど離れていない場所で個人演説会をしていたのです。蓮舫代表の姿もなく、野党連合に前向きな安住淳代表代行がマイクを握りました。関係者の話では「連合の意向が働いた」とのことです。「“野合”で何が悪いか」という会長の言葉が空々しく聞こえます。

 民進党の原発政策について、上述の対談で神津会長は次のように述べます。「民進党の政策は……2030年代(に原発ゼロ)と言っています。いま工程表をつくっているので基本をぶらさずにアピールしてもらいたい」

 ウソだろうと突っ込みを入れたくなります。現実はどうだったか。蓮舫代表は、党大会(3月12日)に「2030年原発ゼロ」の表明をしたいと連合に持ちかけました。ところが賛同を得られず、結局断念に追い込まれました。『朝日新聞』は3月1日の朝刊でこう報じています。〈連合は、蓮舫氏の方針転換を歓迎。……おさまらないのは、蓮舫氏に期待を寄せてきた「脱原発派」だ。……党幹部の一人も「あぜんとしている。連合にそこまで気を使う必要があるのか」と憤る。

共産を含め野党連合で行くと宣言すべき

 蓮舫氏が「2030年原発ゼロ」にこだわった背景には、いうまでもなく新潟県知事選の結果があります。脱原発、反原発の民意が自公政権を蹴散らかしたにもかかわらず、連合の顔色をうかがう民進党はその波に乗り切れずに党勢拡大の絶好の機会を失いました。

 同知事選はまた、参院選で一定の成果が出た「市民を中心にした野党共闘」の力が継続していることを示しました。かりに民進党が脱原発姿勢を明確にすれば、今秋とも来秋ともうわさされる衆院解散・総選挙において、さらに強固な「市民を中心にした野党共闘」が成立する可能性がありました。まさに神津会長の言う「民進党の政策が他党と共有できるところは共闘すべき」が実践できたのです。はっきり言います。それを壊したのは連合です。

 民進党議員に聞くと、連合の集票能力は落ちる一方といいます。それでも、いざ選挙となると、ポスター貼り要員などで連合の力に頼らざるをえないとの声もよく聞きます。だったら、連合とは縁を切って「市民」との連携を強めたらいいのではないですか。まともな議員ならいくらでも心ある「市民」が手足になるでしょう。

 民進党が真に政権奪還を目指すなら、連合に対して「われわれは共産党も含めて野党連合でいく」と宣言すべきです。それにより連合が目覚めるなら、それはそれで望ましいことです。




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ヒトラーと共謀罪

鑓田英三(駿河台大学名誉教授)

 教育勅語を学是とする「安倍晋三小学校」設立に見られるような、「日本会議」を中心に政府・官僚を巻き込んだ戦前回帰の動きの中で、今回の「共謀罪」が出されてきた。「笛吹き男」アベが我々をどこに導こうとしているかを、ナチスの歴史が教えてくれる。

「予防拘束」で15万人の共産党員が強制収容所に

 国民の3分の1の支持で政権を握ったヒトラーは、まず強力な政敵の抹殺に取りかかった。「血に飢えた共産主義者が街頭で革命を先導している」と反共キャンペーンを煽り、共産党員を犯人にでっち上げた国会放火事件をきっかけに、(国家を危険にさらす共産主義者の暴力に対抗して防衛する)「ドイツ国民保護のための大統領令」を布告した。それにより表現の自由の制限、郵便の検閲、電話の盗聴、出版の禁止が行われ、悪名高い政治警察(ゲシュタポ)が「公共の安全に対する直接の危険」と判断する場合には集会等を非合法化し、犯罪行為がなくても「予防拘束」するのが可能になった。30万人の共産党員のほぼ半数が強制収容所などに拘留され、2万人が殺害された。それに続いて社会民主党員も逮捕され、さらには独裁政治を可能にする「授権法」に賛成したカトリックの中央党【公明党に近い】さえ非合法になったのである。

