機関紙157号

機関紙157号 (2019年10月5日発行)



もくじ

安倍政権にすり寄るN国党
  ーその主張の何が問題かー
  戸崎 賢二 (元NHKディレクター)

鈴木 彰の「改憲だ! 疑惑と在庫の一掃だ!」

報告 「地上イージス」 配備、世論変えた 秋田魁 の執念
  原田  勤(事務局)
   JCJ賞、新聞協会賞を受賞
   足で稼いだ記事

日常を破る勇気
   ー「グローバル気候マーチ」の行動ー   桑嶋  聡 (所沢新町在住)

【リレーエッセイ】 お人好しの同胞 
  針ヶ谷俊治 (久米在住)

「全国首長九条の会」 結成総会へご参加を!
  島田 修一 (九条の会東京連絡会・事務局長)
 
【懐かしい風景】所沢ところどころB
  画・大山茂樹

俳句集「秋」

お知らせ
  ●憲法カフェ12
  ●ぶし九条の会

事務局から





安倍政権にすり寄るN国党

ーその主張の何が問題かー

戸崎 賢二 (元NHKディレクター)

 先の参院選で自公・維新の「改憲勢力」は3分の2に達しなかった。しかし「改憲」発議に必要な164議席には7議席足りないだけだった。保守系無所属その他の改憲派議員が加われば、すぐに3分の2を超えるかもしれない。この可能性を端的に示したのが、「NHKから国民を守る党」(N国党)の動きだった。

 N国党の立花孝志代表は、選挙後の記者会見で「自民党がNHKの放送スクランブル化を支持してくれれば改憲に賛成する」と明言した。

 N国党が党の唯一の主張だとしているNHKのスクランブル放送とは、放送内容を暗号化し、電気的に撹拌して放送する方式である。NHKの放送を視聴したい市民は、このスクランブルを解除する手段をNHKと契約して入手し、受信する料金を払うことになる。

 テレビは無料の民放を見れば間に合うと考え、スクランブル解除の契約をしない視聴者は多いと予想されるので、NHKの収入が激減することは必至である。

 経費のかかるドキュメンタリーは制作が困難になるだろう。視聴率にこだわらない少数者のための福祉・教育・教養番組は姿を消し、受信者を増やすための娯楽番組が主流になると予想される。

 結果としてNHKは小さな有料放送局としてしか生き残れず、日本の放送界は実質的に商業放送だけになる。

 見たい視聴者だけが料金を払う、というスクランブル放送は、一見合理的であるように見える。しかし、そうすればNHKのような公共的放送機関は存続し得ないのである。N国党の主張の本質はNHK不要論であると言える。

 たしかに、現在のNHKは、政権広報のような政治報道や強権的な契約強制などで批判を浴びている存在である。しかしそのことと、将来にわたってわが国でNHKのような公共的放送機関が必要かどうかは、分けて考える必要がある。

 放送法は、NHKを国費でも企業の広告料でもなく、受信料で維持される放送機関とした。こうした非営利で市場原理に左右されない公共的な放送機関の存在意義について、視聴者の冷静な判断が求められるのではないか。

 国政には多様な課題があるにもかかわらず、「NHKをぶっ壊す」という政策だけを掲げるような政党は、到底常識的な存在とは言えない。この非常識な政党が、地方区で150万もの票を得たことを、NHKだけでなく市民社会がどう受け止めるかが問われている。N国党にはかつて在特会のメンバーが所属したこともあり、いま改憲勢力であることも判明した。同党の急成長を軽視せず、厳しい警戒の目を向ける必要がある。




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鈴木彰の「改憲だ! 疑惑と在庫の一掃だ!」




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報告 「地上イージス」 配備、世論変えた 秋田魁 の執念

原田  勤(事務局)

JCJ賞、新聞協会賞を受賞

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」問題を取材してきた秋田魁(さきがけ)新報の編集委員・松川敦志さん(47)がこの8月JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞授賞式で述べたあいさつが印象的だ。「われら地方紙記者が防衛省まで行って取材するのは物理的にも人的にも難しい。できるのは秋田市長、秋田県知事に地元の要望を体現した振る舞いをしてもらうこと。要するに(政権からの要請に)簡単にイエスと言うなということです」。

 報道の客観性にも明確な意思があるということだ。昨年6月から秋田市への配備作業を本格化させた国の動きを、地元に引きつけ住民目線で追う姿に執念を感じる。そんな中で防衛省の適地調査データずさん≠スクープ。県民世論は配備反対へと大きく動いた。これらは新聞協会賞も獲得した。

 「地上イージス」取材班は5、6人だ。代表の松川さんと社会部の1人以外はテーマによって班員が入れ替わる。それぞれが街ダネとの取材を兼ねる。昨年から随時企画記事を展開。今年1月からの連載「盾は何を守るのか」は現在までに第7部、30回を超えた。

