機関紙132号 (2017年5月31日発行)



もくじ

憲法70年、未来につなごう
 もはや、戦後ではなく
   早乙女勝元(作家・足立区在住)

僕が小学4年生の時、日本海軍が上海の海岸に敵前上陸した
 岡部 昭(彫金家・山口在住)

共謀罪とはなにか
 浜林正夫(一橋大学名誉教授・御幸町在住)

鈴木彰の「ウキウキと北の脅威を煽りたて」

太郎の部屋のほっとたいむ 52
 鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)
  民芸「送り火」、淡い墨絵の世界

【連載・沖縄通信】現状を直視し立ち上がろう!
 原田みき子(沖縄県本部町在住)

「憲法記念日」に新聞は何をつたえたのか、つぶさに読んでみた
 【朝日新聞】
 【毎日新聞】
 【東京新聞】
 【読売新聞】
 【産経新聞】
 【日経新聞】

いま思うこと
 安藤彰義(こぶし町在住)

コ一ヒーブレイク
 原 緑
  《観桜の宴》

新作映画「校庭に東風吹いて」
 映画のお話
 桂 壮三郎(映画プロデューサー)

北朝鮮のミサイルが米国に届くのはいつか
 芦田 茂(作家・椿峰在住)
  探知不能な潜水艦発射
  断定する決め手を欠く
  容認できない一線の恐れ

「日本国憲法施行70周年にあたって」
 九条の会

舞台を通して、沖縄戦を伝えたい
 谷 英美(女優)

共謀罪、やっぱり「不要」で「危険」
 18日、自公維で強行採決 第8回憲法カフェ

醍醐聰さんが所沢で講演

事務局から
  ▼安倍首相が9条改憲を表明
  ▼「共謀罪」反対の宣伝行動に25名参加
  ▼暉峻淑子さん講演の総会にご参加を
 




憲法70年、未来につなごう

もはや、戦後ではなく

早乙女勝元(作家・足立区在住)

 2003年3月20日はなんの日か。
 と聞かれても、とっさに答えられる人は、そうはいないだろう。アメリカ主導によるイラク戦争勃発日である。

 私がなぜこの日を記憶しているかといえば、その翌日の夕刻、新宿駅西口で「戦争やめよ」を、訴えたからである。一人で? まさかそんな勇気はない。平和を願う者たちのリレートークで、持ち時間は6〜7分といったところだった。

 でも、「STOPイラク攻撃」の大文字を付けた小型車の上で、マイクを手にすると、与えられた時間がやたらと長く感じられた。というのは、新宿駅に入る人、出てくる人など、人通りは多いものの、寒風の中に足をとめる人はまばらだったからだ。いささかの無力感、虚無感に襲われたが、しかし、ここであきらめてはならないと思った。

 無事に終えて、ワリカンの一杯会となったが、これがもしもあの戦時中だったならと、皆で話し合った。繁華街で反戦を訴えるなど、狂気のさたで、この不忠者、この非国民めと、群衆から袋だたきにされた上、特高警察に引き渡されるがオチだろう。一杯どころか、無事に帰宅できるとは思えない。

 今なら言える。言えるうちに、一声を惜しんではなるまいとの結論になり、再度、乾杯したのを思い出す。

 このところ内外の状況は、にわかにキナ臭くなってきた。総理は内心の自由を奪う「共謀罪」に続き、3年後に改憲のメツセージを出したし、メディアは権力べったりで、北朝鮮や中国の軍事的脅威を、これでもかこれでもかと誇大にたれ流している。自衛隊は海外にまで出動し、もはや戦後ではなく戦前ではないのか。「沈黙は大罪なるを知れよ君、今呼ばおば千載の悔」と詠んだ人がいるが、この一文が、私のささやかな警告になれば、と願っている。




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僕が小学4年生の時、日本海軍が上海の海岸に敵前上陸した

岡部 昭(彫金家・山口在住)

 軍艦の甲板に整列している水兵達が足にゲートルを巻き小銃をもって小さなボートに乗り移っている映像、何で水兵が小銃なの? 多分映画館で見たニュース映画か、水兵達はやがて上海の海岸に陣地を築き鉄砲を打ち出した鮮明な記憶。その頃か、学校では毎月1日生徒全員が講堂に集合、鈴木留三郎校長は『日本は神武天皇が即位してから2600年となり、この世界に類のない歴史を持った国に生まれたことを誇り……国体を守り命を捧げねばならない』と毎月聞かされる。2600年はすごい、でも死ぬのは怖いからやだと思う。

 小学5年生の時、捕まえた虫の名前は上野の科学博物館へ行けば判ると母は言う。館内ではカンブリヤ期の特陳で、海老や蟹のお化けのような生物が溢れた海の絵や3億年も昔の化石を見てびっくり。それが更に進化し1億年前の地球は恐竜で溢れたが、6000万年前、突如原因不明で絶滅したと。

 天文のコーナーでは一番遠い星は2億光年も彼方だとか、僕は想像もできない地球と宇宙の大きさと過ぎた時間を知り、科学者になる夢をもち、中学1年まで通い詰める。

 小学6年の時、神武天皇から崇神天皇まで天皇10人で700余年も過ぎているのはおかしいと母が言う。何故と聞くと『皆100才も長生きしないとこうはならない』という。早速在位年間の平均値を計算すると、10代までの在位期間の平均値は70余年もあるのに、11代の垂仁天皇から大正天皇までの平均値は16年余でした。僕は台所にいる母に言った『2600年は間違いだ、10代までが過ぎた月日は200年以下で、2600年にはならないと言うと、母はうろたえて小さな声で『お前、絶対誰にも言ってはいけないよ。警察にもし知れたら、私もお父さんも牢屋に入れられてしまう』という。びっくりし、驚いてこれ以後親にも友達にも考えたこと、思ったこと一切喋れなくなりました。