 これらの「時限立法」は、ヒトラーの権力基盤が安定した後も廃止されるどころか、「法とは、民族に奉仕するものである。民族に害を及ぼす者は非合法である」との立場から強化される一方であった。ヒトラーは、警察が戦うべき「敵」と「犯罪」の概念を拡大していく。政治的敵対者だけでなく犯罪常習者や物乞い、浮浪者、ジプシー、労働忌避者、娼婦、アルコール依存症、精神異常者などが「反社会分子」として、クリポ(刑事警察)に「予防逮捕」され強制収容所に送られた。誰が「反社会分子」かは、当局、の判断にかかっていたのである。武器を持つことを拒否した「エホバの証人」の信者もその中に加えられた。戦争が近づくにつれ、ヒトラーは銃後の安全を確保するため、国内外のいろいろな敵にますます過敏になり、とくに最大の「民族の敵」として、ユダヤ人への本格的な迫害が開始された。

政治犯、普通犯の区別無く普通に暮らすドイツ人まで

 1939年9月の開戦とともに、警察の取締りは、政治犯罪と普通犯罪との区別もなくなり激しさを増し、普通に暮らす一般のドイツ人まで、外国放送を聞いたり、配給をごまかしたりしただけでも、「忠誠宣言を破り、わがナチズムの勇敢なる防衛の心構えを鈍らせ、それによって敵を助けることになった」と拘束・処刑されるようになった。戦況が悪化するにつれ、そんな人たちで強制収容所は一杯になっていく。

 死刑論者のヒトラーは厳罰化を進め、戦争開始時から末期の間に死刑で罰せられる犯罪は3から46に増え、処刑数は60倍にもなった。ユダヤ人や、ポーランド・ソ連からの外国人労働者に加えて、郵便物のチョコレート一切れ食べた妊娠中の郵便局員、「総統はやめなければならない」と言った参事官、ハンドバッグの強盗、売春婦、男性同性愛者などが処刑された。

法案認めるとナチス同様の「監視社会」迎える

 以上みたように、ヒトラーは、取り締まりの対象である「民族の敵」を政治的敵対者ら「組織犯罪集団」からエホバの証人など「一般的集団」に、さらには個人にまで拡大したのである。個人を断罪する曖昧な「反社会分子」概念には、戦時下「普通のドイツ人」にまで含まれるようになった。このような取締りの拡大が可能になったのは、①拡大解釈を可能にする曖昧な規定、②「保護拘束」・「予防拘禁」の名のもとでの警察の「恣意的な権力行使」、③戦争遂行のために国民を犠牲にしようとするヒトラーの独裁政治の三条件が存在したからである。

 現在審議中の「共謀罪」も、①規定・目的が曖昧で拡大解釈される、②実際の犯罪行為がなくても処罰につながるという予備罪の拡大化とそれを判断する捜査機関の「恣意的な権力行使」を最大の狙いとしている、③安倍は国民の意向を無視して戦争への道を突き進もうとしていると、三条件を揃えている。今回の法案を認めたなら、我々はナチス同様の「監視社会」を迎えることになる。



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河合栄治郎と治安維持法

林 茂雄(名古屋外国語大学名誉教授)

いつも家にいるお父さん 治安維持法違反で起訴

 「君のお父さんいつも家に居るね」「うん。そうなんだ。書斎で朝から本を読んでいるよ」・・・1939年(昭和14年)小学校3年生の時だった。「いつも家に居るお父さん」は河合栄治郎・東大教授。次男の光君とは同級生だった。東京・大井町の河合家は庭が広く、腕白坊主たちには絶好の遊び場だった。教授は時には窓を開けて庭を走り回る私たちを眺めていた。

