機関紙152号 (2019年4月20日発行)



もくじ

新元号『令和』とうらはらに 蝕まれていく『和』のために
  中原 道夫(代表委員)

安倍首相への抗議文
  沖縄県民投票の結果を尊重し、ただちに辺野古への土砂投入を中止せよ
   マスコミ・文化 九条の会 所沢

所沢通信基地に横田基地の残土搬入
  即時中止を、市民の怒り
  鈴木 太郎(世話人)

「自治体の自衛隊への名簿提供」を考える
  持丸 邦子(代表委員)

川 柳

憲法カフェ 末浪靖司さん「なぜアメリカ言いなりなのか」
  日本の主権を侵害しつづける「日米地位協定」

マスコミウォッチング
  特定記者排除「報道の自由」「知る権利」を奪う

【沖縄は訴える】 強まる政府の弾圧
   原田みき子(沖縄県本部町在住)

「文化の窓」
  桂壮 三郎(映画製作者)

事務局から





新元号『令和』とうらはらに 蝕まれていく『和』のために

中原 道夫(代表委員)

 かつて、「バンクーバー九条の会」に参加したとき、帰りがけにバスのドライバーに、「日本の憲法九条は、世界のお守りですから、頑張って下さい」と言われたことが胸から離れません。また、城山三郎の「敗戦によって得たものは憲法九条だけだ」という言葉は、九条そのものが、平和と同義語であるという認識の上に立ったものだと思います。二千万人の殺戮を行い、三百十万人の同胞の尊い命を失って得たこの憲法九条を、私たちはけして失ってはならないのです。

 基地問題も、核廃絶も、原発もすべて国民をないがしろにする一つの輪に繋がっています。「国民の命と財産を守るために」と言いながら、アメリカの手先になって海外派兵を押し進める現政権を、私たちは許すわけにはいきません。「戦争になったら、自衛隊は米軍の指揮下に入る」という指揮権密約。「憲法」よりも「日米地位協定」が優先される国が、世界中にあるでしょうか。私たちは、『九条守って世界に平和を』という理念を支持し、「マスコミ・文化 九条の会 所沢」としてさらに運動を進めて行きましょう。

 ところでこの度、この会報は新しく生まれ変わることになりました。これからは、事務局の編集・発行となります。会報は会員・読者のみなさまと共に歩みます。ご意見、論評、ご感想などを気軽にお寄せ下さるようお願いいたします。




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安倍首相への抗議文

沖縄県民投票の結果を尊重し、ただちに辺野古への土砂投入を中止せよ

マスコミ・文化 九条の会 所沢

 辺野古の埋め立てを問う「沖縄県民投票」が2月24日投開票され、「反対」は投票の7割を超える43万4273票、過去最高となり、沖縄県民の「新基地建設反対」の意思が明確に示された。しかし首相は翌日、「結果を真摯に受け止める」と言いながら基地建設続行を表明した。これは地方自治、民主主義を踏みにじるものであり、断じて認めることはできない。国際人権規約第1条は「すべての人民は、自決権を有する」と定めており、政府および米政府は沖縄県民の意思を尊重することが求められる。政府がただちに行うべきことは、世界一危険な普天間基地の「閉鎖・撤去」を米政府に申し入れ、一刻も早くその実現に全力を注ぐことである。

 大浦湾の軟弱地盤、活断層が指摘されるなか、政府は、新たな護岸「K8」を造る工事に着工した。軟弱地盤の改良工事など、辺野古の新基地建設には膨大な建設費用がかかり、沖縄県は、2兆5000億円に達すると試算している。建設費用も工期も明示せず政府は工事を続行している。秋には消費税増税を予定していながら、圧倒的多数の県民が反対している新基地建設に莫大な国民の税金を投入することは到底許されない。

 昨年12月28日、私たちは辺野古への土砂投入中止を申し入れたが、県民投票をふまえて、あらためて新基地建設をただちに中止することを厳重に申し入れる。(2019年3月8日)




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所沢通信基地に横田基地の残土搬入 即時中止を、市民の怒り

鈴木 太郎(世話人)

 許すことのできない事が着々と進んでいる。それは、所沢通信基地に米軍横田基地(東京都)の工事で発生した大量の土砂が搬入されるということである。すでに市民団体が中心になって、ゲート前での抗議行動も取り組まれている。