 17歳の夏戦争は負けて終わり、嬉しくて嬉しくて嬉しくて。



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共謀罪とはなにか

浜林正夫(一橋大学名誉教授・御幸町在住)

 最近「共謀罪」が大きな問題になっています。これがないと国際組織犯罪防止条約を締結できないと政府は言うのですが、野党側は「予備罪の範囲を増やせば条約の求める国内法整備という条件を満たせる」と対立しています。私にはよくわかりませんので、どちらの言い分が正しいのかという問題は抜きにして、政府が国内法整備のためと言って持ちだしてきた共謀罪の問題点を考えることにします。

 警察が犯罪を犯した者を逮捕し裁判にかけるという手続きは法治国家として全く当然のこととして受け入れられています。ただしその場合でも犯罪を犯したという証拠がなければ刑を確定することは出来ません。確実な証拠がない場合、拷問をして証拠をでっち上げるという場合も実際にはありますが、これは不法不当なこととして逆に検察側が追及されます。

 これは個人の場合ですが集団の場合はどうでしょうか。集団の場合には個人と違って犯罪を犯す場合には何らかの相談や打ち合わせが必要になります。これが共謀です。しかし犯罪を犯すためではなく遊びにいく場合でも事前に相談するでしょう。現在、政府が提案しているのは、こういう事前の打ち合わせが犯罪の打ち合わせだという前提に立つものです。これを共謀と名付けているのですが、共謀は必ずしも犯罪の打ち合わせではありません。共謀という言葉は犯罪の打ち合わせというニュアンスを持ちますが犯罪とは限らず、何らかの仕事あるいは遊びの事前相談ということもふくめれば「共謀」ではなく相談と、言うべきでしょう。これを取り締まる必要はまったくありません。

 では共謀といういい方で政府が取り締まろうとしている本当の狙いは何でしょうか。私はそれは日本の社会変革あるいは国民の権利と生活をまもるさまざまな運動の取り締まりにあると見ています。共謀罪は運動を抑え込もうという狙いを持つものにほかなりません。




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鈴木彰の「ウキウキと北の脅威を煽りたて」




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太郎の部屋のほっとたいむ 53

緊迫感十分「十二人の怒れる男たち」

鈴木太郎(詩人・演劇ライター 中新井在住)

 俳優座劇場プロデュース公演「十二人の怒れる男たち」を見た。レジナルド・ローズの原作を、酒井洋子=訳、西川信廣=演出で、1955年から各地で上演が続けられている。この間、裁判員裁判が制度化されるなどの状況があり、緊迫感十分な舞台は多くの示唆に富んでいる。

 ニューヨークの法廷で、ある殺人事件の審理が終わった。被告人は17歳の少年で、日頃から不良といわれていて、飛び出しナイフで実父を殺した容疑だった。陪審員12人が評決のため陪審室に引き上げてきた。夏の暑い日である。陪審員は1号から12号まで、それぞれに強い個性を持っている。早速、第−回の評決が行なわれる。1人だけが無罪に手をあげる。評決は全員一致が要求されていた。勇気ある「少しだけ時間を下さい。話し合いたいのです」という8号のことばから、審理をあらためて吟味し、検討を積み重ねていくのである。

 少年のナイフの検証、使い方についての違い、階下の老人の証言に対する再検討、「殺してやる」という言葉の意味合い、殺人現場で列車の通過時間と高架下の音量、殺人事件を目撃したという女性のメガネのこと、等々、展開されていく、その過程はまさにサスペンスタッチで、それぞれの人間の深層心理、言葉のもつ重みが浮き彫りにされていく。

 そこに、ドラマの核心があり、俳優たちの台詞にこめられた熱さが、観客をひきつける魅力となっている。出演は塩山誠司、青木和宣、瀬戸口郁、渡辺聡、山本建翔、原康義、金内喜久夫、柴田義之、米山実などの豪華な顔ぶれ。裁判長の声が故・矢野宣だったことが嬉しい。=六本木・俳優座劇場、5月18日所見=




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【連載・沖縄通信】世界中に届け! 沖縄の声

原田みき子(沖縄県本部町在住)

 5月14日、辺野古の対岸の浜で「復帰45年5・15平和とくらしを守る県民大会」が開かれた。実行委員長の山城博治さんは「戦争への道を許さない。共にスクラムを組んで平和を守っていこう!」と呼びかけた。国連人権委員会で発言する予定であることも報告された。保釈中の彼は3日以上の旅行には裁判所の許可が必要で「万が一裁判所が許可しなければ、それも国際的な問題になるだろう」と識者は指摘する。

 この日の大会には恒例の平和行進に参加した全国の労働者の他に、韓国の済州島からも40人の参加があった。米軍基地がらみの事件や植民地的状況は同様であり、共にあきらめず闘うことを誓い合った。ただ韓国ではすでに地位協定の改定を実現させていて、一歩前進している。いかに日本政府が怠慢か、情けないばかりである。

 大会翌日の15日、山口県岩国市の福田良彦市長が辺野古の現場を視察に訪れた。「国から着実に工事を進めていると説明があった。6月の定例市議会で受け入れの可否を表明する方針なので…」と記者団に語った。