 「いつも家に居る教授」が右翼の攻撃を受けて「平賀粛学」で休職処分となり、治安維持法違反で起訴され、裁判中だったと知ったのは終戦後のことだった。英国社会思想史の泰斗で、「学生と先哲」「学生と倫理」などの「学生シリーズ」(全12巻)は当時の大学生や知識人必読の教養書とも言われた。左のマルクス主義と右の国家主義独裁を徹底的に批判し、二・二六事件が起こると軍部の横暴を痛烈に批判する論陣を張った戦闘的な自由主義者だった。法廷では『学問の自由』を掲げて立憲主義の立場で自らを弁護した。一審判決は無罪だったが、二審は逆転有罪、1943年に大審院(当時の最高裁)で有罪が確定。翌年2月に裁判での無理が禍して健康を害して、再び教壇に立つこともなく53歳で世を去った。1年半後には終戦となり、教授が予言した「自由の時代」が訪れたが自ら生活することはなかった。

 治安維持法は100年前の第一次世界大戦と関係がある。
 1917年に帝政ロシアにレーニンが主導する社会主義革命が起こり、2年半にわたる内戦となった。結果は革命軍の勝利となり、帝政ロシアは滅亡した。また初戦有利だったドイツ帝国も米国の参戦で英仏連合軍の勝利となり、ドイツ帝国も崩壊した。当時日露戦争で勝利の一因となった日英同盟が続いており、日本は連合軍に加わって中国内のドイツの植民地・青島(ちんたお)に出兵して占領した。欧州各国では、ロシア革命の影響で社会主義勢力が興隆、労働争議が頻発。

「国体護持と社会主義封じ込め」と明記

 1925年に日本はソ連邦を承認して外交関係が開かれると、労働組合運動を通じて社会主義勢力が出現した。政府が憂慮したのは帝政ロシアを消滅させたコミンテルン(国際共産主義運動)の浸透だった。

 1925年に勅令で公布された治安維持法は、その目的を「国体護持(天皇制維持)と社会主義(共産党勢力)の封じ込め」と明記している。同時に成人男子全員が参加する普通選挙制度(以前は納税額による有権者資格制限)を実施した。大正デモクラシー(政党内閣)に対する“アメとムチ”の政策だった。

 河合教授は1922年から25年までロンドンに留学、英国の政治を学んだ。成文憲法のない英国は名目上の国王の権限は強いが、実際の政治は内閣が行い、国王は内閣の決定を裁可するだけである。元老(枢密院)や軍部の政治介入は不可能だった。美濃部達吉教授の『天皇機関説』が実際に行われていた。

 1928年に初の普通選挙が実施されたが、無産政党(労農党などの社会主義政党)への投票が想定外に多かった。政府は社会主義4団体に解散命令を出し、関係者を検挙した。治安維持法は改正(改悪?)されて、最高刑に死刑を伴う法律になった。同時に全国の警察署に個人の思想を取り締まる特別高等警察(特高)が設置された。

 世情は世界大恐慌や米騒動で騒然となる中で京大の滝川事件.や司法官赤化事件などの思想弾圧が続いた。詳細は省くが、治安維持法は騒乱を起こす可能性がある結社・組織から反体制の思想を持つ個人へと取り締まりの矛先が変わった。この間、特高の愚劣な思想弾圧は続いた。作家・小林多喜二の拷問による獄死など無法な悲劇の他に、日独伊三国同盟を反映してベートーベンの音楽は良いが、(ロシア人の)チャイコフスキーは不許可など理解に苦しむ裁定もあった。

 終戦後の米軍占領期になって、GHQが最初に行ったことは治安維持法の無効裁定だった。釈放された日本共産党の徳田球一、志賀義雄ら政治犯の数の多さに国民は改めて驚愕した。

「一般人には関係ない」 それが危ない、廃案が良識

 さて、過去3度廃案になった「共謀罪」法案の国会提出である。「テロ準備罪」と名前は変わったが中身は大差ない。法律の専門家ではないので賛否の表明は控えるが、「現行法で十分警備できる」との専門家の意見も多い。成立後に目的の対象が変わってしまう可能性もある。安全だからと東京に招致したオリンピックではないか。今になって「同法がないと警備が出来ない」とは!秘密保護法、共謀罪法と怪しげな法案の提出が続く。「一般人には関係がない法律」と言うが、過去の歴史はその言葉に何度煮え湯を飲まされたか。「法律は少ない方が良い」と先哲も言う。四度(よたび)廃案にするのが良識だと思う。(元東京新聞ワシントン総局長)




