機関紙18号 (2006年10月27日発行)



もくじ
28人の高校生に聞きました
「96条の変更も改憲である」
まだ遅くはない、勇気が試されるとき
粘り強く、話しあうことが大切
バンクーバーの「九条の会」に参加して
編集後記

28人の高校生に聞きました

「九条変えない方がよい」が85%

質問5:自民党の憲法改正草案の中に、憲法九条二項の「武力の放棄」に変えて、「自衛軍をつくる」とあるのをどう思いますか?
ア)今の九条を変えない方がいい   24
イ)変えて自衛軍をつくった方がいい  0
ウ)どちらかわからない        3
エ)意見を書いてください
・自衛軍を作って、また戦争が起こったりすると困るから
・そしたら自衛っていいながら戦争とかしちゃう
・武力は放棄しなければならないと思う
・戦争が起こってしまう
・武力を持つと戦争が起きるから
・戦争はだめだ
・戦争反対だからです
・武力を全て放棄しては、外国に派遣された時に困ることがあるのではないか
・武力を持つとは戦う気があるということ。武力は捨てた方がよい
・九条を変えようなんて、絶対間違ってる!!どうして戦争が必要なのか??と思ってしまう
・昔のおじいさんおばあさんは、もう争いたくないって願ってる
・戦争に参加したくない。誰かが悲しむようなことに私たちは手を貸したくない

 現代の若者はどのような感性をもって、揺れ動く日本の社会状況に向かっているのだろうか。若者の動向を知りたい、それが大事だと言いながら、なかなか対話も出来ないできている。

 今年の八月、六一回目の終戦記念曰を迎えた。そして、安倍氏が改憲を公約に首相の座についた。教育基本法改悪反対、憲法九条を守れ、の声が怒濤のように響くなか、ある埼玉県の高校の先生の協力を得て生徒達にアンケートを書いてもらった。それは、最初に編集側が希望したものよりより詳しくなったアンケートが帰ってきた。

 君が代、日の丸の押しつけや高まる医療費、子供による殺傷事件の多発、そして、改憲の動き、北朝鮮の核実験等々。それらはお互い同士の中で個別の環境の違いを通獅オてより多彩な世界をかいま見させるのであろう。

 そこには、昨今の「若者は何も考えていない」、「政治に無関心」などの罵声とは異なり、取り巻かれている現状をリアルに分析している感性があった。「いまの日本をどう思いますか」との設問には、大多数が「良くない方に行っている」と答え、「九条を変えない方がいい」と答えた生徒は85%になる。若い人たちが、この国と自分達の未来に大きな危機感を抱えていることが、行間から伝わってくる。社会の出来事を自分たちの生活を通してつかんで、今日明日を生きる若者達の、未来への予知能力と判断を大事にしなくてはならない。政治を変える一票を持っている大人の責任を再認識するものだ。ここに書かれたアンケート結果は、埼玉県の一部の若者の声だが、真面目に政治・社会を受け止めている姿が浮かんでくる。それは大人達に考える多くのものを与えてくれるものではないだろうか。

「いまの日本いい国」は、わずか3人

回答者28人 1つでも意見を書いた人はそのうち14人

質問1:日本がアメリカと戦争をして負けたことを知っていますか?

ア)知っている   28
イ)知らない     0
 戦争について話しを聞いたことがあれば、誰から、どんな話しだったか書いて下さい。
・アメリカ軍に人形を取られたとおばあちゃんが言っていた。
・おじいちゃんから内容はあまり覚えていないが悲惨たったらしい。
・中学の時の社会の先生。朝鮮侵略について。
・祖母・学校の先生・学校で行った講演会に来てくださった講師
・日本はボロ負けだった
・友達のおばから、ひどい話だった。
・8月15日に終わった。
・おばあちゃん。食べ物がなかったって言ってた。
・おばあちゃんから、空襲の時はずっと工場にいて食べるものがなかったから食べられるものは何でも食べた。カラスとかも
・授業「アメリカにボロ負けした。」
・祖父祖母から疎開した話。


質問2:昨年、自民党が「憲法改正草案」を発表したのを知っていますか?

