機関紙159号 (2019年12月5日発行)
11月3日,国会正門前で憲法集会が開催された.「止めよう改憲発議」「辺野古新基地建設やめろ」などのプラカードを掲げ,1万人が参加.野党各党,沖縄の代表が挨拶.韓国からも代表団が参加し,日韓市民が連帯し憲法を守ろうと訴えた
吉岡 卓(緑町在住)
初めまして。このたび新しく「マスコミ・文化 九条の会 所沢」でご一緒させていただくことになりました、吉岡卓と申します。
私は、普段は詩人として執筆と詩の朗読などの活動をしており、SNSなどでも社会・政治と文学・芸術を切り結ぶところで発言をさせていただいたりしております。また、私はキリスト者の一人としても、この国に暮らす一人一人の平和と社会的公平という視点に立って、人権と憲法、これをまずは護っていかねばならないと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
いま、この国は安倍自民党政権による、限りなく独裁政治に近い政治のやりかたのもと、憲法改悪という、日本の民主主義にとって戦後最大の危機に瀕しております。憲法第九条は言うに及ばす、私たちの基本的人権までを、安倍自民党政権は私たちから奪おうとしているのです。この危急的事態と呼ぶべき状況のなかで、私も一人の人間として、また、文学と言論に携わる者として立ち上がり、皆様とともに力をあわせて、この事態に言論と言葉の力とで抗い闘っていきたいと願っております。
私自身は誠に微力ですが、皆様とご一緒に歩ませていただけますよう、改めてよろしくお願いいたします。
徴用工問題は解決済みではないー。昨年10月韓国の元徴用工が訴えた日本企業に対して賠償を命じた韓国大法院判決を安倍政権が「韓国は日韓請求権協定(1965年)で解決済みの問題を不当に持ち出している。これは国際法違反だ」と述べていることについて、加藤圭木・一橋大学大学院社会学研究科准教授は「請求権協定は、強制労働などの人権侵害に対する賠償は対象としていない」などを根拠に、個人の請求権は消滅しておらず日本は誠実に対応すべきだと強調した。
所沢高校出身の加藤さんは朝鮮近現代史、日朝関係史が専門。11月16日に新所沢公民館で「マスコミ・文化 九条の会 所沢」が開いた憲法カフェで講演した。
日本政府は「請求権協定で5億ドルの経済支援を行った。このうち無償3億ドルの中に徴用工への賠償金が含まれており解決済みの問題」と主張している。これについて加藤さんは@被害者が求めているのは未払い賃金ではなく、当時の日本が犯した犯罪・不法行為に対する慰謝料である A請求権協定は戦争犯罪・植民地犯罪に対する賠償を意味していない B協定は国家間交渉であり、個人の請求権は消滅していない、の3点を挙げた。
特に加藤さんはこの中で、日本政府は協定に基づく支払いを賠償行為と認めていない。賠償ならば悪いこと(不法行為)をしたとなるため、ここに踏み込まず経済協力の「独立祝賀金」とみなしたと指摘した。さらに国会質問で政府は「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」(91年8月)と答弁していることを紹介、日本側も日韓請求権協定自体が個人請求権を認めている根拠を示した。これらを挙げることで、安倍政権は従来の自民党政権がとってきた日韓関係の認識からも大きく後退していることを浮き彫りにした。
徴用工とは何か、加藤さんは「日本の侵略戦争・植民地支配の過程で起こされた強制的な労働動員であり人権侵害である」とした。期間は39年から45年で炭坑や軍需工場などで働かされた。日本国内へは80万〜100万人、満州、中国などにも送られたが動員数で最大は朝鮮の南部から北部への485万人。北部の資源開発、ダム建設などを安い労働力で行い、日本の企業はぼろもうけした。
暴力的な強制動員の証拠として加藤さんは日本側の史料を紹介した。44年の内務局宛ての「復命書」には「朝鮮人労務者の内地送出の…人質的略奪的拉致等が朝鮮民情に及ぼす悪影響」「事前に…知らせれば皆逃亡するから夜襲、誘出、其の他各種の方策を講じて人質的略奪拉致の事例が多くなる」など有無を言わせず連れてきた姿が記録されている。
また、労働環境では特高警察が炭坑労務関係者への指導で述べている文面では「いくら疲れたといっても、翌日はたたいてでも強制的に坑内に追いやることだよ。絶対に休ませてはならない」とある。
加藤さんは「日本政府は合法的にやったので責任はないと言っているが、これらの行為は当時の国際法にも違反しており正当化はできない」と話した。 (報告:事務局 原田 勤)