 受け入れとは、厚木基地から空母艦載機を移駐させる件で、その条件の一つとして普天間飛行場移設の進展を挙げている。どれくらい工事が進んでいるか自分の目で確かめに来たらしい。国の言うことを鵜呑みにしないのは結構だが、基地強化行政で批判を浴びる市長である。知人から毎月「岩国基地通信」が届くが、福田市長は安倍晋三首相と並べて糾弾されている。岩国市民は「極東最大の基地になって標的にされるのでは?」と心配している。

 記者団に「普天間移設が進展しているとみるか?」と問われた福田市長は「今の段階で最終的な判断を言うことはできない」と答えた。そのとおりである。テレビや新聞では4月25日以降「工事着手で海は取り返しがつかなくなった」と報道されるが、実態は護岸工事の石材が波打ち際に投下されているだけで本体工事はまだまだ先の話である。私たちにはマスコミが安倍首相の意を受けて「もう取り返しがつかないから早くあきらめろ」と言っているように聞こえる。

 しかし、知事や名護市長の権限で止められる要件が幾つもあり、新基地建設は不可能である。何よりも連日現場に駆けつける市民の反対運動が建設を阻止する。

 私は20年間も日米政府の圧力に負けず運動を貫いているのだから、沖縄県民の平和を求める声は必ずや世界中に届いて、多くの共感を得るだろうと信じている。




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「憲法記念日」に新聞は何をつたえたのか、つぶさに読んでみた

 改憲が発議できる立法府(国会)ではなく、行政府(内閣)の長が突然に改憲に言及した。しかも、場所は国会ではなく支持するグループの集会と読売新聞だった。総裁と首相を巧みに使い分ける姑息な手段にはただ呆れるばかりだ。憲法記念日に在京各社は何を伝えて、何をつたえなかったのかを検証した。山本、葛西が担当した。

【朝日新聞】

 安倍改憲に反対する「社説」を2本掲載している。1面掲載の社説は、安倍政権のもとで憲法は「深く傷つけられ」、「特異な歴史観」にもとづく「危険な改憲」は阻まねばならないと主張している。中面の社説は、「個人」を削り「和」の尊重を書き込んだ自民党の改憲草案を「憲法観の転覆」だとし、「権利」「自由」もふくめた立憲主義の思想を次世代に受け渡すことが私たちの重大な使命だとしている。

 1面のトップは、1946年2月、幣原首相がGHQ憲法草案を昭和天皇にみせた際の「これでいいじゃないか」の一言で、草案をベースにした憲法づくりをすすめると「腹を決めた」という記事。関連記事として同じ記者が、昭和天皇を軸にして憲法制定時から公布に至るまでの経緯を中面でまとめている。

 他には、「国民あっての憲法論議」との視点から、統治の仕組みとして「国会解散権」「参院改革」「国会審議」を改憲の論点としてとりあげた記事、また憲法学に批判的な法哲学者・長尾龍一さんに「憲法の運命」についてのインタビュー記事、社会面には憲法の存在を自らの生き方のなかで身近に感じてきた人たちの記事を載せている。

【毎日新聞】

 「前を向いて理念を生かす」と題する社説は、憲法が果たしてきた役割を「高く評価すべき」といい、「平和国家」を定着させた力として9条を位置づけている。また改憲派と護憲派は「永遠に混じり合わない水と油」で、「特に隔たりが著しいのは、9条と安保条約のとらえ方だ」と断じる。そして「国際協調主義の深化」の必要性にふれ、「国際平和を追求する中で9条の今日的なあり方をとらえ直すことだ」と主張している。

 1面トップは、首都大学東京で毎年新入生のゼミ員に書かせている9条の「リポート」に関する記事。どの年も6対4で改憲派が多いのだが、目の前の現実的な危機への不安が改憲支持につながっているという。他に、論説委員長の「国民主権を鍛えよう」と題した記事と、9条改正反対46%、賛成30%の結果を報じた自社の「世論調査」結果を掲載している。

 中面企画は、「改憲は立憲主義の否定に加担する」という東京大学・石川健治氏と「現実とかけ離れた9条の解釈変更必要」という京都大学・中西寛氏との対談。また見開きで、変遷する自衛隊の任務を発足時から追う記事と航空自衛隊那覇基地の現場ルポ、他。

【東京新聞】

 「9条の持つリアリズム」と題する社説。憲法の第2章「戦争の放棄」が「この憲法の中核のアイデンティティ」だとし、「9条を変えて、戦争をする国にすることだけは阻止」しなければならないと述べている。抑止力論は果てしない軍拡に向かい、軍拡は「国を滅ぼす」と歯切れがいい。

 1面トップは、連載「憲法70年を歩く」の5回目「朝日訴訟」の記事。最終面につづくこの記事は、生存権を保障した憲法25条をめぐって争った朝日茂さんが入院していた国立岡山療養所跡を訪ね、存命する関係者の思いを交えて伝えている。私たちが忘れてはならない60年前にはじまった「人間裁判」を振り返りながら、今もなお憲法を「現実」に生かすことの大切さが伝わってくる。

 中面の「こちら特報部」では、安保法制の違憲訴訟原告団に加わる元自衛官をとおして、「戦争ができる国」への既成事実化が進む実態を見開きで追っている。他に、ベストセラー作家・下重暁子さんに「教育勅語と憲法」について、都議選の一票の不平等をめぐって提訴した元最高裁判事・泉徳治さんに「平等権と民主主義」についての聞き取り記事を掲載し、2〜3面、社会面でも憲法開連の記事を載せている。

【読売新聞】

 改憲派の雄「読売新聞」の1面を飾ったのは、安倍首相だ。この2年間、憲法に関する記事を1面に掲載することはなかったが、今年は同紙の忖度からか1面と4面に登場した。党総裁として、憲法改正を2020年の施行を目指す方針を表明した。改正項目は、戦争放棄を定めた9条1項、2項を維持した上で、憲法に規定のない自衛隊に関する条文を追加することを最優先する意向を示した。