ア)知っている    17
イ)知らない     11


質問3:「今の憲法は、アメリカから押し付けられた憲法だから変えるべきだ」という意見が自民党の国会議員に多いのですが、このような意見があることを知っていましたか?また、この意見についてどう考えますか?

ア)知っている    12
イ)知らない     17

ア)自分もそう思う(この意見に賛成)   5
イ)そう思わない (この意見い反対)  16
ウ)意見を書いてください
・別に今までこれでやってきたんだから今さら変えなくていいと思う
・別にいいと思うから
・世間でややこしくなるからこのままでいいと思った
・今の憲法はいい
・9条がなくなったら日本は戦争してしまいそうだし、しないって保障はない
・戦争は絶対にしちゃだめだから
・戦争をしないのはいいコトだから!!
・変えて武力を持つことになったら嫌だから
・少しずつ日本にあったものに変えていければよいと思う
・日本は日本独自の憲法を作るべきだ
・日本はアメリカの言いなりなところが多いから、少し独立した方がいいと思う


質問4:「今の憲法には、国民の権利ばかり書いてあって義務が少ないから、もっと義務を憲法に書くべきだ」という意見がE自民党の国会議員に多いのですが、このような意見があることを知っていましたか? また、この意見についてどう考えますか?

ア)知っている     4
イ)知らない      24

ア)自分もそう思う(この意見に賛成)  3
イ)そう思わない (この意見に反対) 17
ウ)意見を書いてください
○この意見に反対という意見
・義務に縛られたくない
・義務はいらないと思います
・義務ってそんなに大事じやない。守ってない人がたくさんいても処置をとらないのに守っている人はバカみたい
・よく分からないから
・義務が多すぎると国民による反乱が起きると思う
・義務をたくさん作り過ぎちやうと国民の自由がどんどへっちゃうから ・今の憲法もしっかりできていないのに、一部の人の考えで変えるのはおかしい
・幸せに暮らす権利はきっと多いはずなので、こちらも小しずつ変えでいけばいい
○この意見に賛成という意見
・そうだとE思うから
・国会議員のお金を厳しくしろ〜


質問6:いまの日本をどう思いますか?

ア)いい国           3
イ)あまりよくない       7
ウ)良くない方に行っている  17
エ)よい方へ行っている     0
オ)関心がない         2
カ)意見を書いてください
○良くない方へ行っているという意見
・事件が多く、安心して暮らせない
・良くないから、さらに良くない方に行っている。世界から比べたらいい国だと思うけど、政治がメチャメチャだ
・めんどくさいことばっかだから
・犯罪、事件、事故が多い。毎日人が死ぬニュースが流れている。一日でもいいから殺されたとかニュースを見ない日を過してみたい。なんでも他人や会社のせいにするのが多い
・戦争をしそうな感じだから
・増税すんな
・個人的には金中心に思う
・今の日本は戦前の動きと似ていると言っていた。歴史繰り返すのではなく、せっかくの平和を保ってほしい。

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「96条の変更も改憲である」

やるなら現行規定で「改正」が筋

改憲「手続き法案」で学習会

 改憲を公約にした安倍氏が首相に選出され、国民投票法案(改憲手続き法)が審議再開されようとするなか、九月三十曰、マスメディアとジャーナリズムの研究者である桂敬一氏(元東大新聞研究所教授、元立正大学教授)を所沢市に招き、「これだけ問題がある国民投票法案」と題し、憲法講演会を地区労会館で開いた。法案の行く末に関心を寄せている市民五十人が桂氏の講演に熱心に聴き入った。