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鈴木彰の「籠池や買わずにアベと共謀し」




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太郎の部屋のほっとたいむ 51

藤田傳の実験的芝居の凄さ

鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)

 劇作・演出家で劇団1980を主宰していた藤田傳(2014年3月、81歳で逝去)によって1990年に初演された「口寄せ六ヶ所からくり算用」の再演を見た。率直にいって、よくぞ書き上げてくれたものだ、と感嘆した。というのは、現在の六ヶ所村には原子燃料再処理工場やむつ小川原国家石油備蓄基地などが集中しているが、そもそもの始まりを舞台で告発していたのだ。今回の演出は翁長諭。狭い空間を有効に使い、セットも簡潔ながらおしら様(布で作った無数の小人形)が雰囲気を醸し出していた。

 盲目の男巫女・羽根澤積雲(柴田義之)が殺人事件の真相を再現する形で進行する。霊媒師の「口寄せ」で過去の世界が甦ってくる仕組みである。鶴久保家の三人兄弟・健太・竜太・彦太のうち、首をくくって死んだ彦太が、竜太を殺していたというのだ。竜太の嫁・吉(上野裕子)と彦太の嫁・兆(光本麻美)が積雲にすがる。そこから見えてくるのは、大阪からきた男が持ってきた札束である。谷や湿地帯でも買い取るというのだ。村人たちはそれぞれの思惑、欲得に駆られていく、そんな中で兄弟の悲劇が起きたのであった。

 客演の永江智明、佐藤正行、三浦伸子も実力を発揮。国策によって翻弄された庶民の哀しさ、風刺の効いた実験的芝居の凄さを感じた。念仏や土俗的な音楽、方言の台詞も印象的だ。

=下高井戸・HTSスタジオ、3月21日所見=




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【連載・沖縄通信】安倍政権の暴走を止めよう!

原田みき子(沖縄県本部町在住)

 辺野古の現場では、今日も朝から機動隊による強制排除が繰り返されている。市民は横一列に両手を組んで座り込むだけだが、機動隊員たちは数人がかりで市民を引き抜く。引き抜かれた後、両側から隊員に引っ張られて無理矢理走らされた友人は、股関節を痛め、杖を使わねば歩けなくなった。医療関係者でもある彼女は走らされながら「止めてください。身体が壊れます。痛い!痛い!」と叫んだと言う。しかし隊員は、まったく聞く耳を持たなかった。他にも肋骨を折られたり、手足にケガを負う被害が続出し、これまで救急搬送された人は、海上行動と合わせ50人ぐらいに上るだろう。

 機動隊員は、「暴徒を鎮圧して来い」と命令されているようで、私たちは懇懇と沖縄の歴史や基地建設の愚かさを語ってきたが、彼らの表情は固く心を閉ざしたままだ。中には大阪府警の機動隊員が土人発言をしたように、あからさまな侮辱的態度をとる者もいる。安倍首相は21日、共謀罪を閣議決定した。新基地建設に反対する市民を片っばしから検挙する意図がありありだ。すでにこれまで微罪で逮捕された仲間たちは「共謀しただろう」と厳しく追及されている。沖縄では事実上、共謀罪の適用が始まっていると言っても過言ではない。