 「速やかに自民党の改正案を提出できるよう検討を急がせたい」と言うが、自民党が12年に作成した憲法改正草案では、9条を加筆・修正し国防軍の保持を明記している。安倍首相は改正草案の破棄には応じていない。よく読んでも分からない内容である。「自衛隊を合憲化することが、私の世代の使命だ」と説くが、違憲の疑いがあることを認識しながら、海外に派遣する愚行を行ったのは、首相自身である。違憲だから、合憲化するでは、これまでの自民党の主張と違う。

 9条に自衛隊を書き込んだとたんに、海外での武力行使が無制限になる危険性がある。「9条」と「教育無償化」はムチとアメの政策だ。早くも自民党内から異論が吹き出している。首相と総裁の使い分け、辞めてほしい。都合悪くなると「あれは総裁としての発言」と言うのか。

 22、23、24面に憲法記事を特集したが、いずれも改憲賛成の学者、文化人のオンパレード。読者には護憲もいるぞ。報じなくてジャーナリズムが成り立つのか疑義を感じる。「憲法70年、未来につなごう」の1頁カラーの意見広告が目立った。

【産経新聞】

 1面に論説委員の阿比留氏の論文を掲載。佐藤愛子氏のベストセラーをもじった、「憲法70歳。なにがめでたい」と挑発的な見出しが躍る。同氏は、「平和を愛する諸国民の公正と真義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」と掲げる憲法前文は存在しない絵空事と切り捨て、敗戦国の悲哀をまぶしたような前文は一刻も早く改めたいと改憲の薦めを掲載した。

 同面には、石原慎太郎氏も寄稿し、米国による戦後の日本支配はその復活(巨大な海軍を保留した有色人種国家)を半永久的に封じるためのもので、それを象徴するのが現憲法、とエールを送っている。

 社説では、北朝鮮をめぐる情勢が戦後最大の危機と位置付けて、専守防衛ではもはや守れない。だから、早く9条改正して、北のミサイルから国民を守り抜けと、改正を煽る。

 4面、5面に憲法記事を掲載。常連の百地章国士舘大持任教授、西修駒沢大学名誉教授が改憲の持論を展開した。昨年と同じ内容だった。

【日経新聞】

 1面に世論調査を掲載した。「現状のままでよい」46%。「改正すべきだ」45%と拮抗しているという。昨年4月の調査と比べると、現状維持が4ポイント減り、改憲支持が5ポイント増え、その差は縮まった。

 左肩は論説主幹・芦川洋一氏の署名記事。この中で、「憲法はどこまでいっても9条の問題。アクロバットのような解釈をつづけ、自衛隊の創設から集団的自衛権の限定容認まできたが、もはや限界だ。やはり何らかの手をつけざるを得まい」と安倍首相を援護する。

 社説では、「形式より中身だ。明治憲法は大正デモクラシーを育んだが、政党が政争の具にしたことで軍部独裁を生んだ。憲法の書きぶりは大切だが、それを日々の暮らしにどう生かしていくのかは、より大切である。護憲か改憲かだけが憲法論議ではない」と説く。改憲を推し進める主張ではなかった。

 4面に「首相、在任中の改憲に標準」を掲載し、憲法に対する、与野党のスタンスを紹介し、改憲が実現できるかどうかは、国政選挙や自民党総裁の目算、民進党の出方、国民世論などの要素が左右する複雑な方程式になる、と結んだ。




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いま思うこと

 今年は日本国憲法施行70周年の年、いわば節目の年と言えよう。先日、所沢平和委員会の総会があり、畑田重夫さん(国際政治学者)の記念講演があった。テーマは「戦前回帰をめざす安倍政権」で、安倍内閣が強行しつつある改憲・戦前政治に向けての暴走をきびしく糾弾した。

 そのなかで畑田さんは「節目を大切にする」こと、人生にあっても「けじめ」「節目」が大切だと強調された。

 5月3日の憲法記念日に安倍首相は、改憲派団体の憲法討論会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」、改憲項目として9条を挙げ、新たに追加条文として「自衛隊の存在をしっかり憲法上に位置づけるべきだ」と主張したことは、ご存知の通り。

 2020年は東京オリンピックの開催の年であり、あえてこの年を改憲の年と位置づけた。文字通り節目の年に執念を燃やしているのだ。

 安倍政権の暴走は、とどまるところを知らない。モラルハザードを繰り返し、国民の声を無視し続ける政治に未来はない。共謀法で国民の基本的権利である思想・信条、表現の自由を奪い、再び戦争する国への逆行は断じて許すことはできない。戦後73年、憲法施行70周年の年に当たり、平和憲法を断乎守りぬく決意をいっそう固めたいと思う。

 改憲にストップをかけ、立憲主義を守るとり組みが、いま全国的に広がり、強められている。市民と野党との共闘のとり組みである。所沢市を含む埼玉8区でも「野党共闘8区の会」が結成され、活動を始められた。市民一人ひとりが自分の意思で「このままではいけない。何としても政治を変えたい」ことを示すのは今を置いてない。

 私は心から呼びかけたい。「平和を、憲法を守るため、力を合わせようではないか」と。




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コ一ヒーブレイク

《電磁波》

 1週間も経てばワッと背丈を延ばす雑草を退治(!)するには、やはり手鎌ではなく動力を備えた草刈機のほうがはかどるのは言わずもがな。念願の私専用の草刈り機を買ってもらいました。