足で稼いだ記事

 秋田魁を直接目にすることのない私たちには、防衛省資料の読み込みだけで生まれたスクープと映っていた適地調査データずさん≠ヘ実は松川さんらが「足」で稼いだ記事だったと教えられた。

 「適地調査報告」で防衛省は、それぞれの候補地から北朝鮮方面にある山が電波障害となるかを確認したとしていた。県内男鹿市の本山(ほんざん=715m)の場合、検討国有地からの仰角を約15度、また別の候補地から見上げた鳥海山(2236m)は約17度でいずれも配備地に「不適」とした。

 「報告は多少デフォルメかとは思った。しかし三角関数で計算すると本山は約4度。あまりに違うので現地で日が沈むのを待ちました。15度ではまだ日が高い。1時間後に山頂にかかり4度でした。本山を鳥海山とほぼ同じ高さにして不適としていたのです」。他の候補地でもデータずさんが明らかになった(6月5日付)。秋田市内の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場を配備候補地として正当化するためのデータ偽装だった。これを受けて佐竹敬久知事が「全部最初から、そもそも論から」と態度を一転硬化させる(企画「盾は・・『ほころび』」6月26日〜28日付に詳報)。突然降って湧いた地上イージスの秋田市配備計画。昨年9月には世界で唯一実戦配備されているルーマニアの米軍基地と配備予定のポーランドを記者1人が取材に行く(企画「配備地を歩く」2018年9月26日付から14回)。その広さと配備計画などの違いを新屋演習場と比較している。ルーマニア・デベセル基地の米軍司令官が「軍地である以上(テロなどの)標的になり得るのは当然だ」と答えたと紹介している。

 東欧まで取材する許可を出した新聞社の対応を松川さんは「社として、やれることはやってみようという姿勢だ」と話した。

 〈秋田魁新報webコース。月額540円で1日10本、地上イージスの記事は全て読める。バックナンバーは1年〉




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日常を破る勇気

ー「グローバル気候マーチ」の行動ー

桑嶋  聡 (所沢新町在住)

 9月20日の金曜日、パタゴニアという企業が朝日新聞に意見広告を出したのを見た。この日に世界各地でとりくむ「グローバル気候マーチ」という行動に参加を呼びかける意見広告で、紙面にはデモをする人びとの写真と長文の記事が掲載されていた。

 「彼らが学校ストライキをする理由」。そう見出しをつけられた記事は、登校を拒否する「学校ストライキ」にとりくむ欧米の中高生たちの声を紹介していた。社会問題に対して自分たちの意思を示すために中高生たちがとりくんでいるそうである。記事は最後に気候変動問題を訴える「地球規模のストライキの日に参加してください」と呼びかけていた。

 「ストライキの日」は休日ではなく、時間も就業時間内。考えてみれば当たり前である。ストライキなのだから。私は「団塊ジュニア世代」や「就職氷河期世代」と呼ばれる中年世代。ストライキを呼びかけられたのは生まれて初めてで、正直驚いた。「日常の当たり前」を破ることを私にも呼びかけるこの記事に「いけないこと」に誘われたかのような気持ちにもなった。

 もちろんこのストライキに参加はしなかった。しかし「ストライキに参加しよう」との呼びかけが、いまも小さなトゲがささったかのように心に残る。仕事、収入、家族、そして自分。日常はあれもこれも大事なことばかりで、社会からはみ出さぬよう、こぼれ落ちぬよう毎日が大変だ。しかし、変革を生むためには日常を破る勇気も必要で、その手段にストライキもあると、欧米の中高生に教えてもらった。




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【リレーエッセイ】 お人好しの同胞

針ヶ谷俊治 (久米在住)

 後期高齢者目前の年齢に達し、妻に「怒りっぽくなったね」と言われるようになった。自覚もしている。いろいろなことに鈍感で無関心であった私はノンポリであった。定年の何年か前頃から、世の中が住み辛くなってきたように感じられ、社会のことが気になってきた。気になる嫌なことをいくつか列挙すると、●ワーキングプア、●非正規雇用、●格差の拡大、●子供食堂、●「子供が具合悪くても医師にも診せられない」。別の面からでは、▼データや文書の改竄、▼忖度、▼「開示請求で出された黒塗りの資料」、▼兵器の爆買い、▼イージス・アショア設置場所選定過程の杜撰。