「国会の過半数でやる」そのこと自体が憲法違反

 桂氏は、「現行憲法制定から六十年、国会で改憲(現行憲法第九六条の改憲手続きに変更を加えようとするのも一つの改憲)の実質審議が行われることに、政治家やメディアは、その重要性に気が付かず、)国民の関心も低い。読売、日経、産経は改憲推進派のメディアであり、国民投票法案にも与党督励の姿勢を明確にしてきた。護憲派の朝日、論憲派の毎日も二大政党制の考えから脱却できず勢い民主党に甘くなり、同党が与党案にすり寄っても、根本的なチェックが入れられないのがこれまでだった」と、マスコミの問題点を指摘した。そして、@マスコミはなぜ国民投票法案問題を大きく論じないのかA「改憲手続き法案」それ自体が一つの憲法「改正」法案だB都合のいい「改憲手続き法」を必要とする安倍政権の真意Cいかにしてその企みを拒むか--「九条の会」に期待される役-割の四点について話しをした。

 桂氏は「当初の与党案にメディアの報道・論評に厳しい制限を課す規制条項が含まれていることに、メディアは一斉に与党案を批判したが、民主党案がメディアの意向を汲んだ対案を作成し、与党案もメディア規制条項を削除すると、メディアは急速にトーンダウンさせてしまった。

 この結果、三党が一致できるかたちで手続き法を作成するのが好ましいとの見方がメディアの世界では強まっている。『日本国憲法本体の改正は、両院の三分の二以上の賛成による議決が必要だが、国民投票法案は、改憲の手続き法なので、国会の過半数の可決でやれる』という論が多いが、これはおかしいと述べて、「現行憲法九六条は『この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする』と、改憲手続きをはっきり定めている。これに従えば与党は、今回の国民投票法案が、この条項に定められている改憲手続きの変更を伴だ、ものであるならば、現に規定する手続きで行うのが筋であり、国会の過半数で『改憲手続き法』を提出することじたいが違法ではないか」と疑義を示した。

 さらに、これからの運動に大事なのは、「戦争を知らない若い人たち」へのアフローチや参議院選挙で、護憲派が三分の一の議席を確保する重要性、「九条の会」の巨大な勢力を国民投票法案反対の運動へ合流に導く役割も、誰かが負わなければならないと語った。

桂さんの講演を聞いて

松樹偕子 (花園在住)

みすゞ合唱団をたちあげて八年目になります。金子みすゞさんが百年前に詩に託して残してくれたことば、人と比べるのではなく、あるがままの姿で命輝いて生きていけたらいい、この一行に励まされ、癒された人がどれほどいたことでしよう。それが今、「みんなちがってそれでいい」の世の中になろうとしているのです。格差社会、階級社会を積極的につくろうとしているのです。

 当時私は小六、学童疎開先でひもじい思いをしながら来る日も、来る日も「疎開は勝つため 必ず元気でやりぬくぞ そうだそうだやりぬくぞ」と歌う曰を過ごしました。最初は歌わされていても曰ごとにこれが与えられた使命なのだと心底思うようになってしまったオカッパ頭の私でした。それが教育なんですよね。そんな愛国心を再び育てようとしているのです。

 私は現職なら君が代の伴奏を強いられる立場でした。果たして拒否し続ける勇気があったか、逆に弾く勇気があっただろうか。どちらにしても苦しい選択、若い教師の苦悩を思うとつらくなります。

・憲法を守る義務は誰にあるの? 国家じゃないの?
・改憲のいいだしっぺは誰なの? 政府(自公)財界
 だから自分たちに都合のよいように、不戦の誓いが愛国心に、戦争放棄が|安全保障に、戦力の不保持が自衛隊に、基本的人権侵害に、そして教育基本法の改悪に…
・どうやって変えようとしているの? 国民投票で、有効投票数の過半数で、有権者の過半数ではない、まして国民の過半数でもない、ウッソそれって。迷った人やわからない人が白票でだしたらどうなるの? ああ恐ろしい! もくじへ