 ところが、この2サイクルでひもを引いてエンジンをかけるという、いわば「旧式」のスターターを御するのは至難の技で、何回も何回もひもを引き上げては失敗し、機械を使える状態にする迄に3〜40分を要しました。汗をかいて、くたくたになって、がっかりして、「もうこんな物、使うものか!」と半泣きになりながらなおトライし続け、やっとエンジンがかかって…。

 車はどのメーカーもキーレスエントリーという方法になり、ボタンを押すだけでエンジンはかかります。この方法をなぜ農業機器に採用しないのかと思うのです。農業人口の高齢化を見れば、商売としても成り立つではないですか。

 過日、キーをザックに入れたことを忘れたまま車のトランクルームに置き、目的地の駐車場で、あれ、こんなに離れた場所に置いてあったんだ、でもエンジンはかかるんだねと驚きました。そこで、同乗者と電磁波の話をしながら山に登った次第です。今や電磁波に取り囲まれている私たちに何の影響もないわけはないと。オウム真理教の事件で知らされた「ポア」という言葉も思い出しました。

 北欧などではもう何年も前から学校で子どもたちが使用するパソコンは部屋を指定してさらに有線とする、送電線の周囲150mの土地は電力会社が買い取って一般の使用に提供しない、家電のIH器具も消極的になっているなど、いろいろと対策が取られているそうです。

 日本でも今では電磁波アレルギーといえる症状が数多く認められ、医学界では問題提起がされているとか。自然破壊を無視して進められるリニア新幹線。自然だけではなく健康の面で、それが仕事という乗務員も大枚はたいて乗る乗客も、何とも怖い話です。
原 緑




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映画のお話

新作映画「校庭に東風吹いて」を作って

桂 壮三郎(映画プロデューサー)

 子ども達の未来を切り拓く映画「校庭に東風(こち)吹いて」の映画化に取り組んだのは、映画「ひまわり」の全国上映が佳境を迎えている2014年秋でした。「校庭に東風吹いて」は赤旗新聞へ掲載された小説で多くの読者から賛辞が寄せられ映画化への期待が寄せられました。

 作品のストーリーは、学校の教育現場で言葉を話せない場面緘黙症。の少女の悲しく閉ざされた思いに暖かく愛情を注ぐ教師を描き、もう一人の問題児でもある少年の生活苦から来る様々な歪みと貧困を描きながら、子どもの貧困問題の解決のために根気よく力を尽くす主人公の教師を描く事にありました。

 作品を見る人に感銘を与える事に全力を注ぎ、多くの人々の製作協力を得ながら映画化を進めてきました。その結実は感動的で見ごたえのある作品として誕生致しました。

 主人公の教師を演じるのは9年振りの映画出演を果たした沢口靖子さんで、連続TVドラマ「科捜研の女シリーズ」の撮影の合間を縫うように本件の教師の役作りに取り組みました。沢口さんの出演の決定はシナリオの完成度の高さにありました。シナリオを読んだ沢口さんは、自分が所属する東宝へ出演の許可を求めたのです。その想いはスクリーンに表れて熱演が光ります。

 さて、私はプロデューサーとして、作品の基本に「子どもの権利条約」を生かしました。子どもは、人間としての権利、子どもとしての権利を合わせもつ主体です、それは、生きる権利、守られる権利、発達する権利、そして、社会に参加する権利を基本とし「子どもの最善の利益」を第一に大人社会は行動しなくてはならないと各国へ通達している事です。

 しかし、日本の子どもの現実は違います。子どもたちを取り巻く教育の現状はこれでいいのかと疑問に思います。競争教育がいちだんと激化され、学力テストの数値を上げることが目的化され、競争に勝ち抜く教育がいちだんと推奨され、本来の子どもが健全に学び育つ教育が疎かにされています。その事は今日の日本が抱える問題と重なります。

 人と人との繋がりが断ち切られ生きる望みを失い孤独と無縁社会がはびこり一層の貧困と格差を拡大しています。今こそ教育や社会の家庭の危機を正面から捉え、特に、子どもたちの苦悩と悲しみを真に受け止め、子どもたちの希望を切り開く教育力こそ必要です。本作が少しでもその役割を果たせる映画になればと製作致しました。所沢の親と子にぜひ鑑賞させる事ができればと考えております。

 それでは話を変えます。今日の日本映画の現状を報告致します。2016年度の年間観客動員は、実に42年ぶりに1億8000万人を超えました。興行収入も2350億円となり過去最高です。公開本数では邦画・洋画含めて1149本です。邦画の現状は興収で1486億800万円と前年比23・5%増となり、興収10億円以上を上げた作品は42本で興収全体の79%を占めています。その結果興収10億円以下の作品は568本もあり、平均すると1作品あたりの興収は約5646万円になり1作品における製作費等の試算を考えると多くの中小規模作品は製作費の回収が著しく厳しいと言わざるを得ません。又、2次使用によるビデオソフト販売、テレビ放映等からの製作費回収もDVD等の販売不振により期待できません。現状の日本映画は一部の作品を除き依然厳しい環境下に置かれています。

 最後に、私が代表を務めています日本映画復興会議では、日本映画の文化的・産業的復興と民主的な再生を目標に活動を推進しています。尚、復興会議の顕彰事業の一つである2016年度の日本映画復興賞を決定数しました。日本映画復興賞に「被爆者の声をうけつぐ映画祭実行委員会」、アニメーション映画『この世界の片隅に』を日本映画平和賞にそれぞれ選定数しました。その他に、復興奨励賞に劇映画『校庭に東風吹いて』、ドキュメント映画『ザ・思いやり』(リラン・バクレー監督)、同じくドキュメント映画『クワイ河に虹をかけた男』(満田康弘監督)を選定しました。同じく復興特別賞に、故・上地完道氏を推奨しました。日本映画復興会議では暴走する安倍政権による共謀罪法案の廃案に向けての映画関係者への運動を強化しています。