 3月13日、異常な長期勾留が続く山城博治さんに、やっと妻多喜子さんとの面会が許された。約5ヵ月もの間、弁護士以外接見は許されず、10回以上求めてやっと実現した。20分の接見を終えて彼女は次のように語った。「接見した夫は思っていたよりずっと穏やかな顔をしていた。真っ先に親戚や友人への気遣いと差し入れをしてくれる人へのお礼を語っていた。しかし、なぜ接見が初公判前なのか、なぜ私だけなのか。なぜ、微罪でこんなにも長く勾留されるのか。おかしなことが多くて、接見と言っても手放しでは喜べない。裁判所は接見禁止を全面的に解除してほしい。勾留されているのは夫だけではない。2人を早く保釈して正義と良心を見せてほしい」(沖縄タイムス紙)多喜子さんの言葉には夫婦の人間性が滲み出ている。平和運動のリーダーとして信頼を集める所以である。沖縄は70年以上も過酷な状況が続いているが、山城博治夫婦のような人物が現われるかぎり、平和を求める運動の火は消えない。3月25日に辺野古で3000人規模の集会が予定されている。安倍政権の暴走を止める意味でも、県内外からたくさんの方に参加していただきたい。(沖縄県本部町在住)
【山城博治さんは、18日午後8時、那覇拘置支所から保釈されました】




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「沖縄ヘイ卜」に反省の色なし? 『ニュース女子』その後

岩崎貞明(『放送レポート』編集長)

 東京メトロポリタンテレビジョン(MX)の番組『ニュース女子』がさらに波紋を広げている。化粧品メーカーのDHCが関連会社に制作させて「持ち込み番組」として放送されたこの番組は、沖縄の米軍新基地建設に反対している人々を一方的に貶め、根拠のない情報をまき散らす「ヘイト番組」と言わざるを得ないようなものだった。こんな番組を地上波で放送したことに対して、MXの本社前では毎週、市民による抗議活動が続けられている。BP0(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会も審議に入った。

 MXは、放送後2ヵ月近くにわたって会社としての見解を明らかにしてこなかったが、2月27日付で「当社の見解」を公表した。そこでは、〈①番組内で使用した映像・画像の出典根拠は明確でした。②番組内で伝えた事象は、番組スタッフによる取材、各新聞社等による記事等の合理的根拠に基づく説明であったと判断しております。③上記①及び②のとおり、事実関係において捏造、虚偽があったとは認められず、放送法及び放送基準に沿った制作内容であったと判断しております〉一一さらにく当社は、駐留米軍基地に反対の立場の方が多数おられる一方で、駐留米軍基地との共存を容認する立場の方も数多くおられることにも十分に配慮しつつ、取材を継続して参りたいと考えております〉と、番組には問題はなかったという“開き直り”の姿勢を示した。

 一方、有識者らによるMXの番組審議会は、この見解が出された翌日、以下の意見をMXに提出している。
1 視聴者などから指摘を受けた問題点について、指摘を真摯に受け止め、現地での追加取材を行い、可能な限り多角的な視点で十分な再取材をした番組を制作し、遅くとも2017年上半期中に放送するよう努めること。

2 持ち込み番組を合めた社内の考査体制について、更に検討を進めた体制を7月1日までに再構築するとともに、その一環として「持ち込み番組に対する考査ガイドライン」を制定し、周知のうえ、実効性を確保すること〉。

放送の自立が保てなければ表現の自由は崩れてしまう

 番組審議会は放送法で定められた制度ではあるが、放送局が委員を委嘱して、放送局の責任で運営されるもので、放送の自主・自律の範躊にあるものということができる。放送の自律が保たれなければ、放送における表現の自由はたちまち、もろくも崩れ去ってしまうだろう。

 MXが考えを改め、自浄能力を発揮して、視聴者の疑問に真摯に応える検証番組を制作・放送することを期待している。




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コ一ヒーブレイク

《三点支持》

 山に登る方はご存知の事と思いますが、三点支持という岩登りの基本技術があります。

 それは、手足の4点が岩をとらえた状態で、次の行動にはそのうちの1点だけを動かし、常に3つの点に手掛かりや足掛かりをしっかりと確保させて移動する、という方法です。動かさない3点を結んで出来る三角形の内側に重心を置くようにした態勢がもっとも安定する形、というわけです。

