機関紙31号 (2008年1月22日発行)
イラスト 伊藤年男(東京都大田区在住)
中原道夫(詩人 上新井在住)
蔵族の女流詩人単増曲措(タンツチュイツォ)は
中国の普通語(プートンファ)である北京語ではなく
民族の言葉チベット語で詩を朗読した
言葉の源はやはり声
意味は分からなくても言葉を超えた声が
胸に強く伝わってきた
赤ん坊の泣き声が
あんなにも母親によく伝わるのは
声が懸命になって母を呼んでいるからだ
士家族の詩人野夫(イェフ)は
自分たち民族の言葉が二十年前
北京語に呑み込まれて消滅したことを告げると
鳴咽を交えながら普通語(プートンファ)で詩を読んだ
言語を奪われた
士家族の詩人野夫(イェフ)の声は
滅ぼされていく少数民族の叫びであった
いま文明とマネーの侵略によって
安易に増えつづけているカタカナ語
美しい日本を標榜しながら
日本文化を横文字文化に身売りする為政者
そういえばいま流行(はや)りの英語教室のPRに
「これからの日本では英語ができないと
生活することが出来ません」と
恥知らずのポスターが掲示されていた
---ここは一体どこなのか?
---間違いなく日本の首都東京ではないか
ぼくの中に言葉ではなく声に変わった
哀しみと怒りがむらむらっと湧き上がってきた
(詩人会議08年1月号掲載)
勝木英夫(マスコミ・文化 九条の会 所沢 会長)
政府・自民党が主導する野放図な大企業中心の経済政策によって、国民生活の根底からの破壊が進むなかで、時間の歯車はまた一つ新しい年を刻みました。
福田総理が登場して100日、内閣支持率が再び急落するのを横目に見ながら、政府は海上自衛隊のインド洋への再派兵のための新テロ特措法の強行採決を策しています。重ね重ねの「九条」無視です。
井上ひさしさんは、昨年11月の私たちの講演会で、非武装都市の例を引きながら「九条を守る」だけでなく、「攻める」発想の必要を説かれました。
加藤周一さんも同月24日の「九条の会第2回全国交流集会」で「九条を生かす」という表現で同様の主旨を強調されました。
早いもので、私たちの会も間もなく満3周年を迎えます。その運動は、確実に、大きく前進してきました。講演会、学習会など、さまざまの行事を成功させただけでなく、坂本修弁護士の著書『憲法をめぐるせめぎ合い』を企画・刊行し、各界の購読者から驚きと感謝の言葉をいただきました。
しかし、アメリカは日本に侵略戦争の片棒を担がせようと、必死です。日本政府もそれに応えるために、強引に成立させた改憲手続法の発動を、画策し出しました。
この間、日本の各種報道機関が行なった世論調査では、「九条を守る」ことを支持する人が多数を占めるようになりましたが、私たちの所沢でそうした人を50%を超えるまで増やすには、何が必要なのでしょうか。
第一にはその土台となる会員をさらに増やして、当面、500人の大台にのせることでしょう。
幸い、わが会の会員は実に多彩であり、多才の士に満ちています。ややもすれば、世話人中心になっているスタイルを改め、今後は多くの会員がその創意を出しあえる会の運営を心がけていく必要があるのではないか、と考えています。
もくじへ山田 實(仏子九条の会)
「ぶし九条の会」は、2006年3月に発足しました。
私たちの会は本当に小さな集まりで、近所の人や仏子駅周辺に住む人たちが一人ひとり集まったというだけのもので、規約も人事も、会費についても何ひとつ決めてはいません。ただ、会を始めてから毎月、例会を開き、「憲法」を中心にいろいろなことを勉強してきました。
いま行われている改憲の策動について、大方の人は反対どころか興味も関心も示さない。それどころか「九条を守ろう」というと、相変わらずマッカーサーの押し付け憲法論や、北朝鮮のミサイルや核実験の脅威を口にする。
それらに対し私たちは、知識を深め、感性を磨き、そういったまやかしの論法を拒否していく必要を痛感しています。
九条を邪魔者とする人たちには、はっきり「ノー」という意志を告げるべきだし、「なんだか、ワカンナーイ」という人たちには辛抱強く話し合っていきたい、と思っています。
「決して武器を持たない。決して殺さない。」という憲法九条は、世界の平和実現のための大きなかがり火です。日本を「戦争をする国」に変えようとする流れに対し、「ゴマメの歯ぎしり」もまとまれば大きなうねりとなって対抗できることを信じ、これからも勉強を続けていきます。
入間市仏子は、入間川沿いにあります。入間川の上流は飯能市、下流は狭山市、川越市へと続き、入間川はやがて荒川に流れ込みます。「ぶし九条の会」発足当初、私たちは冗談と本心をないまぜに、そのうち「入間川流域九条の会」を作り、その力が奔流となって荒川流域のあらゆる「九条の会」と提携しよう、などとホラ話をしたものです。いま、貴会から連絡をいただき、ともに運動をすすめていこうという呼びかけをいただいて、とても嬉しく思っています。
もくじへブット元首相が暗殺されるなど世界や日本を取り巻く情勢は相変わらず胸を痛めることばかりですが皆様にとってはどんな一年だったでしょうか?