 米軍は2月4日、防衛省北関東防衛局を通じて@工事にともなって発生する土砂を米軍所沢通信基地内に搬入するAそのため2月上旬に所沢基地の西側に仮設ゲートを設置する。と一方的に通告してきた。搬入作業は今年の2月25日から来年の2月24日まで。土砂の量は3万7000立法メートル分、米軍の計画によると基地の北西側に3メートルの高さに積み上げる。総面積は約1万2000平方メートル、野球場のグラウンドの広さに匹敵する。その後、高さは2メートルに変更し、北高の前と法務局側となった。

 この土砂はCV22オスプレイ専用施設の工事に伴う外周道路の付け替え工事によるものである。横田基地の残土なら横田で処分すべきである。わざわざ14キロも離れた所沢にダンプ240台で運ぶ必要はない。

 だが、早くも法務局側には土砂搬入用のゲートは完成し、ダンプ通行のための歩道の切り下げ工事も終わっている。緑色のフェンスで囲まれた区域は並木小学校の裏まで広がっている。

 所沢基地への土砂搬入は即時中止を、と市民の怒りはひろがっている。「基地全面返還は市民の願い」の立場を貫くことが大切である。所沢市議会は3月29日の議会最終日に「米軍通信基地への土砂などの搬入の中止を求める意見書」を全会一致で可決した。日米地位協定などによる米軍の勝手なやり方に断固反対していきたい。




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「自治体の自衛隊への名簿提供」を考える

持丸 邦子(代表委員)

 2月10日の自民党大会で安倍首相は「自治体が自衛隊への住民名簿提出に非協力的だ」とのべ、「憲法にしっかりと自衛隊を明記して、違憲論争に終止符を打とう」と声を張り上げた。

 少子化のため、自衛隊員が集まらなくなっている。一方、3月30日付の日本経済新聞は「3年前の安全保障関連法の施行により、自衛隊が2018年に米軍の艦艇や航空機を防護した回数が前年の2件から大幅に増え、16件になった」と報じている。「自衛隊を憲法9条に書き込んでも何も変わらない」という安倍首相の説明はすでに破綻している。自衛隊は、今後、国連が統括しない「国際連携平和安全活動」に基づく活動にも従事させられる。防衛大学校の任官辞退者がこれまで最多になったことは、民間の就職状況が良いからだけではないだろう。防衛の最前線を担うための教育機関にいて、首相の言説の胡散臭さをわかった若者だ。若い世代はブラックな仕事には敏感だ。

 しかし、安倍首相への支持率が若い世代では高い。就職状況が良いのは団塊世代の大量退職と少子化のためなのに、アベノミクスのおかげと信じ込まされているからである。

 その親や祖父母、曽祖父母の世代も名簿提供の問題には、敏感になる。森友・加計、地域の教育問題では、何かと個人情報保護を盾に黒塗りの資料が出されるのに、自衛隊にだけは、住民に許可なく名簿を見せるとは。権力者におもねるのは、国民全体の奉仕者であるべき、公務員にあるまじき行動だ。ましてや命に関わる情報である。首相を含め、日本国憲法の再学習が必要だ。




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川 柳

四月馬鹿「令和」「令和」と騒ぎ過ぎ

「令和」の令は命令の令ぞ戒厳令  (武蔵坊)




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憲法カフェ 末浪靖司さん「なぜアメリカ言いなりなのか」

日本の主権を侵害しつづける「日米地位協定」

 3月24日、末浪靖司さん(ジャーナリスト)を迎えて第11回「憲法カフェ」を新所沢公民館で開きました。「なぜアメリカ言いなりなのかー日米地位協定から密約まで」と題した末浪さんの話には、函館をはじめ横浜、八王子、都内や会員外の方もふくめ、参加者は過去最多の65名でした。

 国内で繰り返される米兵の犯罪や米軍機墜落に無力な日本の警察と司法、米国ではありえない住宅上空での米軍機による超低空の飛行軍事訓練、日本のどこでも米軍基地をつくることができる・・・。日本の領土・領空で、米軍は国内法の適用を受けずになぜこのように自由勝手に振る舞うことができるのか。この謎を解くために、末浪さんは毎年のように渡米してアメリカ国立公文書館に通いつめ重要な資料や密約文書を見出してきました。