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北朝鮮のミサイルが米国に届くのはいつか

芦田 茂(作家・椿峰在住)

 この疑問の内訳は、北朝鮮が発射する核弾頭を搭載したミサイルが米国の首都を攻撃する能力をもつか、ということだ。北朝鮮の求めることは、米国との交渉関係であり、その目的は金独裁体制の維持・国体護持にある。超大国であり、世界の警察官である、米国との関係のなかで政権の保全にある。その手段が核・ミサイル開発。しかし、米国には、かつての日米戦争を介しての日本に対する国体護持の約束を、北朝鮮に行う余地は皆無。

探知不能な潜水艦発射

 そのミサイルとは、今の時点では弾道ミサイルのみであり、その射程が1万キロ以上の、地上発射、戦略用のもの。ただし、それは潜水艦から発射される弾道ミサイル、大気圏内を飛しようする巡行ミサイル、あるいは生物化学兵器でもよい。国体護持の手段が大量破壊兵器。そして大量破壊兵器や自然災害をダシにし、「瀬戸際外交」で諸国家から経済援助を得てきた。

 戦略用の弾道ミサイルは必然的にサイズが大きく、ミサイルの所在・発射は偵察手段などで特定される。これに対し潜水艦発射の弾道ミサイルは射程の制約が緩和でき、比較的小さく、巡行ミサイルは小型の航空機程度のサイズで、両方とも所在の発見や特定あるいはミサイルの発射探知は困難。考察の対象は戦略用の弾道ミサイルとする。

 北朝鮮の開発配備している弾道ミサイルの主流は、旧ソ連が1950年代に開発配備した液体燃料を用いた戦術用の短距離弾道ミサイルであるスカッド・ミサイル。北朝鮮は70年代末に製造施設を取得し、独自生産を開始。これに改良を加えたものが配備され、日米などと同様、訓練として発射され、戦路用のミサイルの開発試験も行っている。戦略用のものもこれの延長上のもの。その一方で、固体燃料方式の弾道ミサイルや潜水艦発射の弾道ミサイルの発射試験が伝えられるが、その実体は不明。

断定する決め手を欠く

 北朝鮮のミサイルが米国に届くのはいつか、の質問へのこたえは、信ぴょう性の議論となり曖昧模糊としたもの。そこでは、システム実証が行われることはなく、北朝鮮政府はその信びょう性を誇示する。北朝鮮のミサイルが米国に届くと米政府が判断すれば、抑止発動による体制崩壊が現実化するが、断定する決め手を欠くことがつづく。

 北朝鮮がつくる米国に届くというミサイルは、約1000キログラムの重さの弾頭が搭載でき、射程を満足すればよい。誘導性能や信頼性・安全性・貯蔵性・多目標同時攻撃能力などの点で、米霧中などのものとは異なる。とにかく米国攻撃能力の信憑性がつくりだせればよい。

 その技術的な課題は、大気圏外から目標に向けて落下する弾頭が大気圏に再突入する時の熱・振動などに耐えることができるかの実証にある。北朝鮮はその実証試験を延々と行うが、成否は明らかにしない。巷間では明日にでも、という核脅威が喧伝される。

 北朝鮮は同盟国あるいは同じブロックの中国・ロシアに次のように主張してきた。この無政府状態の国際社会では、中国もロシアも米国などから北朝鮮を守ってくれるとは限らず、自助的な努力により安全を確保するしかないと。

 1950年6月25日に北朝鮮軍の侵攻にはじまった約3年にわたる朝鮮戦争をみても分かるように、北朝鮮政府は軍事力でもって政権の保全をしてきた。最後に頼れるのは、軍事力であり、大量破壊兵器。その背景にあるのは、広島・長崎で証明された核兵器の信ぴょう性と米露中の核抑止政策にならう軍事力。

容認できない一線の恐れ

 北朝鮮が米国に到達するミサイル開発をつづけることは、米D・トランプ大統領が主張するように許容できない一線に近づく。米国では誰が大統領になっても抑止政策は維持され、北朝鮮への宥和はない。冒頭の疑問は、北朝鮮の体制護持の破たんと同じだが、政治的でなんとも言えない。以上の説明を踏まえ、表題のこたえのひとつの候補は、この4年以内だ。トランプ政権の時、例の瀬戸際外交により米国攻撃ができると喧伝するのではないか。




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「日本国憲法施行70周年にあたって」

九条の会

 日本国憲法は今年、施行70年を迎えました。この70年、この憲法を「改正」しようとする攻撃が絶え間なくおこなわれてきたにもかかわらず、「再び戦争をしない」と決意した私たちは「9条守れ」の運動をねばり強く展開し、これをはねかえしてきました。

 しかしいま安倍政権は、アメリカに付き従った軍事同盟を背景に、「国益」、「安全」の口実のもと、集団的自衛権権容認の閣議決定をおこなうとともに、秘密保護法制定、武器輸出三原則の撤廃、国家安全保障会議の設置、日米ガイドラインの締結、そして戦争法制定などを強行してきました。さらに通常国会冒頭の施政方針演説では「次なる70年に向かって」憲法「改正」を提案すると明言するなど、歴史逆行の暴走をエスカレートさせています。