『まだ遅くはない、勇気が試されるとき』

マスコミ関連九条の会主催の集会で

作家 澤地久枝さんが講演

10月11日、「誰が決める?憲法の行方」というマスコミ関連九条の会連絡会主催の集会が全労連会館で開かれました。なかなか聞けない澤地さんの話が聞けるとあって、会場は開催前から満員、何を感じどのような確信をつかめるか期待感で、心地よい緊張に包まれていました。

 「マスコΒ~には評価をし期待もあるので、六月集会で「事実を伝える仕事のマスコミが、それを伝えないのは犯罪ではないか」ときついことを言いました。それを『朝日新聞』ほかが報じた。日本をあけた時の7月から9月のたまった新聞に目を通した。思って一いたより悪くないと思いました」、「『九条の会』も六千を超え、ギリギリのところでがんばっている。しかし、首都圏での講演会はマスコミがほとんど報道しない。地方では、どこでも、『この会館始まって以来』という事態になっている。東京にいて新聞だけをみていると、『ものを考えるのをやめてしまったのか、アメリカの大統領ベッタリで、まるでアメリカの傭兵になってしまったのか』と思うが、地方に出るとそうではない」。鋭い評価と下調べのしてある話に会場は引きつけられていきます。

 「この十月一曰から医療費が上がった。なくなった鶴見和子さんが友人に『今、私は泣きながら(パソコン)をうっています。リハビリを打ち切られ、政府に殺される』と。生活保護も問題だ。お風呂のお金もチェックし、打ち切る。生活を破壊されているのに反応しない秩Bいつの間に、『反応しない人間』になってしまったのか。しかし、地方へ行くと、新しい市民運動の一歩を踏み出しているのを実感しています」

『ノー』と言えないのか

 「『マスコミの連絡会』だから言うが、『憲法問題は、もう終わっているんではないか』という意識がマスコミの中にもあるのではないか。『日本とアメリカは運命共同体』といった思いが、次第しだいに広がっているのではないか。こうした毒に犯されているジャーナリストが多くなっているのではないか。ブッシュのアメリカに『ノー』と言えないのはなぜなのか。ブッシュ、ブレアー、小泉の政治では泥沼になることが予想されたイラク戦争を始めるしかなかったのか?あのとき、違う考え方があったのではないか?テロにどう向き合うのか、議論を尽くすべきだったと思うのです」

 ジャーナリズムについて考えさせられたと言って、二冊の本を紹介しました。
 「イギリスBBC放送の会長だったグレーク・ダイクの書いた『イラク報道とBBC』(日本放送出版協会)がおもしろかった。ダイク本人は、労働党のシンパでブレアー支持という人。彼は、イラクの『大量破壊兵器の存在』などに関し、一貫してブレアー政権のとった姿勢を厳しく追及しました。こうした姿勢をブレアーが嫌い、調査委員会が作られる。そして『ダイク支持3人、不支持8人』という結果、彼は、『BBCは間違っていなかった』と述べ会長を辞任する。彼が去るとき多数の職員が彼を惜しみ見送った、辞めたあとも『BBCは真実を追い求め、国民全体に奉仕する組織である』と述べている。言うべきことを言わないのと、なんという違いであろうか。

半歩出る勇気

 アメリカの元NBC最高委員だったハーブ・シュロサーは、ダイクに次のような手紙を送った。『BBCの職員たちが貴方を支持したことをインターネットで知った。西側社会では初めてのことだ』と。

 基本的人権は守られているか?怖がらないで半歩出る勇気が求められているのではないか。日本でも、沖縄の基地の現状について、u地元の新聞は連日書いている。しかし、この実態を本土の人は知らない。人間の作った条約は変えることが可能である(「安保条約」のこと)