政府が国民に隠している米国との密約報道をつづけてきた末浪さんは、日米地位協定第25条で定められている「日米合同委員会」が密約づくりの場だと指摘します。月2回開かれる委員会での協議内容も合意事項も非公開で、国権の最高機関である国会の承認を必要としません。委員会での合意事項が日米両政府を拘束し、国内法の適応除外や治外法権状態の在日米軍の無法ぶりの根拠になっているのです。

 すでに自衛隊が米軍と一体化した軍事訓練を繰り返している事実、戦時には米軍が自衛隊の指揮をとる「指揮権密約」など、90分に及んだ末浪さんの話は、日本の主権を侵害しつづける日米地位協定の隠された本質を歴史的・実証的に解明してくれました。

 末浪さんは参加者の質疑にもていねいに答えてくれました。横田基地から大量の土砂を一方的に所沢の通信基地へ搬入する計画も横田と所沢の米軍基地が一体化している現われと指摘し、辺野古基地建設に反対する沖縄の民意無視や全国知事会の地位協定見直し提言も一顧だにしない政府や米国に対して、60年安保闘争のような国民世論を背景にしたたたかいが必要と話されました。  (山本達夫)




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マスコミウォッチング

特定記者排除「報道の自由」「知る権利」を奪う

 首相官邸が「特定記者」を狙い撃ちし、質問封じを企て、内閣記者会に申し入れた問題は、「報道の自由」「知る権利」を侵害するものとして大きな批判の声が上がっています。新聞労連や日本ジャーナリスト会議などが声明を発表し、3月14日には、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)主催の「私たちの知る権利を守る首相官邸前行動」が開催されました。集会には、ジャーナリスト、連帯する市民ら600名以上が参加。メディアの現役記者がスピーチ、歴代新聞労連委員長などからメッセージが多数寄せられました。

 狙い撃ちされた東京新聞の望月衣塑子記者は「メディアが権力に厳しい質問をできなくなったとき、民主主義は衰退します。政府がメディアを支配しようとしている現在こそ、私たちは勇気を奮い立たせ、連帯し、立ち上がり、ともにたたかいましょう」と訴えました。採択されたアピール文(部分)を紹介します。

* * *

 「記者会見は、記者が、会見場に直接足を運ぶことができない市民に代わって、様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことによって、市民の「知る権利」を保障する場です。それにもかかわらず、記者の質問内容にまで政府見解の枠を はめようとする首相官邸の行為は、「取材の自由」や全ての市民の「知る権利」を奪うものであり、断じて容認することはできません。首相官邸および閣議決定に署名した各閣僚に対し、厳重に抗議し、撤回を求めます」

 「日本では第2次世界大戦中、政府が新聞事業令を施行するなど、報道機関や記者の 統制を計画し、準統制団体である日本新聞会を設置させるなど、自由な報道や取材活動を大きく制限しました。この結果、報道はいわゆる「大本営発表」に染まり、取り返しのつかない数の死傷者を出しました。二度と同じ過ちを繰り返してはなりません」

 「あなたに答える必要はない」 記者会見で言い放った菅官房長官の答弁は、全ての市民に向けられた刃です。メディアの現場で働く私たちは、不公正な記者会見のあり方をただちに改め、市民の「知 る権利」を奪う記者弾圧をやめるよう、首相官邸に強く求めます」




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【沖縄は訴える】 強まる政府の弾圧

原田みき子(沖縄県本部町在住)

 県民投票で「辺野古新基地建設NO」の民意が改めて示され、政府はいっそう弾圧を強めてきている。これまでも同様のことが何回かあった。伊波洋一さんを選挙で勝利させた翌朝は、全国から派遣された機動隊員が早朝から一般道路を封鎖し、まさに戒厳令を発動したかのようだった。今回は市民を排除する機動隊員の態度が急に荒々しくなり「どけっ!」と怒鳴ったり、突然腕をつかんだりする。先日はキャンプシュワブゲート前に座り込んだ女性が「公務執行妨害」で逮捕され、一日半警察署に勾留されたが、食事が全く出なかった。そもそも「公務執行妨害」とは言えない事件だ。彼女は数人の機動隊員が他の女性を力まかせに引き抜くのに驚いて、その女性を守ろうとして持っていたプラカードを機動隊員の頭に「コツン」とぶつけただけだ。座り込んでいた多くの人が目撃している。「不作為の行為」であり、ぶつけられた機動隊員は全くケガをしていない。しかし地元の二紙とも彼女がプラカードで相手を叩いたかのような書き方をした。これは二紙とも警察発表を鵜呑みにしたのではないか?または、新聞社にも相当な圧力がかかっているのではないか?などいろいろ想像される。