 いま、アメリカではトランプ政権が誕生し、アジアでも大国主義的行動や軍事的挑発が繰り返され、20世紀以来の世界がめざしてきた戦争違法化の流れに逆行する軽視できない動きが強まっています。

 安倍政権の暴走は、こうした世界の逆流に便乗し、軍事力や恫喝が幅をきかす世界の中で、強国の一員としての座を占めたいという野望に基づいています。4月7日のトランプ政権によるシリア攻撃に対しても安倍首相はいち早く「来国政府の決意を支持する」ことを表明しています。こうした安倍政権の政治がアジアの緊張を高め、戦争と武力衝突の危険を拡大するものであることは明白です。

 こうした流れに対して、世界でも、武力や恫喝による解決に反対する市民の声が、当のアメリカも含めて噴出しています。9条を掲げる私たちの運動は、平和な世界の構築に向けて、その先頭に立って積極的な役割を果たすべき立場にあります。

 同時に、戦争法を廃止すること、南スーダンから自衛隊を即時撤退させること、沖縄辺野古、高江の基地建設を阻むこと、共謀罪法案の成立を許さないこと、何より明文改憲に「NO」をつきつけることは、日本国民を強権で統治して物言わぬ存在にしてしまおうとする安倍政権の企みを打破し、現状に危慎をもつ世界とりわけアジアの人々、国々に対して、9条をもつ日本の私たちに課せられた責任です。

 戦争法廃止の運動のなかでは、立憲主義擁護の一致点にもとづいてかつてない共同が実現しました。南スーダンからの自衛隊施設部隊の撤退決定もその運動の成果です。安倍政権の暴走にストップをかけるのはこの共同をさらに大きく、強固なものにしていく以外にありません。そして安倍政権を退陣においこむことです。

 13年前、九条の会の出発に際して発表した「アピール」の言葉を、いま、あらためて掲げます。「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。」
2017年4月27日




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舞台を通して、沖縄戦を伝えたい

谷 英美(女優)

 埼玉県にある丸木美術館での朗読会のお知らせを、前々号に載せていただきまして、ありがとうございました。

 その『顔』一沖縄戦を生き抜いた女の半生一、3回目の沖縄公演が6月16日(金)14時より、沖縄の平和祈念堂にてございます(参加費千円・入館料含)。本土の俳優が平和祈念堂で朗読させていただくのは初めてと伺い、身の引き締まる思いでおります。

 埼玉県在住の沖縄戦体験者・新垣文子さんとの出会いをきっかけに生まれた作品です。爆弾の破片で鼻をそがれながらも、たくましく生き抜いてこられたお人柄に感動し、その生き様を伝えたいと一緒に沖縄へ取材に行き、拙い筆をふるいました。新垣さんの一言に引っ掛かったからです。体験を伺った時、死んでいった兵隊さんたちも住民たちも「本望だったと思う」とおっしゃったのです。「さぞかし無念だったと思う」ではなく、「本望だったろう」との言葉に耳を疑いました。しかし、本心からおっしゃっているのです。戦陣訓は、これほどまでの長きにわたり人の心を縛り続ける…。教育という名の洗脳の怖さと共に、教育の大切さが心に刺さり、この作品の核となりました。

 今また教育勅語を復活させよなどということが言われ始めています。そんな今だからこそ、この舞台を通して、生身の人間の五感から五感へとダイレクトにメッセージを届けたいと願っております。沖縄の皆さま、ご来場ならびにPRへのご協力、よろしくお願いいたします。(『アローン・シアター』主宰 川越在住)
【お問い合わせ 090・6147・4160佐藤】




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共謀罪、やっぱり「不要」で「危険」

18日、自公維で強行採決 第8回憲法カフェ

 5月14日、憲法カフェ第8回は自由法曹団共謀罪阻止対策本部事務局長の三澤麻衣子弁護士を招き、「共謀罪」の学習会を行った。

 三澤さんは「反対の声」に「組織的犯罪集団」のレッテルを貼ることができる弾圧立法で、私たちの穏やかな生活や平和を守るために絶対に許してはならない、国会で廃案にしよう、と訴えて次のように語った。

 共謀罪は2003年から、3度国会に上程され、そのつど国民の強い反発で廃案となった。

 しかし、16年に法案をリークした政府与党の意図を推測すると、20年のオリンピックが絶好な口実と捉え、修正してでも通したいと考え、批判や世論の動向を様子見している。

 17年2月の新聞報道に法務省は対象犯罪を277に調整したとあるが、あたかも、批判を受けて修正したとのスタンスを取っている。しかし、最初から大幅修正を想定して落としどころは決まっていた。裁判の和解と同じ手法だ。17年2月提出の法案3点セット(277の中身)は、一般人対象、将来の弾圧手段に使えることは変わらず、非常に危険な法案である。

 通常の犯罪の仕組みは、刑法やその他の法律の各条文に構成要件と処罰の重さが規定されている。 @故意に A人を殺す行為をして Bその結果、人が死んだら、C死刑又は無期若しくは5年以上の懲役となる。@からBが構成要件で、Cが処罰の重さを示す。「共謀罪」は、新しい犯罪を作ることを目的としている。これまでの各々の犯罪を規定した法律で処罰するのではなく、組織犯罪処罰法という法律の中に「共謀罪(テロ等準備罪)」という新たな犯罪の規定を作るものだ。殺人を共謀して、その中の一人がロープを買うなどして「準備行為」をすれば、組織犯罪処罰法の「共謀罪規定により処罰される」、「殺人罪」が規定されている刑法199条で処罰されるのではない。それは、近代刑法の原則に反し、条約にも違反する。