●具体的に韓国の近現代史に触れ大変勉強になりました。日本の近現代史も学校では教えられないので、日本は歴史の面でも遅れていると思う。もちろん、人権問題や民主主義への学習も今や後進国になっている状況。
● マスメディアを通しての表面的な理解しかしておりませんでしたが、先生のお話を聞き、歴史的な背景や認識を理解することができました。深いテーマを軽くスルーしてきた自分に気がつきました。日本人の正しい理解がないかぎり問題の解決はむずかしいと思いました。
● 先生の講演も、資料も、とってもわかりやすいです。私の出身は中国のハルピンです。私はわれわれ日、韓、中三国の国民はこれから共同的・平和・安定・戦争ないアジア社会環境をつくることを期待しております。
● お話を聞くのは2回目です。2回とも大変感動いたしました。一つひとつの具体的なエピソードが、前回も今回も鮮明によみがえりました。
● 韓国大好きな日本人が多くいることを知ってもらいたい。特に老人にいるということ、戦争時代に生まれたものとして。
● 歴史的な裏付けをもたない私ですが、わかりやすくはっきり話してくださり、レジュメに記していただいてありがたいです。
● 人権と若い人をつなげる歴史事実を意味づけ考えるきっかけとなりました。
山本 達夫(世話人)
11月3日、日本国憲法は公布から73年を迎えました。いま安倍首相はことあるごとに9条改憲をあおりつづけています。憲法を尊重し擁護する義務を負う国務大臣が、国民の総意でない9条改憲に前のめりになることは立憲主義を蹂躙する異常な言動です。
「自衛隊違憲論」に終止符を打つために改憲するという発想も異常です。そもそも違憲論は自衛隊発足時からの道理ある言論です。気にいらない言論を改憲して封じるという発想は言論の自由を奪うもので、ファシズム社会ならともかく民主主義社会ではありえないことです。
2015年、安倍自公政権は違憲の安保関連法を成立させ、自衛隊は専守防衛の枠をこえました。この自衛隊を憲法に明記することは、「憲法及び法令を遵守」すると服務の宣誓をして入隊した二十数万隊員の誠意を踏みにじる政治の暴力そのものです。
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違憲論解消の必要を言葉多く語る安倍首相が、ただひとつ語らないことがあります。それは自衛隊を明記する箇所がなぜ9条なのかということです。違憲論をなくしたいなら、9条でなくても憲法のどこかに明記してもいいはずです。しかし安倍首相にとって自衛隊を明記する箇所は9条でなければならないのです。
それは軍事条項である自衛隊を9条に明記することによって、憲法の基本原則である「平和主義」が消え去るからです。米国からの強い要請でもある9条改憲の目的は、憲法の基本原則である平和主義を抹消することにあるのです。
ただ安倍首相は口が裂けてもそうはいいません。「1項2項を残すから平和主義は揺るがない」とごまかしますが、揺るがすつもりだからこそ、前法の1項2項より優先する後法に軍事条項を新設しようとしているのです。
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9条は1項で戦争放棄を、2項で戦力不保持と交戦権の否認を定めています。憲法学者の青井未帆さんは、「平和を謳う憲法は諸国に珍しくはないが、9条2項は、諸国にない、世界でも初めての試みである」(『憲法と政治』)とのべています。日本国憲法が世界に類のない絶対平和主義を原則としているのは、この「9条2項」と「前文」の存在です。
2012年、自民党が公表した「憲法改正草案」はこの両方を全文削除しています。安倍首相は当時、この草案をつくった憲法改正推進本部の最高顧問ですから、もともと憲法の平和主義を守る意志などカケラもないのです。
地球上のどこにも敵をつくらず、たとえ紛争があっても素手と英知で交渉し、戦争は絶対しない。「9条2項」と「前文」の理念を平たくいうとそうなります。この理念を守り・生かし・世界に広げる役割が求められる今、ペテンのような安倍9条改憲で平和主義原則が抹消されてはならないと考えます。
大関 俊雄(北秋津在住)
私は1937年生まれで、縁故疎開などの戦争体験をしました。戦中戦後の食糧難など、戦争の悲惨さ、愚かさが身にしみています。その体験が「戦争だけはゴメンだ!」の私の原点です。
5年前、元気印だった連れ合いが呼吸器疾患の難病に罹り、入退院を繰り返した後、在宅酸素生活を余儀なくされました。そんな時、安保法制に反対して、澤地久枝さんなどが、毎月3日の13時に「アベ政治を許さない」のスタンディングを呼びかけました。「暖かいこの時間帯なら、私たちにもできるのでは?」と考え、爾来、毎月3日、12時30分から13時30分まで、所沢駅東口で「アベ政治を許さない」のポスターを掲げてスタンディングを始めました。併せて、「アベ改憲NO!」の3000万人署名に取り組んでいます。