 もう1冊はイラク戦争反対のシンボル的存在になったシンディ・シーハンが書いた『私の息子はなぜ死んだのですか?』(大月書店)です。

 彼女が、ブッシュ大統領の別荘の前で表記の問いを発して座り込みを始める。そこは人口七〇〇人という町。ご承知のようにアメリカには退役軍人の会などもあり、この行動には、賛否両論が渦巻いた。いやがらせする方は、彼女の亡くなった息子の十字架をなぎ倒したり、口汚くののしったりした。『お前たちバケツで用をたしていたではないか』など。支援者がいちばん歓声をあげたのは、簡易トイレが到着したときという、私はこの個所を読んだときに、あの行動の大変さを実感した。彼女が途中で倒れた時、ジョーン・バエズが代わりを務めた。こうしてあのワシントンの大集会につながっていくのだった。

 この町の地元紙が彼女の行動を一日も欠かさず報道し続けた。『ロンスター・Yイコノ・クラスター』という紙名だが、訳すと『因習を打破するもの』。アメリカ社会の一面だと思う。市民社会はいいなと思う。一色になってしまうのはイヤ、いろんな色、いろんな考え方がたたかわせることができる社会でありたいと思う。」

新しい地平線に

 こう話してきて澤地さんは私たちに心からなるメッセージを送ってくれました。「市民社会はいま、新しい地平に向おうとしているのではないか。百いえなくても一は言うことができる。市民社会が作り上げれるかどうかのとき。自ら発しないと光はない。戦後六一年経ったが、今からでも遅くはない。勇気が試されるとき、お互いが支えになるようにしましょう」と語りました。
(間島)

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「粘り強く、話し合うことが大切」

脇 晴代  (所沢市議会議員)

「脇さん、他国から攻められたら、どうしますか?」と国民保護計画に関する条例案が議会に提案されたときに質問されました。「攻められないように、お互いの価値観を認め合う事に努力して、他国から武力で攻められない|A外交政策に期待します」と答えました。「それでも、攻めてくるという事になって、自分の家族も危なくなったらどうします」ときかれました。「そうならない事を願って、努力するのだから、そういう前提には立たない」といいますと、「では、殺されてもいいのですね」という展開になりました。そのときは「運が悪かったと、あきらめる」といって、この話は終わりました。

 「殺されてもいいのか」という命題には「殺してもいいのか」となるのですが、数分の雑談では、込み入った話はできないので、話を進めませんでした。勇ましい話ほど怖いものはないと、いつも思います。「命こそ宝」という沖縄の言葉がありますね。いろいろな考え方、暮らし方を認め合う事が大切だと思います。「殺されたくない」「殺してはいけない」これは誰もが望む素朴な願いでしょう。国際的には他国の政治に直接干渉せず、自分の住む国の暮らし方はその国民の民意に任せなければなりません。今北朝鮮が核実験をしたことで国連が決議をしました。韓国はとて凾熕T重に交渉の余地を探しているように思われます。日本では、この機会を待っていたかのように、非核三原則に関しての論議も必要などと発言する議員や閣僚が出てきました。非核三原則、広島・長崎の被爆国として、ぜひ粘り強く平和裏に、話し合いができる政治姿勢を堅持してほしいものです。

 日常生活では、幼子が不幸にも命を奪われると、私たちは深く悲しみます。それ以上に、戦争で敵味方双に関係なく市民の命が奪われることの悲惨さに鈍感になってはならないと、いつも思っています。当たり前の生活が当たり前に続く、世界中の国がそうなっていく事を願って、日本国憲法の九条の理念が世界に広がる事を願います。