 最近、林の中からキツツキのドラミングの音が聞こえるようになりました。春ですね。繁殖期のサインだそうです。あわてて双眼鏡を目に当てたのですが、見つけることは出来ませんでした。幹に垂直にとまり、いそがしく嘴で幹をつつくキツツキ。この嘴を打ち付ける激しい動作や、垂直に登る動きを、手を使わない彼らが2本の足だけでどうして支えることが出来るのだろうと、長い間不思議に思っていました。確かに足の爪はガシっと幹を掴んでいるのでしょうが、実は尻尾が強力な3点目として態勢を確保していることを図鑑で知りました。

 先日、庭に下りたホホジロが土の上の何かを一生懸命についばんでいました。落ちていた草の種でしょうか。そのうち、体をうんとそらせて、じ一っと空を見上げているではないですか。この朝の空は特別に青く、透き通るような光が溢れていました。人間もほれぼれと見上げていたい空でしたが、ホホジロは何を思って見上げていたのでしょう。その時に気づいたのです。ホホジロは両方の翼の先端を土の上に突くようにして立っていたのです。反り返るためのバランスを、翼の先を使って取っているのです。転ばぬ先の杖を連想させる姿に、「へえ~、足と翼で4点確保!」と、感心するやらおかしいやら。

 うちには玄関、浴室、トイレに手摺が設置されています。転べば寝たきりと脅かされて不承不承「老人対策」を受け入れたのですが、今は使い慣れて無意識に三点支持で行動。事なきを得ています。

原 緑




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ミケランジェロ「目覚める捕虜」

山本達夫(会世話人)

 作家・沢木耕太郎がインドのデリーからロンドンまで、路線バスで行く旅をはじめたのは26歳の時だった。1年あまりを費やしたその旅は、『深夜特急』(全6冊・新潮文庫)に描かれている。

 その最終巻。ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂でミケランジェロの「ピエタ」像の前に立った沢木は、死せるイエスを抱きしめるマリアの美しさと、これがミケランジェロ25歳の時の作品であることに衝撃を受ける。「ピエタ」以降のミケランジェロを見たくなった沢木は、隣接するシスティーナ礼拝堂に直行し、壁際の長椅子に腰かけ祭壇の背後の壁に描かれた「最後の審判」と天井画の「天地創造」を見上げる。しかし、「ピエタ」にはその完壁さにおいて及ばない、と沢木は思う。

 フィレンツェのアカデミア美術館で、沢木はミケランジェロの「ダビデ」像より思いがけない作品に出会う。それは、未完のまま放棄された大理石の4つの塊だった。「目覚める捕虜」と名づけられた石の塊の前からしばらく動けなかった沢木は次のように書いている。

 「それはまるで男が大理石に囚われているようだった。男は苦しげに顔を歪ませ、体をよじっている。四肢を震わせ、大声を上げ、大理石の桎桔から今まさに抜け出さんとしている」。

 沢木の思いを実感したくて、以前、同じ石の塊の前に立ったことを思い出したのは、新しい時代の予感からかもしれない。




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オスプレイ横田配備、最長3年延期に

 問題のオスプレイが所沢市上空を飛行しているのが目撃されている。米国防総省は、米空軍の特殊作戦機CV22オスプレイの横田基地への配備を最長3年、延長すると発表した。理由は一切、説明していない。

 CV22の主要任務は、秘密に敵地侵入や要人の暗殺・拉致などを行う特殊作戦部隊の輸送。過酷な訓練を行うので高い事故率を記録している。

 オスプレイという航空機は、従来の航空機概念とは異なる「パワード・リフト」である。米軍は、これまでジェット推進の「パワード・リフト」(AV一8ハリアー・F35B)が運用されてきた。オスプレイはプロペラ推進の「ハワード・リフト」機で「ティルトローター」と呼ばれる。どちらも国際的には航空法には規定されず、いわば「軍用機だから適用除外」という特例措置で飛行が認められているだけだ。航空機は開発した自国内を飛行する場合は規制がないが、他国、国際的に飛行する場合は、FAA(アメリカ連邦航空局)やEASA(欧州航空安全庁)が航空法に基づく型式証明をだしたものしか飛行することはできない。「パワード・リフト」機に固定翼機や回転翼機の安全基準を当てはめること自体、無理がある。無理を重ねて飛行しているから、墜落をするのだ。(葛西)