酸素機器を抱えた連れ合いを含めても、多いときでも8人程、少ないときは2人で、正月3日も含めて、5年間続けてきました。署名も二桁になることは珍しいです。少人数ですので、クレームをつけに通行人や鉄道職員も来ます。逆に、激励や戦争体験を話し込んで行く方も現われます。
3の日行動には、久米の岡本健哉さんの他、アコーディオンで上新井の新井幸子さん、ギターで久米の原島康義さんなど、うたごえ喫茶LOVE&PEACEの方々もうたごえを添えて応援してくれます。
憲法9条を守るための、大規模な行動も重要ですが、そんな行動をする箇所数を増やすことも大切だと考えて、今、自分たちにできることを、コツコツとやっています。
安藤 彰義
藤村の悲しみの顔重ねつつ口ずさむ千曲川旅情の歌を
一陣の風に銀杏の大黄落 椋神社にときの声するごとし
全国の地方自治体の首長のみなさん、元職のみなさん、市民のみなさん。
私たちは、日本国憲法第9条を守り抜くという壮大な目標に向かい、さまざまな垣根を取り払い、「9条を守る心は一つ」「一人の百歩より百人の一歩」を合言葉に本日その第一歩を踏み出しました。
全国の住民ともっとも密接な行政機関の長として、住民の生命・財産を守る仕事に携わっている長とその経験者による「全国首長九条の会」の発足は、「9条を守れ」という国民多数の意思を体現するものであると考えます。各地、各分野で奮闘されている草の根の運動と連携し、平和国家日本を後世に引き継いでいくために、所属や立場、信条の違いを超え、「憲法9条擁護」の一点で手を携えた運動、世論づくりをすすめる所存です。
参院選が7月に行われ、「市民と野党の共闘」の力で、改憲勢力を後退させ、3分の2の議席確保を阻止しました。しかし安倍首相は9月11日、第4次改造内閣を発足させ、その中で「改憲は自民党が強いリーダーシップを発揮していく」と強調し、9条改憲への並々ならぬ決意を述べ、憲法審査会での改憲提案を狙っています。また、自衛隊のホルムズ海峡周辺中東地域への派遣を強行し、明文改憲を待たずに実質的な憲法破壊をも進めようとしています。
さらに、自民党は「安倍改憲反対」の国民世論を変え、改憲世論づくりに本腰を入れ、日本会議と連携し全国で改憲集会の開催を進めています。いま、地域、草の根が憲法をめぐる対決の場となっています。
安倍首相による憲法9条を改変する企ては、地方自治をも蹂躙しています。安倍首相は、地方自治体の自衛隊募集業務への非協力を改憲理由の一つに挙げていますが、これは「国と地方は、対等協力の関係」という精神をわきまえない地方自治への挑戦にほかなりません。また沖縄県民の民意を無視し辺野古新基地の工事を強行することは、憲法と地方自治を踏みにじるものです。
9条改憲が草の根での攻防に入ったいま、私たち首長九条の会は、全国7000を超える地域、分野別の九条の会と歩みを共にし、憲法9条の理念を高く掲げ、これを堅持し実践することをめざして、地域住民の知恵と力に依拠して運動を進めたいと決意しています。
私たちは、安倍首相の9条改憲を発議させないために全力で取り組みます。沖縄県民の民意を無視した辺野古新基地工事をはじめ、憲法と地方自治を踏みにじる政府の行為に反対します。9条擁護の立場に立つ全国首長の交流活動などを展開してまいります。
全国の自治体首長、元職の皆さま、本会の趣旨に賛同し、ぜひこの一員に加わっていただくことを呼びかけます。また地域住民の皆さまにも本会の趣旨に賛同され、ご支援をお願いするものです。
9条改憲を阻止し、憲法が生きる日本をめざして住民の皆さまと力を合わせて運動を進めることを重ねて表明し、本会結成にあたってのアピールとします。
画・大山茂樹
盃横丁(御幸町、50年続く昭和の香り漂う酒場横丁)
◆「憲法カフェ」にたくさんの方に参加いただきありがとうございました。窮屈ななかで加藤さんの話を聞くことになってしまったこと、会場に入れずお帰りになった方が多数出てしまったこと、深くお詫びいたします。
◆来年2020年は、安倍首相が憲法を変え、施行を狙い定めた年です。しかし、「桜を見る会」で、政治の私物化、隠ぺい・改ざん・虚偽まみれの政権であることが誰の眼にも明らかになりました。最悪・最低の安倍首相に憲法を変えさせるわけにはいきません。2020年を、改憲で「戦争する国」ではなく、憲法をまもり平和で明るい年になるようにしたいものです。
◆新年号は上記テーマを特集し8頁増大号(2月号と合併)にすることにします。多くのかたの原稿をお待ちします。