 日本の近代刑法の原則は行為主義である。批准されている共謀罪の根拠となる国際組織犯罪防止条約(TOC条約)34条1項には「国内法の基本原則に従って」とある。また、憲法違反でもある。治安維持法、特高警察、第二次世界大戦参加の過去を持つ日本は思想弾圧を繰り返し、その反省の上にたって「思想・良心の自由(憲法、19条)」がある。共謀罪は憲法19条、憲法21条(表現の自由)、憲法31条(適正手続きの保障)にも違反する。

 菅官房長官は「テロなどの準備行為があって初めて罰する法案であり、従来の『共謀罪』とは全く達う」行為主義には反さない、と言い訳するが、沖縄の高江ヘリパット建設反対の座り込みの相談をした2人に対して、阻止したい警察は「座り込みは組織的威力業務妨害罪(組織犯罪処罰法3条1項12号で5年以下の懲役なので要件を満たす)に該当と決めつければ「座り込み相談」は「組織的威力業務妨害罪の共謀」として、捜査が可能となる。座り込みを相談した一人が、2〜3日後にゴザを買うと、警察はゴザを買う行為が準備行為として、ゴザを買った人だけではなく、相談した人全員を逮捕・起訴できることになる。ゴザを買う行為が、座り込みのためか、海に行くためなのか、区別は出来ない。警察が、買った人の内心を座り込みのためと決めつけるから逮捕可能となる。ここが怖い。

 公安警察は、常に政府に反対する活動家や団体を監視する違法行為を行っている。昨年7月の参院選では労働組合事務所が大分県警に「盗撮」された。この時に共謀罪があれば、適法な捜査と言い訳できたかもしれない。公職選挙法違反は除外したが、公安警察の執拗さは異常で277もの犯罪があれば、どれかの共謀に当てはめることはいとも簡単なことだ。

 「もともと正当な活動をしていた団体」も、その目的が「犯罪を実行することにある団体」に一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団になりうる、と金田法相は答弁した。「一般の方々」かどうかも、「一変」したかどうかも、誰が判断するのか、国民のほとんどは自分が一般人だと思っている。「一変」したかどうか判断するのは、警察とその背後にいる政府である。

 マスコミ関係では、共謀罪ができると信用毀損罪の共謀罪等で企画打ち合わせの段階で共謀認定が可能となる。また、活動とは無関係な一般人も巻き込まれる。居酒屋や同窓会でちょっとした話が、誤解が重なって、捜査等の可能性が出てくる。現時点では反対運動等に興味がなくても、戦争法にも賛成で自衛隊が派兵されても仕方ないと思っている人でも、将来、日本が戦争に参加するとなった時、反対する人は大勢いるはず。その時に共謀罪があったら、もう遅いことになる。政府案はすでに現行法等で十分。わざわざ共謀という要件が必要な共謀罪(テロ等準備罪)を作る必要はない。

 なぜ政府は共謀罪を作りたいのか? 問題だらけで、不要の共謀罪(テロ等準備罪)のこれまでを見てくると、共謀罪は現行法等で対応可能なので不要。むしろ一般人が巻き込まれる危険がある問題だらけのものだ。

 なぜ作りたいのか。特定秘密保護法を2013年に強行採決し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を14年7月に行い、15年9月には、憲法学者の9割が「憲法違反の疑いがある」と認定した安保関連法(戦争法)を強行採決し成立させ、16年には刑事訴訟法(盗聴法拡大、司法取引新設等)などが成立した。そして、一連の仕上げが共謀罪である。それは、戦争法を推し進めるための監視密告社会の最後の強力な手段であり、絶対に廃案にさせなくてはならない。




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醍醐聰さんが所沢で講演

 5月20日、「大事を伝えないメディアにどう向き合うか?」と題して、東大名誉教授、醍醐聰さんが講演した。(吾妻九条の会、マスコミ・文化九条の会所沢 主催)

 醍醐さんは、NHKは共謀罪で法務省が挙げた想定事例をそのまま紹介するばかりで、高層ビル突入テロ計画、化学薬品を使った大量殺人計画など、市民に関わりの薄い事例ばかり取り上げ、賛否の両論を受け身で紹介するだけ。

 他方、民放は市民に関わりのある市民運動、えん罪事件などを取り上げ、能動的に取材し報道したと、NHKの報道姿勢を指弾した。




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事務局から

 いつになく真夏日がつづいた今年の5月でした。

▼安倍首相が9条改憲を表明

 5月3日、安倍首相は9条改憲を明言しました。憲法尊重義務を負う行政府の長が、改憲を主導することは憲法違反であり、到底認めることはできません。2020年に新憲法を施行するとも語っており、9条をまもる運動は重大な局面を迎えました。

 新しく世話人が加わった「九条の会」は、4月27日に発表した「日本国憲法施行70周年にあたって」のなかで、「『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます」と、九条の会出発のアピールの言葉を再録しました。

 この呼びかけを受け止め、改憲を許さない大きな運動の波をつくっていきましょう。

▼「共謀罪」反対の宣伝行動に25名参加

 4月25日所沢駅で、市内の8つの9条の会が共同して宣伝行動を行いました。手ごたえある反応で、40筆の署名が集まりました。

 自公維は強行採決で衆議院を通過させましたが、この悪法を阻止するために力をつくしましょう。

▼暉峻淑子さん講演の総会にご参加を

 前号1面で予告した総会のチラシを今号に差し込みました。安倍政権に決定的に欠けている「対話」。暉峻さんは人類の歴史の歩みの中で、その重要性を語ります。

 講演後の総会では、重大な局面のなかでどのような活動をするか、議論します。ご参加をお願いします。




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