 彼女が食事を与えられなかったことは重大である。当然、彼女は告訴の意思を持っている。幸いたくさんの目撃者がいるので、とことん闘ってほしい。これは彼女ひとりの問題でない。安倍政権は元号問題やオリンピック問題に隠れて、沖縄で好き放題に人権蹂躙を繰り返している。まさに独裁者そのものであるし、辺野古の新基地建設で大儲けするのは大成建設を筆頭に中央のゼネコンとその関連企業である。沖縄はジュゴンをはじめ宝物を次々に消失し、強大な200年使用の軍事基地を残されるだけなのか。しかし、活断層や軟弱地盤の問題をクリアすることは不可能だろう。血税の無駄遣いに早く国民が気付いてほしい。そして戦争を呼ぶリスクを考えてほしい。(「沖縄通信」を改題)




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「文化の窓」

桂壮 三郎(映画製作者)

 「文化の窓」1回目に映画が指名されました。今後、作品、作家、産業などをとおして映画の持つ文化性を考えていきたい思います。  ご覧になったかたもいると思いますが、格差社会の現実をリアリズムで描いた「万引き家族」はフランスのカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、その後、日本で話題が高まり350万人を動員するなど興行的にも大ヒットしました。そして、日本映画アカデミー作品賞をはじめ、米国アカデミー賞の日本代表となるなど、近年まれに見る成功を納めました。

 それでは、2018年の映画の概況です。@年間映画入場者は1億6921万人です。内訳は邦画=9300万人、洋画=6910万人で、日本人一人の年間映画鑑賞は1・4回です。ちなみに、韓国人の年間映画鑑賞は4回で、韓国では1000万人動員の映画が年間2、3本公開されるなど、今や映画大国です。昨年、軍事政権下、民主化を求める光州市民が弾圧された映画「タクシー運転手」が日本でも公開され話題を呼びました。A映画館の年間売上金額(興行収入)は、2225億円(邦画=1220億円、洋画=1005億円)です。1980年代から90年代にかけて洋画のシェアが高い状態が続きましたが、ここ10年は「邦高洋低」です。B公開本数を見ましょう。昨年は、邦画と洋画を合わせて1192本が公開されました。毎週24本の映画が公開されたことになります。この公開本数の多さは近年の映画産業の特徴です。みなさんは、このうち何本の映画を観ましたか。同時に、大都市と映画館の無い地方との鑑賞格差が生まれています。C全国の映画館数(現在はスクリーン数と呼ばれる)は、3483スクリーンです。その中で、イオンモールのシネコンが日本で一番多いスクリーンを展開させています。買い物と映画を楽しむ、イオングループの戦略です。また、DVDや配信など劇場以外での映画鑑賞が増えてきています。




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事務局から

◆新しい「会報」をお届けします。これまで、編集部を中心に地区労で印刷・折り・帳合を行ってきましたが、今後は版下を作成し印刷業者に発注することにしました。これまでの「会報」発行経費を超えないようにするため、判型、頁数を抑え、このような形での発行になりました。憲法9条をめぐる状況、会の取り組み、マスコミや文化の状況など、「マスコミ・文化 九条の会 所沢」の名にふさわしい記事をお届けしていきます。また、会員・読者のみなさんの「声」をお寄せください。多彩な声で紙面を充実させていきたいと思います。引き続きのご協力をよろしくお願いいたします。
◆4月8日付「朝日新聞」に「辺野古新基地中止」「普天間基地撤去」を求める全面広告が掲載されました。私たちの会もこの意見広告に賛同しました。県レベルの団体のみということで名前はでていませんが、ご覧ください。
◆5月3日、72回目の「憲法記念日」を迎えます。安倍9条改憲を許さないために多くの方が参加されることを訴えます。6月に「総会」を予定しています。詳しくは次号でお知らせします。




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