 ここに列挙したのはホンの一部であるが、「主権者である国民一人ひとりが大切な存在と思われていないし、軽んじられている」ことが根っこにある。

 かつて安倍氏は、「同胞」が困っている時に救出に行かねばならないと、戦争法説明で図まで示して力説していた。だが現に今、困難を抱えている「同胞」が目の前にたくさんいる。幼い「同胞」から高齢の「同胞」まで。都合の良いときだけの「同胞」扱いには本当に腹が立つ。だが、今の権力者に腹を立てても無意味だ。そのような価値観の政治家であり、政治信念に基づく行動なのだから。

 政治の現状を肯定的に捉えている多くの主権者の人びとに、「何を大切にすべきか」、「本当に今のままでこれからが大丈夫なのか」を、もう一度じっくり考えてもらいたい。相手にもよるが、お人好しも過ぎると軽んじられ、時にはバカにされる。お人好しでいるのもこの辺までにして、主権者である私たちは、政治に対してもっと厳しい眼を向けないといけない。

  


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「全国首長九条の会」 結成総会へご参加を!

島田 修一 (九条の会東京連絡会・事務局長)

昨年12月、「東北6県市町村長九条の会連合」より、改憲の重要な時期となる来春に向けて「首長の会」を全国化したい、そのための打合せを東京で持てないか、との申し入れを受けました。2008年2月に宮城県で「憲法九条を守る首長の会」が発足し、その後、東北各県にも「市町村長九条の会」がつくられ、2014年5月に結成された上記「連合」からの申し入れでした。そこで、今年1月、「連合」事務局と「九条の会東京連絡会」事務局は東京で打ち合わせを行い、今年は9条を守る重大な年、首長は市町村で選出される唯一の人で知名度が高いから「首長の会」は安倍改憲阻止の重要な一翼を担いうる、安倍改憲を打破するため「憲法九条を守る全国首長の会」(仮称)を結成する、その準備会を3月に東京で開催する、以上を合意しました。

 3月20日、東北から4人の元首長、東京から4人の元首長、九条の会の小森事務局長および宮城、東京の関係者など20人が参加し、「全国首長九条の会」に向けた準備会を行いました。そして、5月18日に「憲法9条を守り生かす全国首長交流会」を開催することを確認しました。

 5月18日、100人を超える全国各地の首長、元首長の賛同が寄せられ、22人の元首長が参加されて交流会が開催されました。9条改憲発議絶対阻止の決意から、政党政派にとらわれず、「9条を守る心は一つ」「一人の百歩より百人の一歩」を合言葉に、「結成準備会」を発足させました。

 そして、結成総会は11月17日午後2時〜、明治大学リバティータワー1011号室(266名)で開催されることとなりました。埼玉では田島公子元越生町長が賛同されています。「マスコミ・文化九条の会 所沢」の皆さま、「九条の会」運動に新しい「うねり」が起きようとしています。私たちも傍聴参加し、この流れを強力に後押ししましょう。問合せ先は「九条の会事務局」(03-3221-5075)です。




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懐かしい風景 所沢ところどころ B

画・大山茂樹

学校新道(中央は「しまむら酒店(現在廃業)」)




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俳句集「秋」

          河村フクエ
旅ごころもくもく湧いて九月来る
何気ないことばが痛い秋の風

          鈴木 武甫
秩父路の兜太気になる秋に入る
秋の気に七十九歳大欠伸

          涌井季美子
向かい合う夫婦の案山子夕暮れて
人も犬も四肢を伸ばし秋暑し




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お知らせ

●憲法カフェ12
 「日韓」関係を考える  ー徴用工問題、歴史認識などー
  お 話 加藤圭木(一橋大学准教授)
  日 時 11月16日(土)13時半〜
  場 所 新所沢公民館(学習室1号)
  参加費 500円

●ぶし九条の会
 「いるまの青空」(第13集)発行
「一人の百歩より百人の一歩」をモットーに活動するぶし九条の会(入間市)は、毎年、日頃の思いや伝えたいことをまとめた文集を発行しています。今年も私たちの会に寄贈いただきました。お読みになりたい方は、以下の佐藤までご連絡ください。




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事務局から

◆参院選で改憲勢力が3分の2を割るなか、安倍改造内閣がスタートしました。閣僚には日本会議議連幹部12名が名を連ね、9条改憲を狙った布陣です。今後、3分の2確保をはじめ、さまざまな工作が予想され注意が必要です。

◆視聴者、研究者、放送労働者の3つの立場の人びとが、放送について語り合い研究する「放送を語る会」があります。6月の総会に、同会のみなさんが多数参加されました。その縁で、戸崎賢二さんに「N国党」の主張の危険性について、寄稿いただきました(1面)。お読みください。

◆「憲法カフェ」の11月16日開催が決まりました。1面に予告を出しましたが、チラシは次号に同封します。講師の加藤圭木さんは所沢高校卒業生です。いまから予定してください。




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