おかげさまで「蟻の兵隊」は昨年は大勢の方に観ていただくことが出来ました。年末には元残留兵の孫が主催するという上映会も開かれ、「蟻」たちの進軍に若者らによる新たな動きが加わろうとしています。
昨年12月31日の朝日新聞朝刊「歴史は生きている」というシリーズの中でこのことが取り上げられました。
今年春には「延安の娘」と併せて「蟻の兵隊」のDVDが発売される予定です。これを機に、人間の持つ力を描いた私の作品を、もっと多くの人にご覧いただきたいと願っています。
来年私は新たな映画づくりに突入します。今度は現代チベットをフィクションで描くつもりです。
これまで同様多くの人を巻き込んでの果てしない映画の旅になりますが、たとえ何年かかっても、皆さまに心の底から感動してもらえる作品を撮りあげる覚悟です。いまだ迷うことの多い私ですが、どうぞこれまで同様のご支援ご指導をお願い申し上げます。今年が皆さまにとって素晴らしい年でありますように。
一年の感謝を込めて
(有)蓮ユニバース「蟻の兵隊」「延安の娘」監督 池谷薫(いけや・かおる)
もくじへ鈴木彰の「惨劇の主役なんぞお断り!」
もくじへ増岡敏和(詩人)
本紙編集部の葛西建治氏から、時には私の短い詩を書いてもいいのではないかと言われたので、今回は拙いながら新春の作品を紹介したい。
題は「初空」である。
増岡敏和(青葉台在住)
「百歳まで生きるぞ」と勝手に私が宣言したのは、20年前のことである。私はいま79歳になったところだから、後21年で「宣言」は達成するわけだが、妻はこれまでも一向に信じない。
逆に、「百歳まで生きたら淋しいことよ。お友達も私だってもう亡くなっているし、一人ぼっちじゃ、あなたは狂っちゃうんじやないの」とからかってくる。
「その時は、孫娘たちが爺の心を撫でに来てくれるよ、彼女らの小さな画面から響かせてくるたっぷりの笑いを、古い袋につめたお土産をぶら下げて」なんて。
すると妻は言ったものだ。「女の子は結婚したら大変なのね、期待しないで、遠くからいつもやさしく凝視めていればいいの」。
一人になった爺は、ともかくもやっぱり狂っちゃう外はないらしい。
間島 弘(マスコミ・文化 九条の会 所沢 世話人)
昨年12月11日、東京高裁は、葛飾ビラ配布弾圧事件に対して、一審無罪判決を破棄し、「罰金5万円」の逆転不当判決を言い渡しました。
事件は、2004年12月、東京・葛飾区のオートロックではないマンションに、共産党の「区議団だより」などを配布した荒川庸生さんを「住居侵入罪」で逮捕・起訴したものです。
一審判決は、「はり紙は商業活動を禁じる趣旨に読める」とし、「ビラ配布目的だけであれぱ共用部分への立ち入り行為を刑事罰の対象とする社会通念は確立していない」、「住居侵入罪にあたらない」と無罪を言い渡しました。
これに対し、東京高裁は、「マンションの玄関ホールにビラ等の投函を禁止するとのはり紙があった。管理組合理事会が決定し、掲示によって来訪者にも伝えられており、住居侵入罪にあたる」としました。また、この裁判の最大の争点として注目された「表現の自由」について、「憲法21条1項は、表現の自由を絶対無制限に保障したものでなく、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を是認するもの」であり、「たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の財産権などを不当に害することは許されない」としています。
この判決に対し、新聞各紙は、翌13日付社説で、「常識を欠いた逆転判決」(『朝日』)、「政治の自由を奪うまい」(『東京』)など、一斉に危惧の念を表明しました。
ビラ配布をめぐって、この葛飾の事件以外にも、これまで03年4月に大分・豊後高田、大石市議事件、04年2月、立川自衛隊官舎ビラ配布事件、04年3月、国公法ビラ配布弾圧事件、05年9月、世田谷国公法弾圧事件とたて続けに起きていました(03年3月、イラク戦争開始とともに自衛隊の海外派兵、05年11月の自民党憲法草案の決定---小泉首相が、「憲法改正案をまとめる」と表明したのは02年8月---などと深く関わっていると考えますが、紙数の関係で省略します)。
こうした状況をうけ、「九条の会」アピールが発せられました(04年6月)。
近代国家成立に際して、もっとも代表的な「自由権」として保障されるようになったのが、「権力からの自由」を規定した「言論・表現の自由」であるといわれています。
それだけに、戦前の日本の例を引くまでもなく、国家権力がこの権利に介入してくるときは“危険な兆候である”が歴史の教訓です。
「九条の会」に心寄せる方がたに、「ビラ配布の自由」に対する攻撃は、基本的人権の根幹に対する攻撃であり、ひいては「九条」そのものへの攻撃でもあるといえます。より一層の関心とその危険な狙いを許さない取り組みを一緒に考えていけたらと思っています。
もくじへ1月11日、国会では午前、参院本会議で新テロ特措法が否決されましたが、午後開かれた衆院本会議で自民・公明両党が再議決を強行、3分の2以上の賛成で成立させました。参院で否決されたあと、両院協議会も開かず、戦争支援はだめという多数の世論も無視した暴挙は厳しい審判を受けるでしょう。
新聞労連は11日、平和と民主主義の確立、言論報道の自由などに貢献した記事に贈る「新聞労連ジャーナリスト大賞」を琉球新報、沖縄タイムス両紙の集団自決問題キャーンペーンと、朝日新聞の連載「新聞と戦争」に決定したと発表した。
優秀賞は信濃毎日の連載「必要か青少年条例」などの記事と熊本日々新聞の連載「水俣病50年」が受賞。特別賞は神奈川新聞、上毛新聞、埼玉新聞、茨城新聞、千葉日報の共同企画「風船爆弾東へ」と中国新聞の連載「ひろしま国10代がつくる平和新聞」が選ばれた。
疋田桂一郎賞は下野新聞写真部近藤文則記者の掲載「死と向き合う医療--在宅ホスピスとちの木開設1年」と毎日新聞社会部工藤哲記者の離婚後三百日規定問題キャーンペーンに決まった。
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