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バンクーバーの「九条の会」に参加して

海外に広がる護憲の運動

 いま、日本国憲法を守っていこうという運動は、日本全国に広がっているが「日本の憲法は世界のお守りである」と、海外で頑張っている九条の会がある。バンクーバー九条の会である。先日、劇団文化座の佐々木愛さんらとカナダの劇作家コーリン・トマスさんと、カナダ演劇の翻訳家である吉原豊司さんを訪ねたとき、バンクーバー九条の会のイベントに参加してきた。コーリンさんは、広島を題材にした「千羽鶴」の作者であり、吉原さんはその脚本の紹介者であり、それを演じたのは劇団文化座であった。

「日本国憲法」の冊子も

ちょうどその時、バンクーバーはパウエル・ストリート・フェスティバルという日系人が楽しみにしている一年に一度のお祭りであった。会場には様々なテントが張られ客を呼んでいた。民芸品、アクセサリー、文房具、趣味、玩具、おにぎり、寿司、飲物、菓子、それは日本の祭とほとんど変わるものではなかったが、その中になんと「九条の会」のテントが並んでいるのだ。しかもメインステージのすぐ側である。テントの中では、「日本国憲法」の冊子(日本語、英訳のもの)、平和グッズや絵はがき、原爆や平和に関する書籍・印刷物の販売やさまざまな展示物、九条改悪反対の署名<活動なとが行われていた。署名をしてくれた人たちには、平和の記念バッチが手渡されていた。ぼくの反戦詩二編(倉本侑末子訳)も披露され、日本から来た詩人の作品だとプリントしたものが配られた。

 バンクーバー九条の会の発足は、ほとんど日本の九条の会と同じ頃だが、現在会員数は百二十名を越え、インターネットにより、いまも会員数は増え続けているとのことである。去る六月二十五〜二十八日に開催された「世界平和フォーラム」は日本からも、原水協、平和運動に関係する市民団体、法律家など二百人が参加したが、その会議の裏方として働いたのはバンクーバー九条の会の人たちである。会の創設メンバーの一人鹿毛達雄さんの報告によれば、「バンクーバー九条の会」は、九条の法律的・政治的な意味もさることながら、いま自分たちに何が出来るか、何をしているかを出席者にアピールすることを印象付けたとある。会員のみなさんの雰囲気が、なんとマスコミ・文化九条の会と似ていた。

鶴を折る市長代理

 会場のすぐ側の日系会館(日本語学校)では原爆展も開催されていた。会場の正面には三年前に亡くなられたデビツト・ラスキー夫人のきぬ子さんの等身大の胸像が安置されていた。きぬ子さんは広島の被爆者である。このきぬ子さんの胸像は、たんなる一人の被爆者の胸像というのではなく、バンクーバー市民全体の平和への祈りのシンボルとなっていた。会場中央には千羽鶴を折るコーナーが設けられてあり、来館者は一羽ずつ鶴を折った。市長代理のヘザー・デイール議員もバンクーバー市民を代表して鶴を折った。市民団体の「九条の会」と行政の代表が一つになって、平和への道をともに歩こうとする姿に、ぼくは胸を打たれた。この千羽鶴は署名と一緒に日本へ送られるはずである。

 帰り、ぼくら一行を空港まで送ってくれたバスの運転手のミスター・フジワラは、「日本のみなさん、日本のことくれぐれも宜しく願います」と別れの際に真剣な面持ちでぼくらに言った。憲法九条改悪、日本の右傾化が心配なのだろう。ぼくは涙が出るIほどの感動を覚えた。愛国心とはフジワラのような心を言うのだろう。教育基本法を改悪して押しつけるものではない。世界が日本の憲法を見守っていることを再認識しながら、帰国の途についた。

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編集後記

○小森陽一さんの所沢講演が実現することになりました。この集会の成功のために「マスコミ・文化九条の会所沢」も全力を注入する決意です。会員・読者の方には、ぜひご参加いただきたいと思います。また、実行委員会では、ナターシャさんと舞台で一緒に歌う人を募集しています。

○高校生の生の声に初めて接しました。サンプル数は少ないのですが、この国の行く末に不安を感じていることが伝わり、有権者の責任を痛感します。

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