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さよなら原発パレード

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から6年。所沢市では11日、地域から原発ゼロの声をあげようと「さよなら原発大パレード」が所沢駅西口から中央公民館に向けて行われた。「原発ゼロ」への思いを書いたプラカードを持って出発。「再稼働反対」と声をあげアピールした。

 この後、原発事故の避難者から体験を聞くつどいが開かれ、福島県いわき市から子ども2人と自主避難し、県内で暮らす河井加緒理さんが思いを語った。河井さんは、避難生活の中で自身や子どもたちが体調を崩したことや、自主避難者に対する偏見などに苦しんできた体験を語り、「国や東電は謝罪と反省の気持ちがあるなら原発再稼働も推進もできないはず。もう誰にもこんな思いはさせたくない」と訴えた。




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紹 介

●「吾妻九条の会」が講演会

 日 時:5月20日(土)13時30分から
 会 場:小手指公民館分館音楽ホール
 講 演:「大事を伝えないメディアに、どう向き合うか」醍醐聡東大名誉教授 入場無料、誰でも参加できます
 主 催:「吾妻九条の会」
 共 催:「マスコミ・文化九条の会所沢」
 詳しくは、同封のチラシをお読み下さい

●ドキュメンタリー映画沖縄「いのちの森 高江」上映会

 (監督 謝名元慶福 語り 佐々木愛)
 4月15日(土)、新所沢コミュニティセンター(新所沢駅徒歩7分公民館先)
 1回目 10:30~
 2回目 13:30~
 会費500円
 連絡先 所沢労音 04-2968-5239

●●所沢平和委員会が平和運動のパーソナリティ畑田重夫さんを招き総会と講演

 4月29日(休日)、13時30分から
 コーププラザ所沢・2F
 資料代 300円
 連絡先 2924-0835石田

●谷英美(当会会員)さんが『顔』一沖縄戦を生き抜いた女の半生一を朗読します

 5月27日(土)14:00~15:30
 東松山・丸木美術館
 前売り券2000円、当日2300円
 問合せ アローン・シアター 090-6147-4160 佐藤




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事務局から

 各地からさくら開花の便りが届くようになりました。

▼「共謀罪」反対の声を大きく
 これまで3回、国民の反対にあい廃案に追い込まれた「共謀罪」法案が「テロ等準備罪」を盛り込み、国会に提出されました。閣議決定した21日の世話人会では、この重大事態にどう立ち向かうか長時間議論しました。そして5月14日「憲法カフェ」で取り上げるほか、市民へ訴える駅頭宣伝を「所沢9条連絡会」に提案し、共同して取り組むことを決めました。5割が「賛成」していた1月の世論調査でしたが、直近では反対が賛成を上回りました。秘密保護法、安保法制、共謀罪・・、これは「戦争する国」への道です。多くの市民に訴え反対の声を大きくしていきましょう。

▼沖幅へのカンパ5万円
 高江・辺野古の新基地建設に反対してたたかう沖縄ヘカンパを、の訴えに、35名の方から5万円のカンパが寄せられました。ありがとうございました。新基地建設反対名護共同センターに送りました。

▼チラシをご覧ください
 吾妻九条の会と共催で、醍醐聡さんの講演「大事を伝えないメディアにどう向き合うのか?」を5月20日に行ないます。また、会結成一周年集会で、沖縄の集団自決を描いた「ウンジュよ!」を朗読した谷英美さんが、『顔』一沖縄戦を生き抜いた女の半生一の朗読会を丸木美術館で行います。それぞれ同封のチラシをご覧ください。




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